「教えて先生! 賢い患者になるために知っておきたい正しい情報の見極め方~初級編~」Club CaNoWオンライン医療セミナー

  • 作成:2023/02/01

2023年1月12日、Club CaNoWはオンライン医療セミナーを開催しました。病気について正しい知識を得たいと思っても、テレビやインターネットなどの情報が信頼できるかどうかの判断は難しいもの。そこで2回に渡り、がん情報の正しい見極め方について慶應義塾大学病院腫瘍センター副センター長の浜本康夫先生に説明していただきます。今回はその1回目。進行役を務めるのは、乳がんサバイバーで「がんと働く応援団」共同代表理事の野北まどかさんです。

この記事の目安時間は6分です

「教えて先生! 賢い患者になるために知っておきたい正しい情報の見極め方~初級編~」Club CaNoWオンライン医療セミナー

口コミからの正しいがん情報の見極め方

がんの患者さんは、新聞や本、雑誌といったOldメディア、インターネットを中心としたNewメディア、さらに患者会、口コミなど様々な情報源を活用しています。いずれも役に立つ情報が得られる反面、偏った情報や間違った情報も含まれています。

「特に同じがんの患者さんからの口コミはヒントになるものも多いのですが、匿名の投稿には悪口や愚痴、嘘が含まれていることが少なくありません。実名の投稿や患者会の情報に絞るなど、気をつけて利用してください。『全国がん患者団体連合会(全がん連)』に加盟している団体は、信用度が高いと言えるでしょう」(浜本先生)。

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さらに危険な情報を見極めるための一助として「自由診療」「広告」「免疫力を上げる」「名誉教授の推薦」「芸能人」「からだに優しい」といったキーワードも紹介しました。こうした言葉の入った情報は要注意ということです。

安心して利用できるネットメディアは?

がんに関するウェブサイトの中でも、国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」は、正確で中立な情報を幅広く収集することができます。
病院の規模、特徴なども正確に記載されているので、病院選びにも役立ちます。また、同サイトから無料でダウンロードできる小冊子は、私たち医師も患者さんに渡すことがあります」(浜本先生)

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YouTubeなどの動画サイトは、体調が悪くて文字情報が頭に入ってきにくい時でも、利用しやすいというメリットがあります。しかし、「やみくもに見ると危険」と浜本先生。そこで、「キャンサーチャンネル」(運営:認定NPO法人キャンサーネットジャパン)や、「オンコロチャンネル」(運営:3Hメディソリューション)など、安心して利用できるものをいくつか紹介してくださいました。

また、学会や病院のウェブサイトも参考になる場合があります。浜本先生は、がんにかかわる4つの学会・団体(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本対がん協会)や、慶應義塾大学病院が患者さん向けに作成している情報サイト「KOMPAS」などについて解説されました。

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行政が発信している情報については「主に生活や仕事にかかわる情報を得る上で活用できる」とのこと。東京都の「がんポータルサイト」のほか、患者会・医療者・行政が協力し、“交流と学習の場”として開設された「がんネットワークTOKYO」など、実際のサイト名を挙げてわかりやすく説明していただきました。
「行政が発信している情報は、あまりうまく活用されていないことがあります。『がんネットワークTOKYO』は、行政の情報を受け取るだけでなく、有志が集まって情報を活用し、『こういう情報がほしい』などという発信もしています。こうした例をロールモデルとして、全国各地に活動が広まればいいと思っています」(浜本先生)

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情報を探す前に、患者さんがしておきたいこと

がん情報を探していると“迷子”になってしまいがち。そうならないように、まずは自分のがんについて以下の3つを確認することが大切だといいます。

  • どこに(部位)
  • なにが(病理、バイオマーカー)
  • どのくらい(ステージ、初発か再発か)

具体的には、以下のスライドのような項目を確認してから、情報を探すとよいそうです。特に、1~3の項目(どこに、なにが、どのくらい)は大切だと言います。

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「セカンドオピニオンなどで医師に質問する場合も、自分の病状を整理しておくことをお勧めします。社会背景として、周囲のサポートを得られるのかどうかも大事です。また、治療の目標(何を目指しているのか)も非常に重要だと思っています」(浜本先生)

