脂肪肝の治療 薬、副作用、治療期間、入院可能性 薬以外は運動?

  • 作成:2016/06/06

脂肪肝の治療で薬を使うこともありますし、場合によっては入院することもあります。脂肪肝の場合、薬はメインで使われることはありません。どのような考え方なのかや、治療期間も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

脂肪肝の治療はどんなもの?
脂肪肝の治療期間、改善期間の目安
脂肪肝の治療薬、作用機序と副作用 ウルソとはどんなもの?
脂肪肝に漢方薬がある?効果と副作用は?
脂肪肝に薬以外の治療がある?
脂肪肝で入院することがある?どのような場合?

脂肪肝の治療期間、改善期間の目安

脂肪肝の治療期間については、脂肪肝の原因や程度により異なります。アルコール性脂肪肝の場合は禁酒することですみやかに改善することが知られており、程度によりますが最低2週間以上の禁酒により変化が見られ、平均1ヶ月間程度の禁酒で脂肪肝が治ると考えられています。

非アルコール性脂肪肝の場合、多くは肥満と関係があります。肥満の度合いを計る指標としてBMIという数値があり、BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割る計算式で求められます(身長170センチ、体重65キロの場合、65÷(1.7×1.7)で、22.5程度になります)。BMI 25以上を、肥満としており、BMI25から30程度の「軽度~中等度」の肥満では50%に脂肪肝が認められ、BMI30以上の高度肥満では75%に脂肪肝が認められるとの報告があります。

肥満による脂肪肝の場合、食事や運動などの生活習慣の改善を行い、肥満を解消することが脂肪肝の改善につながります。脂肪肝の解消のためには、まずはBMI25程度を目指して減量を行います。しかし、あまりにも急激な体重の減少はかえって、身体に負担をかけると考えられているため、半年間で体重の5%程度のペースで減量することが望ましいとされています。そのため、BMI30の状態からBMI25の状態になるためには1年以上の時間が必要であると考えられます。また、肥満のほかに高脂血症、糖尿病などの合併症を持っている方は合併症の重症度により治療の内容などが異なるため、主治医の先生に食事の内容や減量のペースについて相談する必要があります。

脂肪肝の治療薬、作用機序と副作用 ウルソとはどんなもの?

脂肪肝の治療では、アルコールの減量や禁酒、肥満の解消、合併症である糖尿病の治療などがメインになりますが、内服薬も処方される場合があります。現在、脂肪肝に保険適応がある薬は「EPL」というお薬の1種類のみです。脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が蓄積する病気ですが、EPLを3カ月から6カ月間、内服すると肝臓への脂肪の沈着や血液検査における肝機能の異常、自覚症状などの改善が認められるとされています。ただし、EPLの内服だけで脂肪肝を解消することは難しく、EPLの内服とともに生活習慣の改善も行うことが非常に大切になります。

また、脂肪肝を直接改善する訳ではありませんが、脂肪肝による肝機能障害を改善する目的でウルソというお薬もしばしば処方されます。肝臓は胆汁(たんじゅう)という脂肪の消化に関与する消化液を分泌します。ウルソには胆汁と同様の成分が含まれており、肝臓の働きを助けるほか、肝臓の炎症をおさえる効果もあります。

脂肪肝に漢方薬がある?効果と副作用は?

脂肪肝では漢方薬を使用することもあります。漢方薬は、脂肪肝を直接改善することはありませんが、身体に脂肪が蓄積しやすい体質を改善することを目標として処方されます。

脂肪肝と肥満は深い関係がありますが、漢方の世界では肥満は(1)固太りタイプ(2)水太りタイプに大きく分けられています。

(1)固太りタイプとは、筋肉質でがっちりした体質で、のぼせや便秘があります。固太りタイプの場合は「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」や「大柴胡湯(だいさいことう)」といった漢方薬がしばしば処方されます。ただし、これらはどちらも下痢をしやすい成分が入っており、お腹が弱い人には不向きな場合があります。

(2)水太りタイプは、色白でむくみやすい体質で胃腸が弱い傾向にあります。水太りタイプの場合は、水分の代謝を良くする漢方薬が処方され、「防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)」や「五苓散(ごれいさん)」といったお薬が代表的です。

またストレスで食べ過ぎる方には、「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」「大承気湯(だいじょうきとう)」などが処方されるケースもあります。

漢方薬は、西洋薬と異なり、個人の体質に合わせてお薬を処方するため、同じ病気でも違う薬が処方されることがしばしばあります。また、「漢方薬は副作用が少ない」と考える方が多いようですが、実際には重い肝機能障害や肺炎など危険な副作用も多く、体質に合わない漢方薬を内服することで、副作用が出る危険が高くなることが特徴です。そのため漢方薬を希望する場合は、漢方の専門医を受診し、自分の体質に合った漢方薬を処方してもらうことが非常に大切です。

脂肪肝に薬以外の治療がある?

脂肪肝の治療では、内服薬が処方されることがありますが、基本的には食事の内容や運動などの生活習慣の改善を行うことが最も大切と考えられています。

「脂肪肝」という病名から脂肪を控える方がいますが、食事では脂肪よりも炭水化物の量を控えることが効果的です。「炭水化物」とは、主に穀物からできたデンプンなどの糖質を多く含む食品のことで、ごはんやパン、麺類、砂糖などを指します。ただし炭水化物を全くとらない生活を続けると突然死などのリスクが高くなるという報告が近年みられているため、1日に摂取する総カロリーの20%から25%程度を、炭水化物や糖質で摂取することが望ましいとされています。

また、運動についても、週に2回から3回、1回1時間程度の軽い運動を行うことで効果がみられるとされているため、毎日運動できない方でも2、3日に一度は息が弾むくらいの軽い運動を行うと良いでしょう。

脂肪肝で入院することがある?どのような場合?

脂肪肝では、通常入院して治療を行うことはありませんが、血液検査で肝機能の数値が異常に悪い場合は、入院して治療を行うこともまれにあります。また、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変、肝臓がんなどが疑われる場合は確定診断をつけるために「肝生検(かんせいけん)」という検査を行う場合があり、この際は入院が必要になります。肝生検とは身体の外から針を刺して肝臓の組織を採取し、顕微鏡で直接肝臓の組織を観察する検査です。肝生検は、肝臓の検査の最も確実な検査方法の一つとされているため、肝炎や肝硬変の診断に広く行われています。

肝生検の検査時間は30分から1時間程度ですが、針を刺した部分の血が止まるまで数時間の安静が必要とされています。また時間が経ってから出血などの合併症が起こる可能性もあるため、検査当日は入院するのが一般的です。


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脂肪肝の治療薬や副作用、入院可能性などをご紹介しました。肝臓の状態や調子に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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