十二指腸潰瘍穿孔とは?潰瘍はがん化する?がん治療に影響する?

  • 作成:2016/01/06

十二指腸潰瘍穿孔(せんこう)とは、十二指腸潰瘍が進み、壁に穴があいた状態です。場合によっては、がんが見つかった際の治療の選択肢が限られる可能性があります。影響や潰瘍自体ががん化するリスクも含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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十二指腸潰瘍穿孔とは?

十二指腸潰瘍穿孔は「穴が開いた状態」

十二指腸とは食べ物を消化する消化管の一部です。小腸の始めの部分で、胃の次にあります。指12本並べた程度の長さなので、「十二指腸」と名前がついています。この場所は胃酸のまざった食べ物が流れ込んでくる場所なので、潰瘍のできやすい部位です。

十二指腸の壁は層状になっています。その一番内側にあるのが「粘膜層」と言われるものです。粘膜層だけの傷は「びらん」と呼びます。びらんよりも、もっと傷が深く、粘膜層の下にある「粘膜筋板(ねんまくきんばん)」という部分や、その奥まで傷がついた状態が潰瘍です。

そして「穿孔」とは穴が開いた状態をさします。潰瘍が深くなって十二指腸の壁に穴が開くまでの状態になっていることを「十二指腸潰瘍穿孔」と表現します。十二指腸潰瘍穿孔は、十二指腸潰瘍の中でも、比較的重症な状態であり、一般的には必要でない手術が必要になることがあります。

十二指腸は癌ができやすい

十二指腸潰瘍と癌の関係を説明する前に、十二指腸にできる癌について説明します。

十二指腸にできる癌は、そのまま「十二指腸癌」と表現されます。十二指腸を含む小腸は、胃や大腸と比べるとがんができにくい部分ですが、小腸の中では十二指腸が一番がんのできやすい部位です。

特に十二指腸には肝臓や膵臓(すいぞう)で作られた消化液が出てくる場所があり、その場所を「Vater乳頭(ファーターにゅうとう)」と呼びます。Vater乳頭に、癌ができると消化液が流れなくなります。肝臓の消化液が逆流した場合は、皮膚が黄色くなる「黄疸(おうだん)」と呼ばれる変化がみられることもあります。

十二指腸潰瘍と癌の関係は不明

それでは、十二指腸潰瘍と癌の関係はどうなっているのでしょうか。結論から言うと、十二指腸潰瘍があると癌になりやすいとは言われていません。

ただ、十二指腸潰瘍の原因の1つにヘリコバクター・ピロリ菌の感染があります。ヘリコバクター・ピロリ菌は酸の強い胃の中でも生き続けることができる細菌です。ヘリコバクター・ピロリ菌は、十二指腸癌と関係があるかどうかははっきりしていませんが、胃がんとの関連は科学的に証明されています。そのため初めて十二指腸潰瘍と診断された場合や、これまでヘリコバクター・ピロリ菌の検査を受けたことがない場合は、一度ヘリコバクター・ピロリ菌の検査を受けることをお勧めします。癌の予防につながる可能性があります。

穿孔あとにがんができると治療に影響

また、十二指腸潰瘍と癌の関係を考えると、十二指腸潰瘍穿孔は、癌の治療に影響することがあります。

十二指腸は胃と比べると細い臓器です。そのため、十二指腸潰瘍や穿孔が治るときに十二指腸が変形すると、食べ物が十二指腸でつっかえることもあります。また一度潰瘍・穿孔になった場所は「瘢痕化(はんこんか)」といって、固くなるので、その部分に十二指腸癌ができると、治療の選択肢が限られてしまうこともあるのです。

具体的に言いますと、十二指腸癌が起きた場合、初期の場合ならば、胃カメラを使って、表面のがんだけを取り除く治療がありますが、瘢痕化している部位は表面と奥の層がくっついてしまっていることがあります。くっついた状態の場合、本来なら胃カメラで表面だけを切除すればよい大きさであっても、開腹して腸を切除する手術が必要になってしまうかもしれません。

十二指腸潰瘍は直接十二指腸の癌に関係があるとは考えられていませんが、「原因となるピロリ菌と胃がんの関係が指摘されている」「癌治療の選択肢に影響を与える可能性がある」ことを考えると、十二指腸潰瘍は可能な限り早期発見して治療するのが良いですし、再発しないように注意を払うのは、とても意味のあることと言えます。



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十二指腸潰瘍穿孔や潰瘍のがん化する可能性などをご紹介しました。胃腸の症状の不調に不安を感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?

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