食道がんのステージと生存率などの予後 リンパ節に移ると?

  • 作成:2016/04/13

食道がんは、他のがん同様、ステージ(がんがどの程度進行しているか)によって、異なります。発見、治療開始から、5年後の生存率は、初期ならば75%ですが、最も進んでいると11%まで低下します。食道がんのガイドラインの考え方も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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食道がんの生存率はどれくらい?

食道がんの概要

食道は、口から胃へ食べ物を送る働きを担う臓器です。内側から、「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「外膜」という構成になっており、粘膜下層には血管やリンパ管が通っています。

日本での食道がんの特徴は、患者の90%が食道の粘膜表面をおおっている上皮から発生している「扁平上皮がん」であることです。発生したがんは、大きくなるにつれて、粘膜下層まで広がり、そして筋層にも広がります。さらに大きくなった場合には、食道の壁を破り、食道の周囲の気管、肺、大動脈、心臓などの臓器へ浸透(医学用語では、浸潤と呼びます)していきます。さらに、がんが食道の血管やリンパ管に乗って、別の遠隔臓器にも転移することもあります。

なぜ食道にがんが発生するのでしょうか。国立がん研究センターは、約14年間の追跡調査の結果、食道がんの発生には、飲酒と喫煙習慣が、非常に強く関連していると発表しています。食道がんを発症した患者のうち、飲酒習慣のあり、飲酒量が多くなればなるほど、飲酒習慣のない方よりも2.6から4.6倍も発症率が高くなっていました。また喫煙習慣においても、ヘビースモーカーであればあるほど、全くたばこを吸わない方よりも2.1倍から4.8倍も発症率が高くなっていました。

たばこの煙にはアセドアルデヒドが含まれており、そしてアルコールが分解された際にも体内でアセトアルデヒドが吸収されます。アセトアルデヒドは発がん性物質ですので、食道がんと長期間の飲酒と喫煙は強く関連していると結論づけることができます。

食道がんのステージと生存率

食道がんのステージは0期からIV期までにわけられています。各ステージの特徴と5年相対生存率(治療開始からの生存率)を以下に示します。

ステージ0期: がんが粘膜にとどまっている初期の段階です。

ステージI期: がんが粘膜にとどまっているが、リンパ節に転移している、あるいは粘膜下層まで浸潤しているが、リンパ節や他の臓器には転移していない状態です。生存率は75%。

ステージII期: がんが筋層を超え食道の壁の外に少しだけ出ていると判断される場合、あるいはがんが粘膜下層でとどまっているがリンパ節に転移している状態です。生存率は43%。

ステージIII期: がんが食道の外に出ており食道の壁沿いのリンパ節mあるいは遠隔のリンパ節へ転移している状態です。生存率は23%。

ステージIV期: がんが食道周囲の臓器、そして遠隔のリンパ節へ転移している状態です。生存率は11%。

ステージごとの治療は?

食道がんの治療法は4つ、主に内視鏡治療、手術、放射線治療、抗がん剤治療が実施されます。

ステージ0期: この段階は初期なので内視鏡治療が可能です。内視鏡を用いて粘膜部分の切除が実施されます。

ステージI期: 手術のみ、あるいは放射線もしくは抗がん剤治療、この2つのうちどちらか選択されます。リンパ節まで転移がない場合は、食道を温存するために放射線あるいは抗がん剤治療を実施する場合もありますが、基本は手術です。手術では、がん細胞と同時に食道も切除され、術後は新しい食道の再建手術が行われます。リンパ節へ転移している場合はリンパ節も切除されます。

ステージII期そしてIII期: 手術のみ、手術と放射線あるいは抗がん剤の併用、あるいは放射線と抗がん剤の併用、これら3つのうちのどれかが選択されます。完全に病巣が切除できるかどうか、患者の体力が手術に耐えられるかどうか、この2つが手術実施の際に考慮されます。多くの方で、手術後のがん再発や転移を防止するために、放射線や抗がん剤治療が併用されています。手術に耐えるだけの体力がないなどの場合、手術は選択されません。

ステージIV期: この段階では手術は実施されません。抗がん剤のみ、放射線のみ、放射線と抗がん剤の併用、苦痛や痛みを和らげる緩和治療、これら4つのうちどれかが選択されます。ステージIV期では、がん細胞をすべて消滅させることが不可能な状態になっていますので、緩和治療が大変重要な役割を持っています。

ガイドラインとは?どう使う?

ガイドラインとは、医療者と患者が特定の病気の状態における適切な診察の意思決定を行うことを助ける目的で、系統的に作成された文書です。取り扱い規約とも呼ばれます。

日本の食道がんガイドラインは、日本食道学会が作成しています。ガイドラインには、アルゴリズム(治療組み合わせ)、疫学、危険因子、診断、治療方法、術前そして術後の治療法、重複がん(他の部位でもがんができる状態)の場合の診察、経過観察、再発時の治療、緩和治療、欧米の治療成績とガイドライン、などが書かれています。

ガイドラインは、最新の臨床研究に基づいた質の高い診療を普及するため、専門家の間での標準や推奨を明確にするため、そしてがんの診療の可視化として、重要な役割をもっています。

ガイドラインの内容は、臨床試験および研究で得られた科学的根拠がベースになっていますので、医療従事者が適切な判断を下せるような助けをしています。しかし、がんの治療には、「どのステージ期で、どの治療を実施すれば、絶対にこうなる」という100%確かな治療結果は存在していません。各患者の病状や精神面など多くの課題を考慮しながら、各個人に最適な治療を選択しなければなりません。その際、治療方法の説明やそれに伴う結果は担当医師がすべて責任を負うことになっています。またガイドラインは新たな抗がん剤や治療法の開発、臨床試験(実際の患者の方に対して治療方法の効果があるかどうかを試す試験)の進展による有用、もしくは有用でない結果をふまえて定期的に更新されていきます。

食道がんのガイドラインの概要は、日本癌治療学会のホームページなどで見ることができます(参照:http://www.jsco-cpg.jp/item/09/index.html)。ただ、専門的な用語が多く盛り込まれていますので、自分で勝手な解釈をせず、疑問があれば医師に相談してみましょう。

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