「漢方薬は身体に優しい」は本当?【医師監修】

  • 作成:2021/08/03

身体にやさしいイメージのある「漢方薬」。とはいえ本当に、“やさしい”のでしょうか?今回はこの疑問に対する回答を解説します。

アスクドクターズ監修ライター アスクドクターズ監修ライター

この記事の目安時間は3分です

Q.漢方薬には副作用がないって本当?

A.漢方薬にも副作用はあります。確かに西洋薬に比べるとやさしい薬は多いですが、油断して使うと危険です。

医療用・一般用として広く使われている「漢方薬」ですが、副作用が少なく安心な薬と考えている人も少なくありません。しかし、薬である以上、漢方薬にも副作用はあります。「副作用がない」と油断しているととても危険なため、注意が必要です。

“天然由来”の漢方薬でも、副作用を起こすことはよくある

漢方薬は、天然の植物・動物・鉱物などを組み合わせた薬です。そのため身体にやさしく、副作用の心配も少ない薬として、医療用医薬品としても一般用医薬品としても人気があります。事実、漢方薬は他の薬に比べると副作用の頻度は少ない傾向にあり、「副作用を避ける目的」で選ばれることも多い医薬品です。
しかし、本来どんな「薬」であっても、ヒトにとって好ましい薬理作用(効果)を発揮するものである以上、それは好ましくない薬理作用(副作用)も必ず起こすことがあります。そういった意味で、「副作用を起こすリスクがゼロの薬」というものは存在しません。

実際、2005~2014年の10年の間に、厚生労働省には『葛根湯』や『防風通聖散』、『八味地黄丸』、『芍薬甘草湯』など馴染みのある漢方薬によって肝臓、腎臓、肺に障害が出たり、薬疹や出たり・・・といった、さまざまな副作用が報告されています1)。また、2002~2006年に報告された薬剤性肝障害のうち、6%は漢方薬が原因だったという推計もあります2)。さらに、1996年には『小柴胡湯』という漢方薬の副作用で死亡した事例も起こっており、薬の添付文書には警告文が記載されています3)
これらのことからわかるように、決して「漢方薬には副作用がない」というわけではありません。漢方薬であっても、副作用には注意して使う必要があります。

妊娠中も「漢方薬なら安心」ではない

「漢方薬であれば、妊娠中でも使える」と考えている人も多いと思います。しかし、これも危険な誤解です。漢方薬であっても、妊娠中には避けた方が良い薬はたくさんあります。
たとえば、以下のような生薬を含む漢方薬は、妊娠中の女性は避けた方が良いとされています4)

※妊娠中のリスクが指摘されている生薬の例
ダイオウ、ボウショウ(子宮を収縮させる作用がある)
ボタンピ、トウニン、ゴシツ(流産・早産リスクを高める可能性がある)
ブシ(副作用が出やすい)

→これらの生薬を含む漢方薬の例
大黄甘草湯(ダイオウ)、防風通聖散(ダイオウ、ボウショウ)、桃核承気湯(トウニン、ダイオウ、ボウショウ)、加味逍遙散(ボタンピ)、桂枝茯苓丸(トウニン、ボタンピ)、牛車腎気丸(ゴシツ、ボタンピ、ブシ)
真武湯(ブシ)、麻黄附子細辛湯(ブシ)など
(※ここに挙げられたものが全てではありません)

では、「これらの生薬を含む漢方薬は、妊娠中には絶対に飲んではいけないのか?」というと、必ずしもそうとは限りません。妊娠の時期や、病状の程度、他に良い選択肢がないなどの状況によっては、使った方が母子ともにリスクよりメリットが大きいと判断されることもあるからです。
そのため、妊娠中は「漢方薬なら安心」と油断して自己判断で使ったりせず、必ず医師・薬剤師に相談の上で使うようにしてください。

スポーツ選手も、「ドーピング」の観点から避けた方が良い

スポーツ選手も、漢方薬には気をつける必要があります。漢方薬に使われている生薬の中には、ドーピングの禁止薬物に指定されている成分を含むものがたくさんあるからです。
たとえば、「エフェドリン」や「ヒゲナミン」はドーピングの禁止薬物です5)が、「エフェドリン」は生薬の「マオウ」や「ハンゲ」に、「ヒゲナミン」は生薬の「チョウジ」に、それぞれ含まれています。そのため、これらの生薬を配合した漢方薬をスポーツ選手が使うと、ドーピング違反になってしまいます。

また、そもそも漢方薬は天然の植物や動物・鉱物を原料にしているため、“どんな成分が入っているのか”を全て厳密に特定することはできません。同じ生薬であっても、その原産地や採取地域・時期によっては、微量に含まれる成分が異なっている可能性もあります。そのため、全ての漢方薬は「ドーピングの禁止薬物を含まない」と断言することができません。こういった観点から、スポーツ選手は漢方薬全般を避けた方が良いと考えられます。

「副作用は少ない」という油断はせず、うまく漢方薬を活用しよう

漢方薬は、その“身体にやさしい”というイメージから、副作用の少ない薬として扱われています。しかし、そのイメージは時に、何か身体に不調が起きても「漢方薬のせいではないだろう」と思い込んでしまうことで、副作用の発見・対処を遅らせてしまう原因にもなります。
漢方薬は、風邪や花粉症、メンタルの不調、便秘、胸焼けなど、様々な症状に対応することができる、良い薬です。副作用は少ない傾向にはありますが、決して副作用が起きないわけではありません。他の薬と同じように、使っていて何か体調に異変はないか、皮膚に湿疹が出たり、息苦しさが現れたり、手足のだるさや筋肉痛が現れたりしていないか、十分に注意しながら使うようにしてください。

(参考文献)
1) 日本東洋医学雑誌.2016;67(2):184-90
2) 肝臓.48(10):517-21,(2007)
3) ツムラ小柴胡湯エキス顆粒(医療用) 添付文書
4) 南山堂「薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳(改訂2版)」
5) 世界アンチ・ドーピング規程「禁止国際基準 2021年1圧1日発効」

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