アトピー性皮膚炎の原因と症状 いつから発症?遺伝、感染、ストレスで発症する?臭い場合がある?「重症」とはどんな状態?

  • 作成:2016/04/14

アトピー性皮膚炎は、何らかの原因によって、肌のアレルギーが慢性的に起きている状態です。遺伝との関係や発症時期、再発可能性を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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アトピー性皮膚炎はいつから発症する?
「アトピー」は「アトピー性皮膚炎」と同じ?
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎は、アレルギーの一種?
アトピー性皮膚炎は、他人にうつる?感染する?
アトピー性皮膚炎は遺伝する?
アトピー性皮膚炎はストレスで発症・悪化する?
アトピー性皮膚炎は、いつから発症する?赤ちゃんでもなる?
アトピー性皮膚炎の症状 段階がある? リンパ液の浸出は
アトピー性皮膚炎は臭いことがある?対応は?
アトピー性皮膚炎の「重症」とはどんな状態
アトピー性皮膚炎の出る場所
アトピー性皮膚炎は治る?完治する?治らないことがある?
アトピー性皮膚炎は一度なおって再発することがある?
アトピー性皮膚炎の「好転反応」とは?「悪化」?

「アトピー」は「アトピー性皮膚炎」と同じ?

「アトピー」のもともとの意味は、「遺伝的要因を持った人に生じるアレルギーによる病気」という意味の医学用語で、アトピー性皮膚炎、喘息(ぜんそく)、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などを、総合的に指す言葉でした。しかし、現在では一般的に、「アトピー性皮膚炎」の略称として使われることが多くなってきています。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎は、遺伝的な要因がある人に、外から悪化する原因が加わって発症する病気です。遺伝的な要因としては、少なくとも、以下の2つがあることがわかっています。

・アレルギーを起こしやすいということと
・皮膚のバリアとしての働きが弱い

また、「遺伝的な要因+外からの原因」で発症する以上、外部から悪化因子が加わらなければ、アトピー性皮膚炎は発症しません。つまりアトピー性皮膚炎の原因は一つではないのです。

したがってアトピー性皮膚炎について、「完全に食物制限をすると治る」「ストレスを完全に取り去ると治る」「ダニのホコリを完全になくすと治る」「体内の金属を除去すれば治る」といった考え方は、アトピーが起きる原因を十分にふまえた考え方とはいえず、不十分と言えます。極端な考えを信じこんで努力しても、皮膚炎にはほとんど効果がなかったという結果になることがあります。御自身や子供が症状で苦しんでいる中で、「どうにかしたい」と考える方が多いのは事実ですが、原因については、総合的に冷静に考えて、解決策を探ることが大切です。

アトピー性皮膚炎は、アレルギーの一種?

アトピー性皮膚炎は、皮膚に様々な刺激が慢性的(継続的)に加わって、起きる皮膚の症状です。発症には、皮膚のバリア機能の異常、食物やダニなどのアレルギー、皮膚に接触するもののアレルギー、皮膚をかくことなど、様々な要因が関与しています。これらの要因が複雑にからみあって、悪循環に陥ったものがアトピー性皮膚炎と言えます。

アトピー性皮膚炎の患者の方は、皮膚の「バリア」としての働きが弱いので、皮膚に塗っているものや皮膚に付着するものに含まれる成分が、普通の人の場合より、高い割合で皮膚に侵入してしまいます。アトピー性皮膚炎の患者でない方でも、皮膚に高濃度の化学物質を貼り付けると「接触皮膚炎(かぶれ)」を起こしやすいということがわかっていますから、アトピー性皮膚炎の患者の方は、薬や化粧品、保湿剤などの皮膚に塗るものや、ゴム手袋や植物、果物の汁、金属、革製品など、皮膚に付着するものにかぶれやすいことに注意する必要があります。さらに悪いことに、もともと皮膚炎があるため、かぶれが起こっても、気付かないということがあります。かぶれが継続するとアトピー性皮膚炎は、どんどん悪化してしまいます。

アトピー性皮膚の野場合、接触する部分のアレルギーだけではなく、全身のアレルギーにも注意が必要となります。皮膚にダニの成分や、食物の汁などが繰り返し付着して、その成分に対するアレルギーとなってしまった後、原因となる物質をホコリとともに吸い込んだり、食べたりすると、全身のアレルギー症状を起こすことがあります。結果として、蕁麻疹(じんましん)、喘息が起きたりします。まれに、重症のアレルギー症状として呼吸困難、血圧低下などを起こしたりすることもあります。気付かないまま、食事のたびに蕁麻疹の原因物質を接種してしまうようになると、かゆくて皮膚をかき、さらにアトピー性皮膚炎が悪化するという悪循環が起きてしまいます。

アトピー性皮膚炎は、他人にうつる?感染する?

アトピー性皮膚炎は他人にうつる(感染する)ということはありません。しかし、皮膚の状態が悪くてジクジクしている部分では、「黄色ブドウ球菌」という菌が増殖していることがあり、手などに症状が出ている場合、触った食品が食中毒の原因となってしまうことがあります。また時に。アトピー性皮膚炎の症状となっている部分が、「実はヘルペスの症状だった」ということがあります。単純ヘルペスは、傷のある皮膚や、粘膜面に触れるとうつりやすいので、注意が必要です。

アトピー性皮膚炎は遺伝する?

