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ADHDの治療法は?

ADHD診断後の治療や支援、実際の治療をお伝えします。

岸本 雄 監修
多摩済生病院 /VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 精神科医
岸本 雄 先生

ADHD診断後の治療や支援

医療機関を受診して、ADHDと診断がついた場合、もしくはADHDに見られる症状への支援が必要になった場合、大きく分けると「環境調整」、「心理社会的治療」、「薬物療法」が行われます。まずは「環境調整」や「心理社会的治療」が優先されますが、子どもよりも行動範囲が広く社会的な役割が大きい大人の場合は、「薬物療法」も含めた総合的な支援が必要なケースもあります。

①環境調整

ADHDの症状における日常生活の困りごとに対処する手立ての一つとして「環境調整」があります。「環境調整」とは身の回りの物や仕組みをうまく利用して、特性によるミスを減らそうとする試みです。例えば、家の中でスマホをなくすことが多い場合、『スマホを置く場所をつくる』というのも環境調整です。
そのほかにもメモを取る、付箋を貼っておく、予定表を作る、アラームを設定する、家と職場に同じものを買っておく、などの方法もあります。最近ではスマートフォンのリマインダーやカレンダーなどのアプリを利用する方法もあります。

②心理社会的治療

ADHDの患者さんは幼少期の頃からその特性によって学習面、生活面、人間関係でうまくいかない経験を積み重ねて成人になる方が少なくありません。心理社会的治療では、自分がもつ特性を理解して日常生活をよりよくしていくための手立てや工夫を身につけていくことを目標にします。
人によってADHDの特性は様々です。したがって、自分に合った手立てや工夫を見つけるためには、一般的なADHDの特性について知るだけでなく、自分のもつ特性について医師や心理士などの専門家と共に理解を深めていくことが重要です。これを「心理教育」といいます。
「心理教育」の他に「認知行動療法」が行われることもあります。認知行動療法では自身の考え方や行動の特徴を見直して、問題を解決していきます。例えば、やる気の起きないことにも取り組めるようにする、他のことに気を取られずに集中して作業に取り組めるようにするなど様々なものがあります。指導を受けて個人で行うこともあれば、社会適応スキルを学ぶために集団で行われることもあります。次に説明する薬物療法と併用して治療を進めることもあります。

③薬物療法

ADHDの原因は脳の機能障害と言われています。
脳内の神経細胞はドパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質によって、神経から神経へ情報を伝達しています。ADHDの症状は、これらの神経伝達物質が不足するなどで起こる神経の伝達異常によってあらわれるとされています。
現在、ADHDの治療薬は国内で4種類が発売されており、患者さんの症状や状況に合わせて使用されています。適正な用量には個人差があるため、医師と相談しながら用量を決めていきます。また、二次的精神症状に応じて、抗うつ薬や抗不安薬などが使用されることもあります。

・コンサータ(メチルフェニデート製剤)

脳内のドパミンとノルアドレナリンの働きを強める作用があります。 1日1回の服用で約12時間効果が持続します。
副作用として見られる食欲不振には、十分な注意が必要です。

・ストラテラ(アトモキセチン製剤)

脳内のドパミンやノルアドレナリンの働きを強める作用があります。服用を続けていれば効果が切れることなく持続しますが、安定した効果が得られるのには1~2ヶ月ほど時間がかかります。カプセルの他に液剤や錠剤もあります。
副作用として見られる吐き気や食欲不振などの消化器症状は、2回に分けて服用したり、少ない用量から少しずつ増量したりすることでやわらげることができます。

・インチュニブ(グアンファシン製剤)

脳内のノルアドレナリンの働きを強めるのではなく効率を改善する作用があります。効き始めるのに1~2週間ほど必要ですが、ストラテラと同じように効果が切れる時間がなく持続します。
元々、血圧を下げる薬として使われていたこともあり、血圧低下の副作用があります。また、交感神経の働きを抑えるので眠気が起こることもあります。

・ビバンセ(リスデキサンフェタミン製剤)

脳内のドパミンやノルアドレナリンの作用を高めることで脳の情報伝達を高める作用があります。1日1回の服用で12時間ほど効果が見られます。
副作用として、食欲不振や不眠が表れることがあります。午後の服用は避け、なるべく朝食後に服用します。

