肥満症って何?
リスクと治療法
大西由希子 先生監修
朝日生命成人病研究所附属医院
診療部長
肥満症に関する医師監修記事
肥満症治療者に聞いた
体験談
肥満症で受診・治療した方の
体重減少の成果や診察の様子、
未治療の方へのメッセージをご紹介します
我流ではリバウンドを繰り返してましたが、
専門医の栄養指導のもと1カ月で3キロ痩せられたことで、少しずつ自信が芽生えました。
治療を受け始めて、お酒を飲みたいという気持ちが全くなくなった。
脂肪肝や肝機能、血圧の正常化が目的だったが、少し痩せるだけでも体が軽くなりました。
高血圧や膝の痛みに危機感を覚え大学病院へ。栄養指導で食事への感覚のズレに気づき5キロ減量に成功しました。
減量したことで膝の痛みが少し改善され、また食費が抑えられ家計が楽になるという嬉しい変化もありました。
漢方治療を開始し体重が落ちたことで、運動意欲が湧きジムとの相乗効果で10キロ以上減量できました。
病院での血液検査で、体の状態が数値で見えるので、それが健康維持に繋がると思います。
専門医への質問9選
大西由希子 先生監修
朝日生命成人病研究所附属医院
診療部長
Q. 痩せなくてもよい肥満はありますか?
残念ながら医学的に体に良い肥満はありません。
BMI※25以上を肥満とした場合、スポーツマンなどで筋肉量が非常に多く脂肪ではなく筋肉で体重が多い場合には、BMIで25以上でも脂肪蓄積がない場合があります。
しかし、スポーツマンで筋肉は多い一方で脂肪も多く、なかにはメタボリック症候群を発症されているかたもいらっしゃいますので、定期的な健康診断は受けていただくのが安全です。
格闘家などその体格の維持が必要なご職業な場合でも、せめて血圧、血糖値、脂質の治療はしておかれたほうが未来の脳梗塞、心筋梗塞などの予防になると思います。
また、若いときはBMI25以上でも健康障害がないこともあります。
しかし、年齢を重ねるにつれ同じ体重でもいろいろな健康障害が出現してくる確率が高くなります。
やはり肥満のある場合にはBMI25未満をまずは目指していただくことが未来の健康につながると思います。
※(BMI=体重(kg)/身長2(m))
Q. 痩せられないのは、やはり自分の責任なのでしょうか?
自分の責任とそうではない要素の両方があります。
食事のカロリーの摂りすぎ、運動不足はもちろん痩せられない原因のひとつで、食べるか食べない、運動ができるのにしないのは自分の責任です。
一方で痩せやすい、太りやすい、というもともとの体質があり、それは自分の責任ではないです。
身長が低いのは自分の責任「だけ」ではないのと似ていますね。
最近では、腸内細菌の状態によって太りやすくなることがあることも知られています。
食事の種類によって同じカロリーを摂っていても腸内細菌が痩せにくく変わっていく場合もあることが知られています。
どうしても抑えられない食欲を抑制する薬剤を専門の医療機関で保険診療で処方してもらう選択肢もあります。
どんな体質でも肥満の場合はリカバリーの可能性が大いにありますので、諦める必要は全くありません。
Q. 通える時間がないため、自費診療を選びたいです。選ぶ際の注意点はありませんか?
自費診療のみで肥満症治療薬を処方しているクリニックへの受診はおすすめしません。肥満が気になるなら、保険診療を行っている肥満症専門クリニックに行きましょう。問診や検査結果を通じて、治療すべき他の疾患がないか、どのような生活習慣の工夫が必要か、本当に肥満症治療薬が必要な状態か、必要ならば肥満症治療薬の安全性を確認しながら処方してくれる医療機関を紹介してもらう必要があります。
お忙しいからこそ、健康のメンテナンスにはある程度、時間をかけることが大事です。
Q. みんなちゃんと減量成功していますか?治療した後の人は、どのように変わりましたか?
通院されているかたがたは、みんな健康管理に成功しているといえます。
肥満に伴う健康障害、特に血圧、血糖値、脂質、尿酸値などを薬物療法でそれぞれの異常値を問題のおきにくくなるところまで調整できているかたがほとんどです。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症を放置していると、心筋梗塞、脳梗塞など命にかかわる病気になったり、痛風という関節に激痛がおきる病気になったりしていたかもしれません。
日中眠くてしかたないのは、睡眠時無呼吸症候群があるからかもしれません。
減量は時間がかかることがあっても、肥満に伴う健康障害の治療をすることによって重大な病気のリスクを減らせることは大変有意義です。
減量そのものに成功したかたは、特注の服でなく一般的なサイズの服を買えるようになった、という喜びだけでなく、膝の痛みや腰痛から解放されてとても楽になった、と減量の効果を実感しています。