アトピー性皮膚炎の発症には、ある程度遺伝が関与しています。アトピー性皮膚炎の発症に遺伝がどれくらい関係しているかを科学的に証明するために、双子での研究で明らかにした論文が発表されています。一卵性(遺伝子は同じ)と二卵性(同時に生まれた兄弟で遺伝子は異なる)の双子について、アトピー性皮膚炎が発症しているかどうか調査したというものです。

完全に遺伝だけによって発症する病気であれば、一卵性の双生児は、遺伝子が同じですから、一致する率は100%になります。遺伝が全く関係ないのであれば、一卵性の双子と、二卵性の双子では、発症する確率に差がないはずです。この研究の結果、アトピー性皮膚炎の一致率は、一卵性の双子では72%でした。つまり、全く同じ遺伝子を持っていてもアトピー性皮膚炎を発症する人と発症しない人がいるという結果でした。。ただ、遺伝子の異なる二卵性の双子では一致率は23%で、一卵性の双子の方が一致率の方が高いのという結果でした。つまり、アトピー性皮膚炎は遺伝も関係ありますが、そこに環境の要因が加わって、発症するものと考えられます。

結論としては、両親がアトピー性皮膚炎であれば、子供もアトピー性皮膚炎になりやすいのは事実ですが、環境をコントロールすることで、子供がアトピー性皮膚炎にならないこともあるということになります。

アトピー性皮膚炎はストレスで発症・悪化する?

アトピー性皮膚炎がストレスで悪化するということは、よくあるのは事実です。しかし、ストレスだけでアトピー性皮膚炎を発症するということはなく、ストレスを完全に取り除くだけでアトピー性皮膚炎が治るということもありません。アトピー性皮膚炎の治療がうまくいくと、少しストレスがあっても、皮膚炎の症状が出ない(「再燃しない」と言います)状態となります。治療では、ストレスで再燃しない状態にするのが1つの目標となります。

注意が必要なのは、「病気が治らないと考えること」は大きなストレスになってしまいます。アトピー性皮膚炎は適切に治療すれば、良くなる病気です。定期的に受診して、きっちり治療して行けば、症状が改善してストレスは減るでしょう。

ストレスが健康によいということはなさそうですから、ストレスにはうまく対処することが必要です。考えても結果が変わらないことについて考えこむのはストレスになるだけでメリットがありません。多くの方は、雨について、「明日雨が降るか」ではなく、「雨が降ったらどのような行動を取るか」を考えながら行動を決めていると思います。同様に、アトピー性皮膚炎でも、起きていないことについて考えこまず、起きた時に可能な限り備えておき、ストレスを溜め込まないのが重要です。症状に悩む方や家族にとっては、簡単にできることではないかもしれませんが、意識を少しずつ変えていくのも重要です。

アトピー性皮膚炎は、いつから発症する?赤ちゃんでもなる?

アトピー性皮膚炎は湿疹が慢性化したもので、乳児では「2カ月以上続く」ことが、診断の一つの根拠となっています。何らかの湿疹は生まれて1カ月で発症することがあります。これが次第に悪化すると生後3カ月でアトピー性皮膚炎と診断されることがあります。湿疹のできやすい体質で、湿疹が長引くと、右肘の内側にあれば、左肘の内側にも出るといったような、湿疹が左右対称に出てくるようになります。湿疹の症状が強くなると、左右の膝の後ろなどにも湿疹がでてきます。湿疹がこじれてきたものが、アトピー性皮膚炎と考えられています。なお、大人を診断する場合は、6カ月以上続く湿疹が確認されることが必要です。

アトピー性皮膚炎の症状 段階がある? リンパ液の浸出は

アトピー性皮膚炎は、最初、皮膚がカサカサした状態になります。この段階では赤みはなく、かゆみもほとんどありません。ただ、単なる乾燥とは違って、触ってみると皮膚が少し硬くなっています。軽いアトピー性皮膚炎の場合、症状が出るのは部分的で、楕円形などをしていて、乾燥が原因で、皮膚全体が一様にカサカサするのとは違います。なぜ区別が大切かというと、アトピー性皮膚炎は、痒みのほとんどない初期にきっちり治療をして治すのが良いからです。「触ると少し硬い」「部分的」ということが、軽いアトピー性皮膚炎と乾燥を区別するための手がかりです。

アトピー性皮膚炎が少し悪化すると、赤みが出てきて痒みも感じるようになります。赤みのあるカサカサした感じだけでなく、赤いぶつぶつが少しずつ生じてきて、かいてしまってところでは、ひっかき傷になっています。この状態が長引くと、皮膚は非常に硬くなってしまいます(「苔癬化(たいせんか)」といいます)。炎症がひどくなると、ジクジクと「リンパ液」という体液が染み出してくるようになります。とても長い経過となった時は、「痒疹(ようしん)」と呼ばれる。硬いしこりが多く出てくることもあります。

アトピー性皮膚炎は臭いことがある?対応は?

