糖尿病性網膜症の症状、治療 50‐60代の最多失明原因!

  • 作成:2016/04/28

糖尿病の3大合併症の1つに「網膜症」があります。残念ですが、50歳代から60歳代の方の失明原因の中で、最も高い割合を占めいています。初期の段階では、血糖値のコントロールで改善する可能性があります。治療やメカニズムなどについて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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糖尿病の網膜症で失明?

三大合併症の1つ網膜症の症状

私たちが食事をすると血液中の血糖値は誰でも上昇しますが、膵臓から分泌されるインスリンによって血糖値は正常に保たれるようになっています。糖尿病の場合には、インスリンの分泌不足、もしくはインスリンがうまく効果を発揮できないことにより、血液中の血糖値が高い状態が持続してしまいます。血糖値が高い状態が続くと全身の血管や神経などに障害を起こし、様々な合併症を引き起こします。糖尿病の初期には症状に気づかないことも多く気付いたら合併症が進行している可能性もあります。特に糖尿病の三大合併症として知られているものは、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害です。

糖尿病網膜症は、途中失明の原因の1位であり、失明により、著しく生活の質も下がるため、定期的な眼底検査(瞳孔の奥にある部分を診る検査)が必要です。糖尿病性網膜症の怖いところは、進行して大きな出血や網膜剥離が起こるまでほとんど無症状な点です。症状が出る時には、突然、「目の中に煙のすすがたまったよう」「物が赤く見える」「目が見えづらい」などと感じることがあります。

網膜症になる人はどれくらい?

糖尿病を発症している人は誰でも糖尿病性網膜症になる可能性があります。視覚障害者の6人に1人は糖尿病性網膜症であり、50歳代から60歳の代では視覚障害原因の1位です。糖尿病の合併症の多くは高血糖により血管が障害されることで起こります。網膜には高血糖の影響を受けやすい細い血管が通っているため、これらの血管が障害され徐々に網膜に変化が現れます。症状の進行段階ごとに呼び方が違い、「単純網膜症」「増殖前網膜症」「増殖網膜症」という順番で、網膜症が進行していきます。

網膜症の治療はどんなもの?

糖尿病性網膜症の状態によって、治療法を選択します。糖尿病性網膜症の最初の状態である「単純網膜症」の場合には、網膜の血管が高血糖によってもろくなることで、網膜に点状の出血や毛細血管のこぶを認めます。症状は全くなく、この時期であれば血糖コントロールができれば自然に消えていく可能性があります。

「増殖前網膜症」になると、血管がつまることでその先の網膜に十分な血液が行かなくなり「虚血」という状態となります。網膜に虚血によるシミができ、酸素不足により血管自体も消えてしまうことがあります。失われた血管の機能を補助するために新しい血管(新生血管)が現れます。この状態でも自覚症状はほとんどないです。治療は虚血になっている網膜に対して、レーザー光を照射する「レーザー光凝固術」を行い、新生血管の増殖を防ぎます。この段階で適切な治療をすることで失明の予防になります。

さらに進行すると「増殖網膜症」と呼ばれ、新生血管が網膜だけでなく眼球内(硝子体、眼球の形を保つなどするゼリー状の組織)にも伸びてくるようになります。新生血管は、とてももろいため容易に出血を起こし、硝子体と網膜のくっつき方が強くなり、網膜剥離の原因となります。この段階でも大きな出血や網膜剥離が起きない限りは無症状です。治療はこまめに光凝固術を行い、たびたび検査をします。網膜出血や硝子体出血、網膜剥離を起こした場合には、硝子体を切って人工の液体に置き換えたり(硝子体手術)、はがれた網膜を元に戻すような手術を行います。最近では網膜が虚血になった時に発生する「血管内皮細胞増殖因子(VEGF)」というものの働きを抑制する「抗VEGF薬」というタイプの薬を硝子体に注射する治療法も普及しています。

網膜症になった際の予後

糖尿病性網膜症は血糖コントロールが悪いほど発症しやすいことが分かっています。ですので、まず厳格に血糖コントロールを行うことが網膜症の予防になります。また症状がほとんどないため、定期的に眼底検査を行い網膜症の進行度を把握する必要があります。以下のような検査頻度が推奨されています。

・眼底検査は網膜症のない人→6カ月から12カ月に1回
・単純網膜症の人→3カ月から6か月に1回
・増殖前網膜症の人→1カ月から2か月に1回
・増殖網膜症の人→2週間から4週間に1回

急な血糖コントロールや激しい運動は眼底出血の原因になることもあるため、医師と相談しながら治療を行いましょう。

糖尿病で起きる網膜症についてご紹介しました。糖尿病の血統のコントロールに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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