Q. 自己流のダイエットと肥満症治療は何が違いますか?
肥満症治療は減量そのものが目的ではないところが違います。
自己流ダイエットは、体重のみを見て痩せることを目標にします。
肥満症治療は、減量そのものよりも肥満に伴う健康障害に着目しながら、患者さんそれぞれの状態に応じて優先順位をつけてアドバイスや薬物治療をします。
食事運動療法など適切な生活習慣改善をしながら通院していても継続的に減量することは難しいこともあります。
それでも通院する意味はあります。
減量できなくても、血圧、血糖値、脂質、尿酸値などが高いかどうか確認して、高ければその治療を開始します。
減量がうまくいくと薬を減らせることも多いです。
生活習慣の改善をしながらも減量がうまくいかない場合は食欲を抑制する薬剤を併用しながら治療していきます。
Q. 医師に怒られないか不安です。激しい運動や、極端な食事制限を強要されないですか?
ひと昔前は食べ過ぎて痩せられない患者に怒る医師もいたかもしれませんが、最近はそういう医師は珍しいと思います。
医師に怒られるか不安になるよりも、肥満症の治療をしないままでいる将来を不安に感じてください。いきなり激しい運動は強要しません。肥満の人を正しく評価せずに激しい運動をすすめると、足腰をいためたりときには狭心症の症状が出る場合もあります。
日ごろの運動量などを確認しながら継続可能な運動習慣の提案から始めます。
極端な食事制限も継続できなくなるのでおすすめしないはずです。
食習慣の改善は管理栄養士による栄養指導を受けると具体的で現実的な提案をしてもらえるでしょう。
糖尿病療養指導士や肥満症生活習慣改善指導士の資格をもったスタッフがいる医療機関は、日本糖尿病学会や日本肥満学会の教育認定施設をそれぞれのホームぺージで公開しているので、そういった施設を選択するとより専門的な食事運動療法のアドバイスが得られるでしょう。
Q. 薬にはどんな副作用がありますか?薬を止めたら体重は元に戻りませんか?
肥満症の治療薬は、ウゴービとゼップバウンドがあります。
どちらも食欲を抑制する作用があり、そのため食事量が減るのに伴い体重が減ります。
副作用として、気持ち悪くなる、吐き気、吐く、便秘や下痢などの消化器症状がでる場合があります。
それを避けるためには、薬を最低用量から一か月かけて少しずつ投与量を増やしていきます。
すると気持ち悪くならずに食欲がうまく抑制されて食べ過ぎ防止になって痩せていきます。
また、胃の中のものが残りやすい、という副作用もあります。
そのため、朝食を食べていないにも関わらず胃カメラの検査をすると食事が残っていることがあります。
それは前の日の夕食が残っているからです。
薬を止めると食欲が戻ります。
食欲に任せて食事を食べれば体重は戻ります。
食欲が戻っても、せっかく痩せた体重を維持すべく食欲をコントロールすることが投薬終了後はとても大事です。
Q. 治療費はどれくらいかかりますか?
以下、保険診療の三割負担だった場合の額を示します。
医師の診察や栄養相談を受けると一か月に3000-4000円です。
肥満症治療薬の処方が開始されると診察費が4000-7000円程度かかります。
また診察費とは別に、薬代5000円-2万円前後(薬の内容による)になります。
さらに定期的な検査なども行いますのでそれに対する費用もかかります。
また診療所か病院かによって治療費が変わる場合があります。
薬物療法を用いず食事運動療法がうまく実践できれば、そのほうがずっと安く済みます。
しかし、どうしても痩せられない状態で健康障害を放置すると大きな病気をして桁違いの医療費がかかりますし、何よりも健康が損なわれ、ときには命を落とすこともあります。
治療の必要性とかかる治療費について主治医に率直に聞いてみてください。
Q. 主治医に肥満症の相談する際には、なんといえばいいですか?
「健康のために痩せたい」でよいと思います。
なぜ痩せる必要があるのか、肥満症だと健康上何が問題なのか、痩せるだけではなくどういう病気を優先して治療したほうがいいのか、などを主治医に判断してもらいましょう。
肥満症の薬物療法を受けたい場合には、自分がその治療対象かどうか、もし治療対象だった場合には主治医に処方してもらえるのか、主治医から処方してもらえない場合どの医療機関に行ったら肥満症の治療薬を処方してもらえるのか、教えてもらいましょう。
医学的に痩せる必要がなかった場合にも、なぜ痩せる必要がないのか、痩せすぎの弊害なども含め話が聞けるかもしれません。
日本肥満学会のホームページに公開されている認定肥満症専門病院を受診するのもよいと思います。
肥満について、「自分の努力不足」「意志が弱いだけ」と思い、一人で悩み続けている方は少なくありません。しかし実際には、肥満は体形だけの問題ではなく、糖尿病、高血圧症や脂質異常症など生活習慣病の入り口になっているケースも多く、医学的な治療が必要な「肥満症」という病気な場合があります。
食事や運動を頑張っても肥満が改善しにくい背景には、体質やホルモン、生活環境などさまざまな要因が関わっています。必要に応じて薬剤を用いて食欲を抑制して減量する治療薬という選択肢もあります。
肥満症治療により痩せることに成功して、「膝の痛みが良くなった」「着たい服が着られる」などその効果を実感できたという方も多くいらっしゃいます。健康を守るために、肥満の悩みを一人で抱え込まず、ぜひ一度医療機関へご相談ください。