【参考文献】

1)コンサータ添付文書

2)ストラテラ添付文書
3)インチュニブ添付文書
4)ビバンセ添付文書
5)注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第4版 じほう

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体験談ADHDの診断・治療

ADHD患者さんの診断から治療まで体験談を公開

体験談1
Aさんの場合(40代・女性)

友人から「私が通っている病院がいいよ」とすすめられたので、まずはカウンセリングを受けてみようと思いその病院を受診すると、ADHDと診断されました。

体験談2
Bさんの場合(40代・女性)

事務の仕事をしているのですが、数字や細かいことがとても苦手で、物事に優先順位がつけられない、時間を守れず遅刻してしまうなどで、色々と悩んでいました。

体験談3
Cさんの場合(30代・女性)

子どものADHDの診断を機に、自分にもADHDの特性で当てはまることが多いことが気になり、精神科の先生に相談したところ、ADHDの診断を受けました。

ADHD Q&Aコーナー

堤 多可弘監修
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 副院長/精神科医・産業医
堤 多可弘 先生
  • おっしゃる通り、診断を受けることで、ショックを受けてしまう方もいらっしゃるでしょう。
    しかし、診断を受けることがその人の全てを決めてしまうわけではありません。
    あくまで 、いち側面に名前がついたにすぎません。

    また、人生を決めてしまうわけでもありません。診断の有無に関わらず、活躍されていたり、自分の望む人生を送られている方は数多くいらっしゃいます。

    むしろ、診断をつけることによって自分の特性を知り、その対策を立てることで、より人生を豊かにするチャンスが広がると考えてください
    また、診断が付くことによって様々な支援やサービスなど受けられる場合もあります。そういった意味でも困りを減らす手助けになります。

    診断は「前に進むためのいちステップ」程度に思ってもらえれば大丈夫です。

  • 「いつまで治療を続けるか」とか「どんな治療があるのか」とかは治療を始めるにあたって気になるところですよね。

    質問の答えに入る前にちょっと長くなりますが重要な前置きをさせてください。

    ADHD は特性としての側面が強い疾患です。つまり生まれつきの性質ですね。風邪や骨折のように完治!というイメージではなく、「その性質をうまくコントロールできるようになり、困りを減らす・無くす」ということが治療の一番の目的になります。 お薬も、「飲み続けることで治る」というよりも「飲んでいる間に症状をカバーする」という意味合いが強いと考えられています。目が悪い人が眼鏡をかけるようなイメージですね。
    また、自分でいろいろと調べたり工夫をしたりすることなどもある意味では治療と言えます。

    混乱を避けるために、ここでの「治療」は、お薬を飲むことや医療機関や専門機関の専門家によるカウンセリングやサポートなどをうけることだとします。
    具体的にどのような治療があるかと言うと、薬物治療、認知行動療法、ソーシャルスキルトレーニング、 専門家によるケースマネジメントと環境調整、種々のカウンセリング、デイケア、ナイトケアなどです。
    ADHD の治療はこういったものたちを組み合わせて行います。

    さて、前置きが長くなりましたが、いつまで治療を続けるかということについてお答えします。

    結論から言うと困りがなくなるまでは治療を続けることになります。
    ADHDの一番の問題は、その症状によって困りが生じることだからです。

    具体的な例を出して説明します。
    ADHD と診断されている不注意が目立つ人が、注意力を要する仕事についてしまった結果、ものすごく困ったケースがあったとします。
    その人がカウンセリングを受けて、不注意をカバーする方法を身につけて仕事で困ることがなくなればそこで治療は終了です。 また環境調整として転職をした結果、困りがなくなれば治療終了といえます。
    野球選手がフォームを変えてパフォーマンスを上げたり、ポジションを変えてレギュラーをつかむようなものです。

    お薬に関しても似たような考え方ができます。お薬を飲みつつ、色々な工夫を身につけて、ADHDとうまく付き合える感覚を身につけたらお薬を終了しても良いと考えられています。
    もちろん薬をやめてしまうと症状が再燃してしまうケースも多いので、主治医とよく相談しながらメリット・デメリットを考えていくのが良いでしょう。

    ADHD の治療はうまく付き合えるようになるというのが目的です。そのためうまく付き合えるようになったら治療は終了と言えるでしょう。

  • 最近では発達障害や ADHD の診療をうたっているクリニックなども増えていますがどこが専門なのかよく分かりませんよね。ホームページに書いているからといって必ずしもご自身と相性が良いとも限りません。

