発達障害って何?

  • 作成:2022/09/29

発達障害とは、生まれつきの脳機能の働き方の違いにより、言葉の発達が遅い、対人関係をうまく築くことができない、落ち着きがない、学習が苦手、先の見通しを立てることが難しい、集団生活が苦手、こだわりが強い、手先が不器用、感情のコントロールが難しい、感覚過敏や感覚鈍麻といった特性をもち、社会適応に困難が生じる状態です。

秋谷 進 監修
 
秋谷 進 先生

この記事の目安時間は6分です

発達障害には、その特性の現れ方によって、

  • 自閉スペクトラム症(ASD)
  • 注意欠如・多動症(ADHD)
  • 限局性学習症(学習障害、LD、SLD)
  • 知的発達症/知的能力障害(ID: Intellectual Disability)
  • チック症
  • 吃音症
  • トゥレット症候群(TS:Torette's Syndrome)
  • 発達性協調運動症/発達性協調運動障害(DCD)

などが含まれます。同じ診断名でも特性の現れ方が異なる場合や、いくつかの診断名を併存することがあります。

発達障害の種類別特性分類図

発達障害の原因

発達障害の原因は、生まれつきの脳機能の働き方の違いによるものだと考えられています。しかし、現時点では明確な発症メカニズムはわかっていません。

主な発達障害の特徴

■自閉スペクトラム症(ASD)

ことばコミュニケーションのおくれ・独特さ,対人関係や社会性における困難さ,こだわり,興味や関心の幅の狭さといった特性が認められます。
それぞれ具体的に、下記のような表われ方をします。

ことばコミュニケーションのおくれ・独特さ:

  • こちらが言っていることは分かるが話さない。説明することが苦手。
  • クレーン現象:何かをしたいときに、他人の手を取って物を指したり、取らせたりしようとする行為
  • 逆手バイバイ
  • おうむ返し
  • 人見知りをしない/人見知りをしすぎる
  • 名前を呼んでも振り向かない
  • 思い通りにいかないと力で訴える
  • ことばが達者すぎる
  • 抑揚のない。パターン的な話し方。話し言葉に自分の思いを込めるのが苦手。

対人関係や社会性における困難さ:

  • 視線が合いづらい
  • 会話が一方的で,やり取りにならない
  • 自己中心的で場にあった言動が難しいもしくは空気を読みすぎる
  • 言葉の指示が入りにくい
  • 本人に向けたわかりやすい説明が必要

こだわり:

  • 変化が苦手
  • 今までしていた作業が辞められない
  • 切り替えが難しい
  • へそを曲げたら頑として口をつぐんで動かない
  • 回るものが好きで換気扇を眺めている
  • 扇風機を眺めている
  • 寝そべってプラレールの電車が走るのをいろんな角度から眺めている
  • 車のおもちゃのタイヤを回している。

興味や関心の幅の狭さ:

  • いろいろな店のマークは好き
  • 特定の色の服を着たがる
  • 新規のものが苦手で見通しが立たない
  • 気になりだすと止まらない
  • 好き嫌いが多い
  • 人の名前を覚えられない
  • ハマりやすくハマり過ぎてしまう

子どもの2~5%が自閉症スペクトラムであり、男の子が女の子の2~4倍有病率が高いといわれています。症状の例を見ると、多くの子ども、特に男の子にあてはまりそうですが、 周囲での適応状況と発達歴、行動観察や知能検査の結果と合わせて診断をします。診断の際には、発達の偏り,ことばコミュニケーションの問題,こだわりと感覚過敏や鈍麻がいくつかの領域にわたって認められるかがポイントになります。

■注意欠如多動症(ADHD)

落ち着きがない/待てないといった多動衝動性や、集中し続けることが難しい/注意が持続しにくい/作業にミスが多いといった不注意を中核とした特性があります。
多動衝動性と不注意の両方の特性が認められる場合と、どちらか一方の特性を認める場合(多動衝動性優勢・不注意優勢)があります。
それぞれ具体的に、下記のような表れ方をします。

多動衝動性:

つねにエンジンがかかっているような状況です。

  • 落ち着きがない
  • 座っていても手足がもじもじする
  • 席を離れて立ってしまう
  • あちこち視線が動いている
  • しゃべりすぎる
  • 他人の会話に割り込んでしまう
  • 順番を待つのが難しい
  • 気になることがあると抑えられずに道路に飛び出してしまう
  • 思いついたことを口にしてしまう
  • 頭の中に色々な考えが浮かんでまとまらない
  • 感情や欲求のコントロールが難しい
  • 0か100で加減が難しい

不注意:

  • 忘れ物が多い
  • なくしものが多い
  • 刺激によって気がそれてしまう
  • 課題に集中し続けることが難しい
  • 話しかけられても聞いていないように見える
  • 課題や作業の優先順位をつけるのが苦手
  • 整理整頓が苦手

多動衝動性は年齢が長じるにつれて落ち着きが出てきます。しかし、大人になっても計画を立てて物事を実行することが苦手、感情のコントロールが難しいといった特性を認める場合があります。

学童期の子どもの3〜7%がADHDと診断されます。また、多動衝動性が問題行動となるため、男の子の方が女の子より3-5倍多いといわれています。一方、成人で診断される人の割合は2.5%程度で、男女比はほぼ1:1になります。

ADHDでは、「静かにしなさい」といわれた後すぐに話し始めて注意されてしまうことや、「忘れ物やケアレスミス」に自らが悩んでしまうことがよくあります。
また、自己評価の低下により自尊感情が損なわれることが、二次障害として問題となることがあります。

■限局性学習症(SLD)

