市販の『ガスター10』、2週間以上続けて使ってはいけないのはなぜ?

  • 作成:2021/10/25

一般用医薬品の胃薬である『ガスター10(成分名:ファモチジン)』は、医療用として胃潰瘍などにも使われる『ガスター』と全く同じ薬です。胃酸の出過ぎを抑えることで、胃の荒れ1)や胸焼け2)といった症状を解消しますが、一般用医薬品の中では他の薬よりも効果が高く、人気商品の1つです。  しかし、この『ガスター10』の説明書には、“2週間を超えて使い続けないこと”という注意書きがあります。この注意書きがされている理由や、そもそも注意書きがあることを知らずに、「特に副作用も感じないし大丈夫だろう」と使い続けていると、取り返しのつかないトラブルを招くこともあります。良い薬だからこそ、注意書きの理由を知って、正しく使うよう心がけましょう。

この記事の目安時間は3分です

市販の『ガスター10』、2週間以上続けて使ってはいけないのはなぜ?

H2ブロッカーの強力な効果~むしろ「効き過ぎる」ことを警戒しなければならない

『ガスター10』などの「H2ブロッカー」と呼ばれる薬は、胃酸を分泌するH2受容体をブロックすることで、胃酸の出過ぎを解消する作用があります。この作用は非常に強力なため、胃の荒れや胸焼け、胃酸過多といった症状だけでなく、胃・十二指腸潰瘍や胃がんなどの危険な病気の自覚症状ですら、一時的に解消してしまうことがあります。

そのため、何週間も続けてこの薬を使っていると、薬で自覚症状は抑えられているものの、その裏でいつの間にか胃・十二指腸潰瘍や胃がんが進行してしまっていた・・・といった事態が起こりかねません。こうした取り返しのつかないトラブルを避けるために、『ガスター10』などの「H2ブロッカー」には全て、長期間使い続けることがないように制限が設けられています3)

※H2ブロッカーの使用制限 3)

市販の『ガスター10』、2週間以上続けて使ってはいけないのはなぜ?

基本的に、ストレスや食べ過ぎなどによる一過性の胃痛や胸焼けであれば、1~2週間もかからずに症状は落ち着きます。1~2週間ほど薬を使っていたのにまだまだ症状が残っていて追加で薬が必要だ、という場合には、たとえ薬がよく効いていたとしても、症状の原因を詳しく調べる必要があります。
薬を使い続けるのではなく、一度必ず病院を受診し、薬を服用していたことを伝えるようにしてください。

なお、薬自体は使い続けても腎臓や肝臓に害を及ぼしたりたり依存になったりするような特別なリスクがあるものではありません。そのため病院を受診した結果、『ガスター10』と同じタイプの薬を処方されて2週間以上続けて使うことになる、ということはよくあります。

「H2ブロッカー」以外の胃薬には、使用制限はないが・・・

一般用医薬品の胃薬のうち、こうした使用制限があるのは『ガスター10』などの「H2ブロッカー」だけです。そのため、「H2ブロッカー」以外の胃薬(例:胃粘膜を守る薬、漢方薬)であれば、1~2週間を超えて使い続けることも可能です。

ただし、漫然と使い続けることは副作用リスクに繋がりますので、不調が続く場合にはタイミングを見計らって一度病院で相談することをお勧めします。

※その他の胃薬で考えなければならないリスクの例

市販の『ガスター10』、2週間以上続けて使ってはいけないのはなぜ?

ヘリコバクター・ピロリ菌の感染にも要注意

胃痛や胃炎には、「ヘリコバクター・ピロリ菌」という細菌の感染が関係していることも少なくありません。この場合も、『ガスター10』などの「H2ブロッカー」を使うことで、一時的に自覚症状は治まることがありますが、この薬で「ヘリコバクター・ピロリ菌」を退治できるわけではありません。そのため、薬を止めるとすぐに症状をぶり返してしまうことになります。

「ヘリコバクター・ピロリ菌」の感染によって繰り返す胃炎などの症状を根本的に解決するためには、菌を完全に退治してしまう“除菌治療”を行います。この除菌には、専用の薬(※胃酸を抑える薬と抗菌薬2種の合計3種を7日間服用する)が必要なため、病院で処方してもらう必要があります。胃痛や胃炎を何度も繰り返す人は、一度病院で検査などの必要性を相談してみることをお勧めします。

1) 日本消化器病学会 「消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改訂第2版)」
2) Aliment Pharmacol Ther.25(2):143-53,(2007) PMID:17229239
3) 各医薬品 添付文書

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