ヘルパンギーナの症状と治療、嘔吐、下痢への対処、子供の食事まで解説

  • 作成:2017/01/20

ヘルパンギーナでは、口内炎ができるほか、下痢や嘔吐などの症状が現れることがあります。ヘルパンギーナの感染は、主に患者の咳やくしゃみを通じた感染と、便から排泄された菌に汚染されたおもちゃなどを通じた感染があります。潜伏期間は2日から6日程度ですが、周りの人にうつさないためには、6日を超えても注意すべき点があります。相手が子供だけに、対応方法が難しいと感じることがあるかと思います。子供がヘルパンギーナになった時の対応方法について、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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目次

突然の高熱と口内の水ぶくれがサイン

ヘルパンギーナはある種のウイルスの感染で起きます。ヘルパンギーナに気づくためのポイントは2つあります。それは、突然の高熱と口内の発疹(水ぶくれ)です。ヘルパンギーナは、急に39度以上の熱が出て子供が苦しみ始め、喉の痛みを訴えます。喉や上あご付近の口内に、集中的に複数の水ぶくれができます。いわゆる「のどちんこ」あたりに、紅暈(粘膜が部分的に充血して赤く見えること)で囲まれた小さな水ぶくれがあれば、ヘルパンギーナが疑われます。口内炎に似ていますが、症状が進むと水ぶくれが破れて炎症を起こします。かなり痛いので物を食べるのが困難になるため、食べやすいものを与える必要があるでしょう。高熱は数日間続きます。

下痢や嘔吐、重篤な症状が起きることも

他の症状としては、下痢や嘔吐の症状も起きることがあります。口の中の水ぶくれも含めて、食事が難しい状況となりますので、水分や栄養補給に問題が出ることがありますので注意が必要です。まれに、熱性のけいれんや脳炎など重大な症状を伴うことがありますので、高熱の状態が数日を超えて続くなど、症状が和らがない場合は、再度医療機関を受診することを検討したほうがよいでしょう。

ヘルパンギーナの治療は?点滴も?

治療については、ヘルパンギーナに効く特効薬などはありません。しっかりと栄養を取って安静にすることが治療になります。また、水ぶくれや発熱などの症状が強ければ炎症を抑える薬や解熱剤を投与することになります。

ヘルパンギーナで気をつけるべきなのは、口内に水ぶくれができたことで喉が痛くて水分補給ができなくなり、脱水症状を起こしてしまうケースです。飲みやすい形で水分を与えるか、炎症を抑える薬を塗布した後に水分補給をさせましょう。どうしても、口からの栄養補給が難しいということであれば、点滴を使うという方法もあります。

さらに、ウイルスが髄膜や心筋に達して炎症を起こし始めた場合には入院が必要になるため、頭痛やふらつきがある、息苦しいなどの症状があれば早めに医師の診断を仰いだ方が良いでしょう。

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ヘルパンギーナの原因はウイルス

ヘルパンギーナは、主に「コクサッキーウイルスA群」と呼ばれるウイルスが原因となりますが、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルスなどが原因となることもあります。これらはいずれも「エンテロウイルス」と呼ばれるウイルスの仲間に分類され、腸で増える性質を持っています。手足口病と同じ種類のウイルスですが、症状は異なります。

ヘルパンギーナ、2つの感染経路

ヘルパンギーナの感染経路には2ルートがあります。

1.急性期の患児ののど(咽頭:いんとう)から、ウイルスが咳(せき)やくしゃみによって放出されて起こる飛沫感染。
2.急性期(症状が急激に出る時期)から回復期にかけて感染したウイルスは腸で増殖し、便に排泄され続けるため、おむつや下着、床、椅子、オモチャなどが汚染されます。そしてそれらを触った手などに付着したウイルスが口から体に入って感染します(糞口感染)。ウイルスに感染した子供の唾液がついた手足や食器を通して感染が広がるため、幼稚園や家庭内などの子供同士が直接触れ合うような環境で流行するケースが多いです。

なお、空気感染はしないので人混みの中を歩きまわるだけで感染することはありません。

ヘルパンギーナの感染力は強い?

潜伏期間を経て、突然の発熱に伴ってのどの痛み(咽頭痛)が出現します。発症前日から発熱の続く2日から3日程度の間は、ウイルスが主としてのどから大量に排泄され、感染力も強くなっています。その後は次第にウイルス量も減り、感染力も弱まっていきますが、便からの排泄は数週間程度つづきます。

潜伏期間は2日から4日 症状なくてもうつる

一般的にヘルパンギーナが属する「エンテロウイルス」の感染は、ウイルスが口から侵入した後、大部分は胃をへて小腸で最初に増えます。増殖したウイルスは血の流れを通じて、全身にひろがり、標的となる組織(皮ふや口の粘膜など)で次の増殖をして、発症します。ヘルパンギーナの発症までの潜伏期間は、おおよそ2日から4日です。ただし、発症前の潜伏期間のうちに、すでに強い感染性があります。症状が現われた時にはもう、周囲にいる人にうつしている可能性もありますので注意が必要です。

