陰部にブツブツ、発熱も…「性器ヘルペス」は、何度も再発を繰り返すやっかいな感染症!

  • 作成:2021/12/01

誰でもかかる可能性がある「性感染症」について、産婦人科医の宋美玄先生が解説する連載をお届けしています。第3回は「性器ヘルペス」。ヘルペスと言えば、口の周りにできる「口唇ヘルペス」のイメージが強いかもしれませんが、性器にできるものもあります。しかも、治ったかのように見えて、再発を繰り返すやっかいな性感染症だと言います。

宋 美玄 監修
 
宋 美玄 先生

この記事の目安時間は3分です

陰部にブツブツ、発熱も…「性器ヘルペス」は、何度も再発を繰り返すやっかいな感染症!

オーラルセックスで感染するケースが増加中!

こんにちは、産婦人科医の宋美玄です。

性器ヘルペスウイルス感染症(以下性器ヘルペス)は、「単純ヘルペスウイルス」(HSV)という病原体による感染症です。ウイルスが存在しているのは主に性器やお尻、口。このウイルスを持つパートナーと性的な接触をすることで感染します。セックスによる性器から性器への感染だけでなく、オーラルセックス(口腔性交)で口から性器、あるいは性器から口へ、キスで口から口へ感染するケースも増えています

性器ヘルペスを初めて発症したときの症状は、とにかく痛いこと! 感染してから2~10日間の潜伏期間を経て赤いぽつぽつや水ぶくれが現れ、3~5日ほど経つと破れてただれ、激しく痛みます。外陰部だけでなく子宮頸管や肛門にまで感染が広がることも。さらに脚の付け根のリンパ節が腫れて歩けないほどの痛みや熱が出たり、尿が出にくくなったりすることもあります。

こうした症状は2~3週間後には自然におさまりますが、治療をすればつらい期間を短くすることができます。
治療には、ウイルスが増えるのを抑える「抗ウイルス薬」の飲み薬や塗り薬を使います。通常は薬を使い始めてから1~2週間くらいで良くなりますが、重症の場合は点滴薬も併用します。
抗ウイルス薬はウイルスが増殖している時期に効果を発揮する薬なので、症状が出たらできるだけ早く治療を始めたほうがいいでしょう。

短期間に繰り返す場合は、毎日、抗ウイルス薬を飲む治療

ただし、抗ウイルス薬はウイルスの量を減らす効果はありますが、残念ながらウイルスを完全に死滅させることはできません。生き残ったウイルスは症状がおさまったあともずっと神経の根っこ(神経節)に潜んでいて、体が元気なときは免疫で抑えられていますが、免疫力が低下すると悪さを始め、症状が出てきます。
免疫力が落ちやすいのは、疲れがたまったときや睡眠不足が続いているとき、風邪をひいたとき。さらに女性は月経の前も要注意です。

再発時の症状は初発のときと比べると軽い場合が多いですが、無理をしないで、心と体を休めてください。性器の違和感、太ももや脚の付け根にピリピリした神経痛を感じるなど再発の兆候に気づいたら、早めに医師に相談しましょう。
日ごろから疲労やストレスをためないようにする、過度の飲酒を避けるなど、再発予防に努めることも大事。ウイルスと上手に付き合っていきましょう。

短期間に何回も再発を繰り返すような場合には、一定量の抗ウイルス薬を毎日内服し続ける「再発抑制療法」が行われることもあります。

なお、妊娠中に初めてヘルペスウイルスに感染したり、再発したりしても、おなかの赤ちゃんに感染する心配はほとんどありません。気をつけなければならないのは、出産時に性器周辺にまだ症状が残っている場合。赤ちゃんが産道を通る際にウイルスに触れて感染し、重い症状を起こすことがあります(新生児ヘルペス)。
産道感染のリスクがある場合は、帝王切開で出産することで、新生児ヘルペスの発症を回避することができます。産科医と十分に話し合って、適切な対処を。安心して出産を迎えましょう。

症状に気づかず、パートナーに移してしまう場合も

パートナーに性器ヘルペスの感染を移さない心掛けも大切です。男女ともに感染を起こしやすいのは、水ぶくれやかぶれなどの症状が出ている時期。大量のウイルスが表面に出てきているので、性的な接触は避けてください。
初発のときは激しい痛みが出ているので感染したことがわかりやすいのですが、再発時は症状が軽いことが多く、気づかないことも。自覚なくセックスをしてパートナーに感染させてしまわないように、より注意が必要です。
症状がおさまっていると思っても、実は唾液や体液などにウイルスが含まれていることがあり、相手に移す可能性はゼロではありません。妊娠を希望しないならセックスやオーラルセックスのときはコンドームを使いましょう。コンドームはゴムによって覆われている陰茎以外の部分の感染まで予防することはできませんが、感染リスクをかなり減らすことができます。
ムードが盛り上がっているときに女性から「コンドームをしてね」とは言いづらいかもしれませんが、お互いを感染から守るためのツールとして活用したいものです。

取材・構成/熊谷わこ

1976年兵庫県神戸市生まれ。2001年大阪大学医学部医学科卒業。2010年に発売した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』がシリーズ累計70万部突破の大ヒット。2児の母として子育てと臨床産婦人科医を両立。メディア等への積極的露出で女性の悩み、セックスや女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。

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