    いくつか判断材料になるものをお伝えします。

    ①心理検査がうけられるか
    ADHD の治療に関しては心理検査が大きな役割を担います。もちろん心理検査はだけで診断をつけられるわけではないのですが特性を把握して対策を立てるためには大きく役に立つからです。 ADHDの心理検査やWAIS-Ⅳ知能検査などが受けられるかどうかを調べるとよいでしょう。

    ②公認心理士・臨床心理士のカウンセリングが受けられるか
    ADHD の治療は、薬物療法だけではなく、認知行動療法やカウンセリングなどが重要になります。全員が全員必要とするわけではないですが、受けられるところの方が治療選択肢が広がるのでおすすめです。

    ③ドクターがADHDの薬を処方できるか
    ADHD の一部の薬は処方には認可が必要なのでその処方ができる病院にかかった方が、治療選択肢が広がります。

    ④デイケアなどの治療選択肢があるか
    カウンセリング以外にも、デイケアやナイトケアといった、ADHD の特性を学んだり対策をたてたりするのに役立つ治療選択肢があります。こういった施設を持っているところの方がやはり選択肢が増えるのでおすすめです。

    ここまで説明しましたが、「探すの難しいな」とおもわれたかもしれません。実際全てを兼ね備えている機関は多くないのが現状です。また相性も大事ですよね。

    そこで最も簡単な方法としては、大学病院や国立病院、県立精神医療センターなどの中核となる病院を受診してみるのがおすすめです。こういった大きな病院には専門家がることが多いですし、中核病院には情報が集まっているのでより専門的な医療機関を紹介してもらえるかもしれません。受診にあたっては紹介状が必要な場合もあります。その場合はメンタルクリニックからの紹介状が望ましいですが、 普段かかっているメンタル以外のクリニックでも紹介状は書いてもらえるので「○○病院に受診したいけど手紙が必要と言われた。簡単でいいのでお願いします」と頼んでみると良いでしょう。

    反対に注意してほしい点も伝えておきます。
    最近では眉唾な治療や高額な自費治療をいきなり勧めてくるクリニックなどもあります。
    日本の医療保険は大変優れており、しっかりと効果のある治療であれば基本的に保険適用となっています。 あたかも最新最良の治療であるかのように謳っていたり、 それらしい論文を掲載して有効性が高いように見せたりしていますが、 通常の保険診療で受けられる治療の方が効果が高いことがほとんどです。 十分気を付けて慎重に判断しましょう。

    なお、大学病院などで研究もかねて、保険外の最新の治療をする場合は、きちんとその旨の説明があるので安心して大丈夫です。

    また心理士によるカウンセリングは多くの場合自費ですが、1回1時間数千円から1万円前後が相場です。これらは問題ないはずです。

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  • 薬物療法が不安という方は大勢いらっしゃいます。
    しかし、少なくとも保険適用されている薬物治療に関しては、厳しい審査を経て採用されている薬ばかりです。重たい副作用が起きる可能性は低いです。

    また重たくなくとも副作用が出てしまった場合は、別の薬に変えたり量を調整したりする、あるいは一時的に副作用止めを利用するなどで、日常生活に支障が出ないように工夫することは可能です。

    薬に依存してしまうことを心配される方も多いですが、医師の指示に従ってきちんと服用していれば、極端な依存に陥ることもありません。また、1度飲んだからといって未来永劫に残るような障害が出たり、自分の性格や思考回路が変わり続けてしまうということもありません。

    最終的にはお薬を飲むことと飲まないことの、メリットとデメリットを比較することになりますので、主治医によく相談してみるといいでしょう。私も治療するにあたっては「一度飲んでみて、飲んでた方が調子が良ければ飲み続けてみましょう。飲まない方がいいなとか、効果がわからないなと思えばやめてしまいましょう」とお伝えしています。中には「一度やめてみたけど、やはり飲んでいた方が調子がいい」といって再開するケースもあります。副作用が出づらいように、ごくごく少量から始めることも可能ですので、あまり不安になりすぎなくてよいでしょう。お薬によって困りがなくなり、豊かな人生が送れるようになればと思います。

ADHDの診断に関する相談一覧