医学論文やガイドラインの利用法

今回は初級編ですが、少し踏み込んで医学論文やガイドラインの利用法についてもアドバイスがありました。医学論文は一流の医学雑誌に掲載されたものほど信頼性が高いこと、日本版のガイドラインは患者さん向けもあることなどを解説いただきました。

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「ガイドラインは丁寧に作りこまれ、根拠になる論文も書かれています。一行一行、丁寧に読むと良いのですが、自分の病気のことをそこまで踏み込んで読んでいくのは、すごくつらい作業です。ガイドラインを見てポジティブな気持ちにならないなら、無理して読むことはありません。主治医と力を合わせて病気と付き合っていくという風にアプローチするのが良いと思います」(浜本先生)

視聴者からの質問に浜本先生が回答

後半の質問コーナーでは、視聴者の皆様からさまざまな質問が寄せられました。その中からいくつかご紹介します。

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Q:国内のガイドラインと、NCCNなど海外のガイドラインの内容が異なった場合はどちらを優先して考えるべきでしょうか。

浜本先生:ケースバイケースです。薬物療法は海外のガイドラインが先行している場合が多いのですが、手術など技術的なものに関しては日本の方がハイレベルです。また、より日本の実情を反映しているのは、国内のガイドラインと言っていいでしょう。

Q:ガイドラインに「弱く推奨する」と書かれていると迷いそうです。先生は「弱く推奨する」治療について、何を指針として治療を選びますか。

浜本先生弱く推奨するというのは「決定打に欠けるものの、それなりにいい結果が出ている」ということです。ただ、リスクも考慮する必要があります。何を目指して治療するのか(目標)を明確にし、治せる可能性は高いのか、治療がQOL(生活の質)にどのくらい影響するのかなどを考え、主治医と一緒に決めていくのがいいと思います。

Q:がん情報サービスの病院検索で「がん診療連携拠点病院」を調べると複数の病院が出てきます。どういったものが選定基準になりますか。

浜本先生:がん診療連携拠点病院は、いずれも一定のレベル以上の病院です。遠くの名人とか、ゴッドハンドを探すよりは、アクセスのいいところ、継続的に通いやすいところがいいのではないでしょうか。

ほかにも、「主治医が言っていることや判断が正しいのか、見極める方法はありますか」「信頼できる患者会はどのように見極めたらいいでしょうか」「誰が発信をしているかで情報を見極めるのは危険でしょうか」などの質問も。浜本先生は一つ一つていねいに答えてくださいました。

最後に浜本先生は視聴している皆さんに向けて、次のようなメッセージを送りました。
「皆さんが非常に悩まれていることは日々感じていますし、僕たちも正確な情報を伝えたいと思っています。きれいな回答は出せなくても、最終的には皆さんが納得できる方法を示したい。それが病気と上手に付き合っていく上で助けになればと思っています」

※※

今回のセミナー後に実施したアンケートでは、参加したClub CaNoW会員の89.8%が「セミナーに満足した」と回答しました。皆様からは「専門書を購入したことがありますが、医学の基礎知識の解説は当然ないため、私には活用することは難しかったです。情報発信をしていただける医師の方々の存在が大変励みにもなります。今日お聞きした内容を、実践してみたいと思います。」「医師の本音が聞けてよかった。主治医との向き合い方がよくわかりました 」などのコメントが寄せられました。

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Club CaNoWでは、今後も月1回、専門家の先生をお呼びして、治療の助けになるような医療知識をどこよりもわかりやすくお届けする医療セミナーを開催予定です。加えて、月1回、治療生活を応援するための会員向けイベントも企画しています。

次回のセミナーは2023年2/22(水) 19:00~20:15を予定。
テーマは「賢い患者になるために知っておきたい正しい情報の見極め方 上級編」です。

医療は日進月歩で変化していますが、患者さんが最新の正しい医療情報をキャッチするにはどうしたらいいでしょうか? 最新の正しいがん情報を見極めるポイントを慶應義塾大学病院 腫瘍センター副センター長の浜本康夫先生にご解説いただきます。
第2回となる2月は上級編となります。海外の論文や最新のがん情報の検索の仕方、代替医療の判断の仕方等について一緒に紐解いていきましょう。

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