アトピー性皮膚炎の治療と薬 市販薬をどう使う?入院の可能性も?ステロイドの注意点は?漢方薬やサプリは効く?

  • 作成:2016/04/14

アトピー性皮膚炎には飲み薬と塗り薬など多様な薬があります。ステロイドを使うこともありますが、副作用もあります。用途や症状に合わせて、上手に薬を使う必要があります。副作用や漢方薬の可否もふくめて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

アトピー性皮膚炎の治療を知ろう
アトピー性皮膚炎の治療概要
アトピー性皮膚炎で入院することがある?
アトピー性皮膚炎の処方薬と副作用 ステロイドで感染症悪化?
多様なステロイドの副作用
タクロリムスの副作用は?どのように使う?
アトピー性皮膚炎には塗り薬も飲み薬もある?
アトピー性皮膚炎市販ステロイドの使い方
非ステロイドや抗ヒスタミン薬の市販薬をどう使う?
アトピー性皮膚炎に漢方薬はある?
アトピー性皮膚炎に効果のあるサプリメントがある?

アトピー性皮膚炎の治療概要

「炎症を抑えること」「環境を整えること」「皮膚を保護すること」が治療の3本の柱となります。3本の柱が1本でも欠けているとうまく治りません。

皮膚の炎症を抑えるには、抗炎症作用のある薬を、炎症を起こした皮膚に塗るのが合理的です。症状が強い時や蕁麻疹を合併している時には飲み薬も合わせて使います。「アトピー性皮膚炎の炎症を抑える治療は全て対症療法(今ある症状を抑える治療)にすぎず、治療をやめるとすぐに元の状態に戻るので無意味である」と考えてしまう方もありますが、本当はそうではありません。「皮膚をかく」という行為が、アトピー性皮膚炎の大きな悪化因子であることは明らかです。炎症を抑える治療を行ってかゆみがなくなれば、「皮膚をかく」という大きな悪化要因がとれて、悪化するリスクは下がります。

環境を整えるということは、外部からの様々な悪化要因が加わるのを防ぐということです。毎日ステロイド外用剤を塗っていても、同時に塗っている保湿剤にかぶれていると、決して治りません。また、1カ月に1回ヘアカラーをして、そのヘアカラーにかぶれている場合は、頭部や顔面のアトピー性皮膚炎は良くなりません。革にかぶれる人はソファー、車のシート、車のハンドルの選択の時には革素材を避けるのが良いのです。数カ月前から特殊なお茶を飲んでおり、お茶に対するアレルギーのために皮膚炎を併発しているなら、ステロイドを飲んでいてもし改善しないことがあります。このように悪化要因には個人差があり、原因の特定が難しいものもありますから、一回の診察で全ての悪化要因を発見して、取り除くに至ることは不可能です。受診の度に症状を見て、治りにくい時にはその理由を考えることが、患者の方、家族と担当医の大切な共同作業となります。

皮膚は直接さまざまなものと接する環境にありますから、どうしても外部からの刺激を受けてしまいます。強い刺激を受けると皮膚炎が生じてしまいますから、皮膚を保護していくことも必要です。以下のような点にも注意が必要で、皮膚炎のない時から習慣としておくのが良いでしょう。

・短時間の作業でも土を触るときには軍手をしてください。
・洗剤を使って洗い物をする時には手袋をしましょう。
・保湿剤を塗って皮膚を乾燥から守ることも地道な作業ですが大切です。
・激しい日焼けを避けるためには帽子や日傘を用いましょう。

アトピー性皮膚炎で入院することがある?

入院して環境が変わることで、治療を変えなくても、大幅にアトピー性皮膚炎の症状が改善することが多いので、重症のアトピー性皮膚炎では入院して治療をすることは合理的と言えます。

入院するとより安全に治療をすることができるのも大きなメリットです。皮膚炎がひどくて皮膚から、液体が染み出している状態では様々な感染症を起こすことがあります。皮膚の白血球の働きを抑える薬では、効率よくアトピー性皮膚炎のかゆみを抑えることができる一方、正常の白血球の働きも抑えるので、感染症が起こると悪化する可能性があります。

重症のアトピー性皮膚炎では、アトピー性皮膚炎の悪化なのか、感染症なのかを見分けることが難しいこともありますから、そのような場合には短期間入院して、治療するのがよいと考えられます。ただし、アトピー性皮膚炎が完治するまで入院するという考えは合理的ではありません。入院により症状が軽くなれば、外来での通院治療となるのが一般的です。

アトピー性皮膚炎の処方薬と副作用 ステロイドで感染症悪化?