急性期の発熱が2日から3日程度で治まると、咽頭の痛みや、粘膜の発赤(赤くなること)などの症状の経過は、一般的に良好です。解熱後2日から3 日以内に症状は回復します。のどや口、鼻からウイルスがでているのは、発症から通常1週間未満です。しかし、エンテロウイルスによる感染症に共通した特徴として、回復後も腸から便へのウイルスの排泄が続きます。したがって、感染期間は2週間から、長ければ4週間にもなると言われています。また、症状が現れないまま感染だけを起こしている、「不顕(ふけん)性感染」と呼ばれる感染が多いのもエンテロウイルスの特徴です。この場合も、便へのウイルスの排泄は数週間におよび感染源となる可能性があります。

ヘルパンギーナの流行時期は?冬でも?

ヘルパンギーナは、国の感染症の法律で「5類」に分類される定点把握疾患になっており、全国約3000の指定された小児科の医療機関(定点)から毎週、患者さんの発生数が報告されています。手足口病やプール熱(咽頭結膜熱)なども同じ分類に含まれています。定点からの報告で、発生の時期や流行などが把握されています。

ヘルパンギーナの発生や流行のパターンは、エンテロウイルス属の特徴に沿っています。熱帯の地域では、エンテロウイルスは1年を通して発生します。日本でのヘルパンギーナの発生は毎年5月頃より増加し始め、7月ごろにかけてピークとなります。夏の流行は例年、西から東へと移っていく傾向があります。その後、8月ごろから減少し始め、9月から10月にかけて、ほとんど見られなくなります。冬場の発生数は減りますが、患者さんの発生報告は年間を通して見られます。つまり冬でも感染する可能性はあります。

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子供は口内炎や嘔吐で食事が難しくなる

ヘルパンギーナの特徴は、突然の高熱と水ぶくれです。小さな水ぶくれは、やがて破れ、潰瘍を形成します。潰瘍はいわゆる「口内炎」と言われるもので、痛みを伴うことがしばしばあります。また、ヘルパンギーナではまれに頭痛や嘔吐などの症状が出ることがあります。そして、口内炎があるため食事をすると痛みが増し、たとえ食事を取ることができても、嘔吐することによって内容物が全て吐き出されてしまいます。したがって、子どもが食事自体を拒否する可能性が出てきます。

口内炎の時の子供の食事の工夫は?

当然ですが、ヘルパンギーナで口内炎ができても食事を取ることは欠かせません。そこで重要となるのが、食事の工夫です。特に、ヘルパンギーナがよく起きる子どもの年齢は0歳から4歳であるため、大人であれば我慢して食べられるものでさえ食べることができません。

ヘルパンギーナによってできた口内炎は、通常の口内炎と同じく刺激に弱いです。具体的には、冷たいもの、熱いもの、辛いもの、大きさが大きいものなどが挙げられます。ミルクや離乳食を食べている赤ちゃんは問題ないかもしれませんが、3歳ごろになると、カレーやコロッケなど口内炎に刺激を与えるものを食べるようになりますが、ヘルパンギーナの時は食べるのが難しくなりがちです。工夫としては、スープなどの汁物、とろみのあるシチューやスムージーなどのどごしのよいもの、硬さのない物に変えてみてください。

ただ、ヘルパンギーナによる口内炎とわかっている場合、食事の工夫に加えて、できるだけ早く病院へ行き適切な治療を受けた方が良いでしょう。また受診時に、子供にあった食事方法を聞いてみると良いでしょう。

嘔吐、下痢症状のときはどうする?ミルクはだめ?

ヘルパンギーナでは口内炎の症状だけでなく、嘔吐や下痢といった消化器の症状が出ることもあります。嘔吐や下痢が続くとき、食事を取っても意味がないと考える方が少なくありませんが、それは正しい考え方ではありません。

現在、嘔吐や下痢に対して行われている治療の基本は薬物療法と食事療法です。下剤や吐き気止めといった薬と同様、食事での治療が重要になります。嘔吐が続く間は、水分を少しずつ与え、吐き気がなくなったら、下痢があっても食事を早期に再開した方が良いとされています。下痢中に食物を与えると、当然便の量は増えますが、水分の吸収はできており、結果として症状の回復が早く、体重が維持されるという医学的な報告がでてきているからです。

もちろん、何でも食べればいいというわけではなく、当然食事内容を工夫する必要があるわけです。甘みが強いもの、油分が多いものなど消化器に負担になるものは避けましょう。また、胃腸炎により一時的に牛乳に含まれる「乳糖」という成分を分解する力が落ちてしまい、牛乳を摂取するとそれによって下痢をする可能性があるため、牛乳は飲まない方が良いとされています。ですから、嘔吐や下痢といった症状がある期間、ミルクを与えている子どもはミルクを辞めた方が良いでしょう。

また、最近では下痢に対する考え方が変化してきています。下痢に対しては積極的に経口補液療法を行い、早期に食事を再開する。また、哺乳量の調節は必要ないといった考え方が出てきています。対応が不明な場合は、医師に相談してみるとよいでしょう。

子供が夜泣きしたらどうする?

