Q

糖尿病性腎症とたんぱく制限について

腎症が進むとたんぱく質を制限するように言われますが、
たんぱくが尿に排出されるのに、なぜ制限する必要があるのかがわかりません。医師には「腎臓を守るため」といわれますが、そのへんの詳細を教えていただければと思います。

質問者:ちよ さん

ファミリークリニック・Dr. Nori 先生
腎臓内科

ファミリークリニック・Dr. Nori 先生

糖尿病性腎症は血液透析や腹膜透析の新規導入原因の1位であり、年々その数を増しており、また、糖尿病を原因とした透析患者さんの生存期間も他の疾患を原因とする場合より短くなっており、5年あるいは10年がせいぜいともいわれています。腎症の進展を抑えることは糖尿病の患者さんにとってまさに死活問題といえるものです。
糖尿病性腎症の進行を抑える基本戦略は次の4つがあげられます。
1.血圧の適正化。
2.血糖コントロールの適正化。
3.低蛋白食。
4.家族の協力。
以前は顕性蛋白尿の出現した3期以降の腎症は非可逆的に進行するといわれていましたが、上記の戦略を確実に実行することにより、蛋白尿の消失や腎症の進行停止、さらには改善すらありうることが報告されるようになってきました。糖尿病で蛋白尿が出るようになった患者さんにはまさに朗報といえることでしょう。
さて、低蛋白食についてですが、それが腎症の進展抑制につながる理由についてはまだ不明確な点が多いと思います。ただ、いえることは、腎臓を構成する単位であるネフロンの重要な部位である糸球体に高い負荷がかかるとネフロンの荒廃は進みやすくなり、高い負荷の理由が糸球体への過剰な血流や糸球体の高血圧だといわれていて、高蛋白食はそれらの理由になること、それから、実際、低蛋白食により、腎症の進展抑制が図られることが観察されていることです。
腎症進展の抑止には上に示した戦略が必要ですが、低蛋白食はその中の一つに過ぎません。総合的な治療戦略を理解し、家族の協力と主治医の的確な作戦能力で、是非、成果を勝ち取ってください。

秋山 森之進 先生
一般内科

秋山 森之進 先生

蛋白制限は,まず理解する段階で混乱しやすいですね。しかし,理由を解ってもらっても実行する段階でまた問題があります。

糖尿病でまず食事指導を受けると,たいてい6群の分類を習います。そしてカロリーを必要十分に抑えて,甘い物を食べないで…と言われます。ところが腎症が出ると,蛋白制限=蛋白を減らすために糖質・脂質が多くなり,食事が甘くなるのです。カロリーを抑え過ぎて蛋白が減りつづけないように,カロリーを増やします。初めと正反対の事を言われたように感じ,多くの方がびっくりします。さらに,蛋白を含む量によって食品を分類し直すのです。これを最初の分類と混同して食事療法がかえってボロボロになってしまう人もいます。残念ながら全ての患者が実行可能ではないのです。

最後に,これらを完全に実行しても腎症が良くはなりません。悪くなるのが「マシ」になるだけなのです。

理解が難しく,実行も大変で混乱しやすく,効果も「マシ」になるだけ…。腎症の蛋白制限は,気軽に勧められる治療法ではありません。それぞれの患者の理解の程度,実行できる環境などを見ながら指導しないと,かえって食事療法を崩壊させる事になり得ます。

血管心臓医 先生
循環器内科

血管心臓医 先生

食事から摂られるタンパク質は、必要な分だけ筋肉になったり体の働きを調節するために使われます。余ったタンパク質はこわされて老廃物として腎臓から捨てられるのです。
さて、腎臓の働きは血液中に残った老廃物である BUN, CRE(クレアチニン)の数値で表され、腎臓の機能が悪いほどこれらの数字は高くなります。タンパク質がこわれた老廃物が、これら BUN, CRE なのです。弱った腎臓は、血液中の老廃物が増えすぎると負担になって更に弱ります。これは痩せ馬にさらに荷物を載せるようなものですね。
普通の食事に含まれるタンパク質の量は、体に必要な最低限の量よりずっと多いのです。だから腎臓に負担をかけない食事療法として蛋白制限することが必要になるのです。何しろ飽食の時代ですから。
ちなみに、ネフローゼと言って、タンパク質がどんどん腎臓から漏れてしまい、血液の中のタンパク質が体の機能を維持するのに必要な量以下に減ってしまうような腎臓病では、むしろ高蛋白食が必要となります。