全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど、特定の学習にのみ困難が認められる状態で、学習の遅れが2学年以上であれば、限局性学習症の可能性があります。
限局性学習症は、大きく分けて、読字障害(発達性ディスレクシア)、書字障害、算数障害に分類され、読字障害が最も多くを占めます。

読字障害(発達性ディスレクシア):

文字を全く読めないわけではないのですが、読むのが極端に遅く、読み間違いが多いです。
具体的には下記のような特性があります。

  • 「わ」と「ね」の区別が難しい
  • 「は」を「は」として読むのか、助詞の「は」として使用しているのかの使い分けが難しい
  • 行間が狭いと同じ文字に見えてしまう
  • 漢字を1つの塊として認識するのが難しい

書字障害(ディスグラフィア):

文字を読むことはできるが、書くのが苦手で、特に「漢字が書けない」特性があります。

  • 見本の字が書けない。
  • 「読」という漢字を「言」「売」という2字として認識してしまう。
  • 「教」のように画数が多い漢字を書こうとするとぐじゃぐじゃになってしまう。

算数障害(ディスカリキュリア):

計算、図形や空間の認知、算数的推論が困難な特性があります。

  • 数の大小や順番が解からない。
    (例)4と6のどちらかが大きいのかがわからない。
  • 繰り上がり/繰り下がりが理解できない。
  • 時計の時間は読める一方、「15分前」や「30分後」が何時何分か、といった問題が理解できない。
  • いつまでも指を折って数をかぞえている。

発達性ディスレクシアの発生頻度は、アルファベット語圏で3~12%と報告されています。
日本では、2002年と2012年に行われた小中学校教師を対象とした限局性学習症に関する全国調査により、学習面に著しい困難を示す児童生徒は4.5%存在することが示されていますが、これらすべてが限局性学習症によるものではありません。
日本ではアルファベット圏よりは発達性ディスレクシアの該当者は少ないといわれています。これは、象形文字である漢字を多用し、文字から意味をイメージしやすいのが一因であると考えられています。
例えば海外で発達性ディスレクシアが多いのは、アルファベットで記載した"rain"が"なぜ雨なのか?"を説明することが難しいためと考えられています。日本では、平仮名で「あめ」と書く文字が「雨」なのか「飴」なのかを読み取れなくても、漢字で記載すると、雨をイメージし読み取ることが可能です。その結果、日本では限局性学習症についての支援が効果的に行われていない可能性が高く、有効な支援を受けられている人は少ないと考えられています。

限局性学習症は、「努力不足」だと注意されることや、周りと比べてできないと自覚することによる自己評価の低下や強い不安などの二次障害につながります。
そのため、早期診断が必要な特性と考えられます。

■知的発達症/知的能力障害(ID: Intellectual Disability)

知的発達症は日常生活における主な適応3領域である概念的領域、社会的領域、実用的領域における不適応によって特徴付けられています。ことば発達の遅れ、学習面の課題、理解力の課題といった症状が認められ、おおよその目安は知能指数(IQ)によって表されます。IQ70未満を知的発達症と定義し、有病率は一般人口の約1%で、年齢によって変動します。男女比はおよそ1.6:1(軽度)~1.2:1(重度)です。境界知能と呼ばれる、IQ 70~79の通常学級における学習困難な児童は、7人に1人いると考えられています。

■チック症

本人の意志と関係なく、まばたき、顔をしかめる、口をゆがめる・とがらせる、舌を突き出す、鼻をピクピクさせる、首を左右に振るといった動作性の症状(運動チック)と、咳払い、鼻や舌を鳴らす、叫びや単語を連発するなどの音声性の症状(音声チック)が一定期間続く疾患です。
一般的には、子どもの頃(4歳頃~18歳頃)に見られる症状です。子どものおよそ10~20%にみられるとも言われており、珍しい症状ではありません。一過性が多く、大人に近づくにつれて自然に治まることもよくありますが、大人になっても症状が持続する場合もあります。不安などのストレスや強度の疲労によって悪化しやすく、心身ともに落ち着いている状態のときは改善する傾向にあります。そのため、環境や日によって変化も大きいと考えられています。

多種類の運動チックと1種類以上の音声チックが1年以上続く場合は、「トゥレット障害(トゥレット症候群)」と診断します。7歳までに多く発症し、頻度は10,000名に5名程度、男女比は3:1で男性に多いと報告されています。

■吃音症

話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつです。発達性吃音と獲得性吃音に分類されますが、9割は発達性吃音症です。発達性吃音症は幼児期(2~5歳)に発症する場合がほとんどで幼児期の発症率は8%前後です。
吃音の特徴的な症状としては、

①音のくりかえし(連発)
 例:「か、か、からす」
②引き伸ばし(伸発)
 例:「かーーらす」
③ことばを出せずに間があいてしまう(難発、ブロック)
 例:「・・・・からす」
の3つの特徴があり、最も多い症状は音のくりかえしです。
7~8割くらいは自然に治りますが、残りの2~3割は徐々に症状が固定化して、楽に話せる時期が減ってきます。

■発達性協調運動症/発達性協調運動障害(DCD)

発達性協調運動症とは、麻痺などの運動障害がないにもかかわらず手と手、目と手、足と手など、複数の身体部位を協力させて行う運動が著しく困難な状態です。
人並み外れて不器用であったり、極端に運動の苦手な子は発達性協調運動障害かもしれません。よく見られる症状としては、はしやはさみがうまく使えない、ボタンをとめられない、ひもを結べない、縄跳びが飛べない、階段の昇り降りがぎこちない、リコーダーが苦手、筆圧が強すぎるもしく弱すぎるなどがあります。有病率は約 6 〜 10%で、男女比は2:1~7:1と推定されています。発達性協調運動障害は他者意識から自尊感情が損なわれやすいことが報告されています。

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