子どもは痛みがあると泣いてしまいます。特に、ヘルパンギーナにかかりやすい乳幼児は泣くことを我慢しません。特に、子どもが夜泣きをしてしまっては、子どもだけでなく親も健康を害したりしかねません。ですから、夜泣きの原因が明らかにヘルパンギーナによる痛みであるならば、夜間救急をやっている小児科の受診を検討してもよいでしょう。

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即登園制限ではないが・・・

学校保健安全法によって「学校において予防すべき感染症」が第1、2、3種の学校感染症として定められ、病気ごとに必要な期間の出席停止の措置が、校長(幼稚園の場合、園長)によってとられます。ヘルパンギーナは、いわゆる「夏風邪」の一つで、他人に感染する病気ですが、この中に指定されていませんので、ヘルパンギーナになっても直ちに出席停止(登園制限)になることはありません。

ただ、第3種学校感染症の中に、「その他の感染症」という規定があります。学校で通常見られないような重大な流行が起こった場合、感染拡大を防ぐために必要があるときに限定して、校長や園長が担当の医師(学校医など)の意見を聞いて、第3種感染症の「その他の感染症」として緊急的に措置をとることができるとあります。

したがってヘルパンギーナが流行して対策が必要となった時に、ヘルパンギーナに「その他の感染症」の規定が適用されることがあります。その場合はヘルパンギーナで出席停止(登園制限)となることがあります。

ヘルパンギーナで登園の目安 保育園と幼稚園で違う?

文部科学省のホームページに「学校において予防すべき感染症」(http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1334054.htm)の解説があります。この中でヘルパンギーナの登園の目安は「本人の全身状態が安定している場合は登校(園)可能」となっています。具体的には、以下のような状態です。

(1)高熱も下がり、のどの痛みなど他の症状も軽症で治まっている。見た目も元気。
(2)のどの痛みやはれによる食欲の低下もなく、十分に水分も取れている。脱水の心配もない。
(3)他の合併症を疑わせる症状;頭痛、おう吐などもない。

保育所についていいますと、国の管轄する省庁が違い、「保育所における感染症対策ガイドライン」が厚労省から出されています。独自のガイドラインに沿って、感染症対策を行っていて、学校保健(文科省が管轄する小学校や幼稚園などが対象)とは異なっているようです。

厚労省のガイドラインでは、ヘルパンギーナは、「医師の診断を受け保護者が記入する登園届が“望ましい”感染症」とされています。登園の目安は「発熱がなく(解熱後1日以上経過し)、口腔内の水疱(水ぶくれ)、潰瘍の影響もなく、普段の食事がとれること」になっています。登園許可などの規定は保育園により違ってくると思いますので、お子さんの通っている施設に問い合わせてみるのがよいでしょう。

不要不急の外出は控えましょう

熱も下がり元気もあり状態が安定していれば、外出は十分可能です。しかし、回復後しばらく、発症から1週間くらいはウイルスの排泄も多い時期ですから、不要不急の外出は控えましょう。他の子供にうつさないようにする配慮も大切です。

お風呂は場合による タオルには注意

ヘルパンギーナは「夏風邪」の一種です。風邪で熱があるときに入浴して良いかどうかは議論のあるところですが、汗をそのままにしないで体を清潔に保つことは大切ですので、シャワーなどできれいに流してあげて下さい。熱でぐったりしていなければ、風呂につかってもよいかも知れません。ただしヘルパンギーナになった子供の使用したタオルは共用せず、使用後は洗濯するようにしましょう。

入院する可能性ゼロではない

ヘルパンギーナは、高熱時に熱性けいれんを伴うことがあります。ほとんどが「単純型」と呼ばれる熱性けいれんで、医療機関に着いた時には意識もしっかりし、けいれんも止まっていることが多いようです。単純型のものは治療の必要はありません。ただ、けいれんの時間が長い(15分以上)、繰り返す、意識がはっきりしない状態が続くような場合には、「複雑型」と呼ばれるタイプのけいれんと判断されて、経過観察の入院となります。

ヘルパンギーナの原因であるエンテロウイルスの感染は、色々な症状を示すことが知られています。ヘルパンギーナの場合にも、非常にまれですが「無菌性髄膜炎」「急性心筋炎」などという、重大な病気を合併することがあります。髄膜炎や心筋炎につながった場合、すぐに入院治療が必要となります。ヘルパンギーナは自然治癒し、予後が良い病気ですが、入院となる可能性が全くないわけではありません。


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