!! 先生
糖尿病科

!! 先生

腎臓は血液をこして尿を作り臓器ですが、糖尿病性腎症では腎臓を構成する糸球体(100万個くらいある)から出て行く血液より糸球体に入っていく血液量の方が多くなり、一つ一つの糸球体に負担がかかった状態(糸球体高血圧)となり糸球体が潰れます(糸球体硬化)。蛋白質を摂り過ぎるとこの糸球体の負担が増加しますが(糸球体過剰濾過)、蛋白制限によりこの負荷が減り糸球体の血行動態を改善することにより腎保護効果を示すことが知られています。ただし、腎症の病期により蛋白制限の程度は様々で、蛋白制限を行う場合は十分なカロリーが必要な点(血糖値に注意!)、急激な蛋白制限はかえって腎機能を悪化させる点に注意し、適切なカロリーと蛋白質の量を主治医に決めてもらいましょう。

Traiten 先生
膠原病科

Traiten 先生

蛋白尿がある時に蛋白制限することは一見矛盾していますよね。実際昔は高蛋白食を取るように指導する時代がありました。基本的な理由は他の先生が回答されてますが、その他に、実は尿に蛋白が出ること自体が腎臓病を進行させることがわかっています。

じゃ、どうしてかと言うと、尿に蛋白が混じるようになると蛋白が尿細管という糸球体から尿管に至る管を直接障害して腎臓病を進行させるからなんです。だから、少しでも尿細管に到達する蛋白を減らすために蛋白制限をします。このことから、持続的に蛋白尿が出てしまうと血糖にかかわらず、腎臓はどんどん進行していきます。そうならないようにがんばってくださいね。

tora 先生
一般内科

tora 先生

理論的には,すでに他の先生の回答にあるごとくです.理屈だけでなく,実際に,蛋白制限を厳密にできたグループとそうでないグループを長期間にわたって経過観察して,やはり蛋白制限をした方が,腎臓の機能が保たれている事が立証されています.最近は,より強く蛋白制限をかけていく報告もあるようですが,現実的には限界はありますよね.
すでに使用されているかもしれませんが,薬剤(一部の降圧剤)がその進行を抑えてくれる事も証明されています薬を安易に使用する事はよくないですが,すでに糖尿病性腎症が存在するならば,一考の余地ありですね.

ryre 先生
一般内科

ryre 先生

すでに様々な先生が書かれているように、腎臓への過負荷をとるために低蛋白食が進められております。(実際に動物実験や一部の臨床試験でも)腎不全への進行を緩やかにすることが示唆されております。
また、尿蛋白自体が腎臓を悪くするという報告もありますので、今回の質問とは直接関係ないですが尿蛋白を減らす薬として(すでにお飲みかもしれませんが)ACE(アンジオデンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)等も糖尿病における腎臓保護に役に立つといわれております。
お役に立てれば幸いです。

ちよさん

尿にたんぱく質が出ることで、さらに腎臓の機能を悪くしてしまっていたんですね。これでたんぱく制限についても納得して食事療法に取り組めます。みなさん、親切にご説明いただいて、本当にありがとうございました。体や病気の仕組みについてよく知ると、自己管理にも意欲的に取り組めて、検査結果などが楽しみになりますね。苦労も多いですが、先生方が応援してくれているとわかるととても励みになります♪

大阪 認定内科医 先生

同じような質問を多くの患者さんから伺いました。確かにもっともな疑問ですよ。大事なのは自分の病気を理解することですのでどんどん疑問があったら聞いて下さい。

秋山 森之進 先生
一般内科

秋山 森之進 先生

蛋白質の一部は,腎臓への負担を大きくする(ろ過流量を増やす=腎臓がろ過しなければいけない仕事を増やす)ので,食べる量を制限した方が良いのです。また,尿に出る蛋白質自体が,腎臓の働きを悪くする可能性も,動物実験で示されています。

実際に蛋白質を食べる量を減らすと,腎臓の働きの悪化が保護される事も証明されています。

体全体の蛋白量が減るのではないかと心配するかもしれませんが,蛋白質の摂取を減らすと,尿に出る蛋白質も減るので,体の蛋白質はほとんど減りません。これも実証されています。

いち内科医 先生
消化器内科

いち内科医 先生

蛋白質は腎臓のろ過を増やし、腎臓が疲労して硬くなって弱ってしまうため、蛋白制限が必要なのです。具体的には、
腎症の時期によりますが、総カロリーで 25〜35kcal/標準体重kg/日、たんぱく質は0.8g〜1.2g/標準体重kg/日、食塩は5〜8g/日で行うこととなります。

いち内科医 先生
消化器内科

いち内科医 先生

尿蛋白を認める時期では、蛋白制限食に加えて、水分制限、電解質の調整、薬物を使用することになります。薬物としては降圧薬、利尿薬、などがあり、降圧薬のなかには最近尿蛋白を減らすものがでてきています。

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