アトピー性皮膚炎が悪化し、全身の皮膚から角質の粉が落ちるようになると、特有の臭いがすることがあります。臭いは、アトピー性皮膚炎の治療を行うと直ぐに良くなります。デオドラントクリームなどを塗るとアトピー性皮膚炎が悪化してさらにひどくなりますので、皮膚科を受診して、医師とともに対応するようにしてください。

アトピー性皮膚炎の「重症」とはどんな状態

ある部位の皮膚炎は、皮膚から浸み出した液でジクジクしている時は、「重症」と診断されます。重症部分の皮膚炎の治療には、強力な塗り薬が選択されます。

ただ、「病気としての重症度」では、皮膚炎の炎症の強さだけではなく、皮膚炎がどれだけの範囲に広がっているかも、同時に考慮して判断します。重症のひどい症状が起きている皮膚の範囲がとても狭い時には、病気としては「重症」とは判断されないということです。

なお「重症」の皮膚炎の範囲がとても狭いところにだけ存在している場合は、治療や対応が間違っていることがほとんどであり、適切な治療を行えばすみやかに症状が良くなります。したがって、「重症の皮膚炎=治りにくい皮膚炎」ということではありません。

アトピー性皮膚炎の出る場所

アトピー性皮膚炎はひどくなると全身に皮膚炎が生じますが、もともとアトピー性皮膚炎が出やすい部位は肘(ひじ)の内側、膝(ひざ)の後ろ側、首、股など関節部の内側です。耳の付け根なども皮膚炎がよくできる部位で、汗のたまりがちなところにアトピー性皮膚炎はできやすいと考えられます。また、乳児と10代後半以降は顔面にアトピー性皮膚炎の皮膚炎ができやすいことがわかっています。大人になると顔と首にのみ強い炎症がでてくることがあり、「成人型アトピー性皮膚炎」と呼ばれています。

アトピー性皮膚炎は治る?完治する?治らないことがある?

「痒みがある程度出てきたらステロイドを塗って、痒みのない軽い炎症の状態になったら塗るのをやめる」ということは、あまり良い治療方法ではありません。軽い炎症が残っていると、ささいなことで悪化して、またかゆくなってきます。ささいな悪化する要因を完全に避けようとしても、日常生活の中では、ほとんど不可能といえます。炎症が完全になくなるところまでしっかり治療して、あとはスキンケアで再発を防ぐということが目標になります。

アトピー性皮膚炎は適切に治療をすると治る病気です。一般的には発症してからの期間が短い人ほど治りやすく、薬を使って完全に皮膚炎がない状態が3カ月から半年続けば、安定した状態となり、軽度の刺激が加わっても皮膚炎が出ない状態となります。この状態を「完治」と考えることもできます。

発症してから長い期間が経過した方は、完全に皮膚炎がない状態に持ち込むことが難しいこともありますが、そのような場合でも薬を使うことで大幅に症状を和らげることは可能です。担当している医師と良く相談しながら、治療の目標を設定するのが良いでしょう。

アトピー性皮膚炎は一度なおって再発することがある?

アトピー性皮膚炎が長く出ていない状態になると、ささいな悪化する要因があっても再発しなくなりますが、残念ながら、大きな悪化要因があると再発することがあります。特に皮膚に、かぶれの原因となるものをつけることは大きな悪化要因となります。過去にかぶれを起こしていて原因がわかっていながら、毛を染めてしまう、ピアスをしてしまう、特定の靴を履いてしまうことなどをして、繰り返す方もあります。ファッションなどは、心理的に止めにくいことと思いますが、一度かぶれたものは、原則として慣れてくることはないので、やめておくようにすることが、再発しないために重要です。 再発した際は、早めに治療をするとすみやかに落ち着いてくることが多いので、治療の再開をためらわないようにしましょう。そして再発した理由考えて、医師と相談するようにして、さらなる悪化や再発をしない方法を検討するようにしてみると良いでしょう。

アトピー性皮膚炎の「好転反応」とは?「悪化」?

「好転反応」というのは、本来漢方治療の概念なのですが、アトピー性皮膚炎の治療においては「好転反応」というのは、一部の医療機関などのセールストークの1つになっています。アトピー性皮膚炎を治療する時に治療がうまく行かず悪化した時に、「悪化したように見えますが、これは好転反応といってアトピー性皮膚炎が良くなる前に一時的に起こることです。ここで今の治療をやめてしまうと、今まで努力が全てムダになってしまいます。もう少し続けることがあなたの人生を変えることになるのです。」という説明をする人がいます。ただ、実際はアトピー性皮膚炎の治療においては、良くなる前に悪化するという現象はありませんから「好転反応」というのは不適切治療による「悪化」と考えて良いでしょう。症状をおさえる方法はある程度確率されていますので、適切な医療機関を選択するようにしましょう。


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アトピー性皮膚炎の原因や症状についてご紹介しました。アトピー性皮膚炎の発症や改善に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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