塗り薬で炎症を抑えることのできる薬は、ステロイド外用剤とタクロリムス(プロトピック)軟膏で、いずれも皮膚で炎症に関係する白血球を抑えることにより皮膚炎を改善します。どちらの薬も、とびひやヘルペスなどの感染症に間違って塗ってしまうと、細菌やウイルスと戦う役割を持つ白血球の働きをおさえてしまうため、悪化します。

ステロイド外用剤とタクロリムス(プロトピック)軟膏を家庭で使う時に、最も重要なのは、感染症の悪化です。アトピー性皮膚炎の状態の悪い時ほど、皮膚への浸出液が出ているため、感染症が起こりやすい上、発症にも気が付きにくいのです。薬を塗ってから数日経過して、かえって皮膚炎が広がってきたと感じる時は、医療機関を受診するのが安全です。

特に単純ヘルペスは急速に広がることがありますから、注意が必要です。単純ヘルペスが体の広い範囲に広がると熱が出ることがあり、そのような場合には病院を受診することが必要になります。またステロイド外用剤を塗っているうちに、押さえると痛いブツブツしたものができた場合、毛穴に細菌感染が起こって生じる「毛包炎(もうほうえん)」である可能性があります。押さえて痛い場合は、ステロイドを塗らないようにしてください。毛包炎は、ステロイドを塗らなければ、自然に治まることもあります。

臀部(おしり)、耳の周囲などで、薬をぬっているうちに、皮膚の症状が輪を描くように外側へ広がってくるときは、「白癬菌(はくせんきん)」という菌の感染症であることがあります。急速には悪化しませんが、自然には治りませんから、皮膚科を受診してください。

多様なステロイドの副作用

感染症の悪化以外にも、ステロイド外用剤には、長期的に塗ると皮膚が薄くなったり、毛細血管が拡張して赤い糸くずのように見えてくるという副作用があります。患者の方の中には、皮膚が薄くなるなどの副作用を心配する方が多いのですが、これは「慢性の副作用」ですから、急に出てくることはありません。

ステロイド外用剤は1950年代から使われている、古い薬であるため、副作用は既知のものだけであり、副作用対策ははっきりしています。医師の指導に従って定期的に受診していれば、あまり心配する必要はありません。

ステロイドの場合、顔が丸くなったり、糖尿病が悪化したり、骨がもろくなったりするというような全身副作用は通常は起こりません。非常に強いランク(効き目の強い)のステロイドの外用を、1日10g以上、長期間継続すると全身副作用が起こることがありますが、通常、全身の副作用が出るような量を、長期間塗るように指示することはありません。アトピー性皮膚炎は適切な治療を続けると、着実に皮膚炎の範囲が減少して外用量が減ってきますから、全身副作用についての心配は無用です。まぶたに強いランクのステロイドを塗ると眼圧が上がることがあります。普段から眼圧が高い人の場合は、眼科でチェックを受けておくことが望ましいでしょう。

その他にアトピー性皮膚炎の皮膚症状と痒みを抑えるのに高い効果を持つ「シクロスポリン」という免疫を抑える飲み薬があります。長く内服を続けると腎障害を起こすなどの可能性があるため、シクロスポリンは重症のアトピー性皮膚炎に対してのみ用いられます。

タクロリムスの副作用は?どのように使う?

なおタクロリムス(プロトピック)軟膏には皮膚を薄くするという副作用はありません。もともと皮膚の薄い顔や首のアトピー性皮膚炎の治療ではタクロリムス(プロトピック)軟膏がよく使われます。ただ、タクロリムス(プロトピック)軟膏は、かき傷がある部分、炎症の強い部分に塗ると、熱い不愉快な感じを引き起こす薬のため、ステロイドである程度改善してから塗ると治療がうまくいきます。

アトピー性皮膚炎には塗り薬も飲み薬もある?

アトピー性皮膚炎の治療は塗り薬と飲み薬があります。軽症のアトピー性皮膚炎の場合、塗り薬のみでの治療が基本ですが、アトピー性皮膚炎に蕁麻疹(じんましん)を合併している場合は、「抗ヒスタミン剤」と呼ばれる飲み薬を併用するのが効果的です。蕁麻疹がある場合、「急にかゆくなって皮膚をかくと、直ちに赤くはれてくる」ということが繰り返して起こります。

