滝のような汗、イライラ、倦怠感…。すぐに更年期障害を疑う前に、セルフチェックリストで確認してみよう!

  • 作成:2022/06/29

産婦人科医の宋美玄先生に、更年期についてわかりやすく解説していただく本シリーズ。前回は、「更年期とは閉経前後の5年、全10年間」と教えてもらいました。シリーズ第2回目は「更年期障害」がテーマ。更年期の女性はみんな経験するようなイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではないそうです。

宋 美玄 監修
 
宋 美玄 先生

この記事の目安時間は3分です

滝のような汗、イライラ、倦怠感…。すぐに更年期障害を疑う前に、セルフチェックリストで確認してみよう!

40代半ばから女性ホルモンの激減する

こんにちは、産婦人科医の宋美玄です。
個人差はありますが、女性は50歳前後で閉経を迎えます。閉経をはさんだ約10年間にわたる「更年期」は、のぼせやほてり、体の痛み、イライラなど、心身にさまざまな不調が現れやすくなる時期。症状が重く、日常生活に影響を及ぼしている状態を「更年期障害」と呼んでいます。
なぜこのような症状が現れるのでしょうか。更年期が始まる時期、つまり40代半ば頃になると、卵巣の機能は衰え、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少します。エストロゲンの低下を察知した脳は、卵巣に「もっとエストロゲンを出しなさい!」と指令を送りますが、機能が低下した卵巣は十分なホルモンを出すことができません。そのため、ホルモンのバランスが乱れて自律神経の調節がうまくいかなくなり、心身に不調が現れるのです。

更年期障害が出る女性は約6割

更年期障害は全員がなるわけではなく、症状が出る人は全体の約6割と言われています。
代表的な症状のひとつが、いわゆる「ホットフラッシュ」です。血管の収縮や拡張がコントロールしにくくなり、ほてりやのぼせ、発汗などが生じます。寒い季節なのに急に顔がカーッと熱くなったり、突然、滝のような汗が流れて止まらなかったり、寝汗をかくようになったり…不快感もさることながら、「恥ずかしいし、仕事に集中できない」「メイクが崩れて人前に出られない」などと、日常生活に支障が出てしまうこともあります。

逆に、冷えを強く感じる人や、「上半身は暑いのに足先は氷のように冷たい」という人も少なくありません。肩こり、頭痛や腰痛、手指のこわばりといった身体的な症状だけでなく、イライラや落ち込み、抑うつなど精神面の症状が出ることもよくあります。
気になる症状があるときは、セルフチェックリストで確認してみましょう。

<更年期セルフチェックリスト>

滝のような汗、イライラ、倦怠感…。すぐに更年期障害を疑う前に、セルフチェックリストで確認してみよう!

出典)『図解ただしく知っておきたい子宮と女性ホルモン』(宋美玄著、河出書房新社)

このチェックリストのうち、該当数が3個以下であれば更年期ではないと考えられます。4~6個は、少し更年期のサインが見られる状態。ストレスや疲れの影響かもしれないので、生活習慣を見直すことをお勧めします。
7~13個になると、すでに女性ホルモンが減少し、更年期障害が出始めている可能性があります。14個以上はまさしく更年期。婦人科を受診し、治療することをお勧めします。婦人科では、患者さんの自覚症状を問診し、さらに血液検査で調べた女性ホルモン値を合わせて診断します。

「プレ更年期」は医学的に正しい用語ではない

更年期障害は女性ホルモンの減少に加え、その人の体質や生活習慣、さらに仕事や家庭のストレスなどの環境要因が、複合的に絡み合って生じると考えられています。
誰もが更年期障害になりたくない、あるいはごく軽い症状で済んでくれれば……と思うものですが、「どんな人が更年期障害になりやすいのか」といったはっきりした傾向は明らかになっていません。したがって更年期障害を予防することは難しく、症状が出たら対処するというのが実情です。

また、雑誌やインターネット上では、20代や30代の女性に起こる更年期のような症状を「プレ更年期」「若年性更年期」などと表現しているケースがありますが、医学的に正しい用語ではありません。少なくとも生理が定期的に来ているうちは更年期ではなく、「PMS」(月経前症候群)の可能性のほうが高いと言えるでしょう。

更年期は節目の時期。症状がない人も婦人科でチェックを

これから更年期を迎える人は、「更年期障害はいつまで続くの?」と気になるかもしれません。個人差がありますが、ホルモンの状況に体が慣れるにしたがって落ち着いてきて、遅くとも閉経から5年後には症状が消えるケースが大半です。

また、更年期障害は治療が可能です(詳しく次回、説明します)。更年期の10年間を快適に過ごすためにも、不調があれば婦人科医に相談してください。
婦人科で治療しても改善が見られなければ、より専門的な治療をしたほうがいい場合もあります。頻尿や尿もれが気になる場合は女性泌尿器科、イライラなど精神的な症状が強い場合は精神科や心療内科へ…というように、専門医を受診しましょう。「更年期だから多少の不具合は仕方ない」「みんなが通る道だからがまんしなきゃ」などと考えて放置すると病気を見逃すことにもなるので、自己判断は禁物です。

また、困った症状がなかったとしても、更年期は体が変わっていく節目の時期。あまり自覚症状がなくても、体内に異変が生じている可能性もあります。将来の健康のためにも、婦人科の受診をお勧めします。更年期にかかりやすい病気をまるごとチェックする「更年期ドック」を実施している医療機関もあるので、上手に活用してください。

1976年兵庫県神戸市生まれ。2001年大阪大学医学部医学科卒業。2010年に発売した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』がシリーズ累計70万部突破の大ヒット。2児の母として子育てと臨床産婦人科医を両立。メディア等への積極的露出で女性の悩み、セックスや女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。

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