症状がアトピー性皮膚炎によるものか、蕁麻疹によるものかは、きっちりと区別する必要があります。アトピー性皮膚炎の治療の基本は塗り薬で、症状が軽くなり、かゆみがなくなっても、完全に皮膚炎が治まるまで、塗り薬を続ける必要があります。一方、蕁麻疹は急にかゆくなる病気で、治療としてステロイド剤を塗る意義は乏しく、抗ヒスタミン剤の内服となります。そのため、急にかゆくなった時に、ステロイド剤を塗るという習慣をつけてしまうと、蕁麻疹に対してステロイド剤を使い、アトピー性皮膚炎の皮疹には塗らないということになりがちです。ステロイド剤は毎日時間を決めて塗るのが良いのです。

抗ヒスタミン剤以外にも、中等症以上のアトピー性皮膚炎の治療に補助的に使われる飲み薬がいくつかあり、抗ヒスタミン剤と併用したり、使い分けられたりしています。不安な方は、医師らに問い合わせみるとよいでしょう。

アトピー性皮膚炎市販ステロイドの使い方

アトピー性皮膚炎の炎症を抑えるステロイド外用剤は、様々な強さのものが市販されています。皮膚炎が慢性化して硬くなっている部分には、効果の高いステロイド剤を塗る必要がありますが、顔面や陰嚢(いんのう)などの皮膚が薄い部分には、穏やかな効果のステロイド剤を選択するのが一般的です。ステロイド剤は、とびひやヘルペスなどの感染症やニキビに塗ると、悪化を招くことを忘れないでください。また、自己判断で、顔に長期わたって塗り続けると、赤ら顔になってしまうことがありますから、注意してください。

非ステロイドや抗ヒスタミン薬の市販薬をどう使う?

非ステロイド系の消炎鎮痛外用剤(炎症を抑え、痛みをおさえる塗り薬)は、湿疹の治療薬として市販されていますが、アトピー性皮膚炎に使うと、かえって薬にかぶれて悪化することが多いので注意してください。非ステロイド系だから副作用がないというのは大きな誤解です。

かゆみを和らげる目的で、抗ヒスタミン剤の飲み薬も市販されています。抗ヒスタミン剤を飲んで皮膚炎そのものが良くなるということは期待できませんが、頻繁に急にかゆくなる症状のある方にはお勧めできます。なお抗ヒスタミン剤は眠くなることがありますから、製品によっては車の運転が禁止となっているものがあります。

皮膚を保護し乾燥を防ぐ目的で保湿剤も市販されています。クリームやローションのタイプはべたつきがなく塗りやすいのですが、皮膚炎のある部分に塗っていると、刺激となったり、かぶれを起こしたりして、皮膚炎が悪化することがあるため、注意が必要です。

アトピー性皮膚炎に漢方薬はある?

アトピー性皮膚炎を漢方薬のみで治そうというのは良い考えではありませんが、アトピー性皮膚炎が治りにくい時に、漢方薬を併用して飲むと改善することがあります。漢方薬は個人の体質に合わせて処方されますから、知り合いの方に効果のあった漢方薬が自分にも効果があるということではありません。また漢方薬でも、イオンバランスが崩れたり、まれですが内臓に炎症が起こり、生命に関わるような副作用が起こることがありますから、漢方薬を扱っている医師に相談してください。

アトピー性皮膚炎に効果のあるサプリメントがある?

いろいろなサプリメントを飲むとアトピー性皮膚炎が良くなるかもしれないという話を聞くなどすると、試したいと考える方も少なくないと思います。しかし、色々と効果のありそうな薬品や成分の候補の中から、実際の効果や副作用を科学的に検討して合格したものが薬として認可されているのです。

ある抗アレルギー剤はナンテンという薬草の有効成分から作られていますので、その場合、「ナンテンのサプリメントなら試したいが、薬は怖い」という考え方は、合理的とはいいづらいです。ナンテンの有効成分から薬を作るため、安全性のチェックをしている時に、まれにこれが出血性膀胱炎を起こすことがわかったため、医師は副作用に注意して処方できるようになりました。つまり、薬となって安全性は高まったと考えられます。

身近な植物から薬が作られたというエピソードを考えると、全てのサプリメントは無効とは言えません。しかし、アトピー性皮膚炎をめぐって、様々なビジネスが行われている現状では「アトピー性皮膚炎は普通の治療では治らないので、このサプリメントがお勧めです」という販売文句の付いているものは、決してお勧めできません。お子さんなどが苦しむ姿を見て、「色々なものを試して、一刻も早く治してあげたい」という気持ちを持つのは自然なことですが、高価なサプリなどに手を出す前に、一度医療機関を受診することをお勧めします。


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アトピー性皮膚炎の薬や治療についてご紹介しました。アトピー性皮膚炎の発症や改善に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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