痩せてるのに糖尿病?高血圧の危険性 死の四重奏とは?

  • 作成:2016/04/28

糖尿病は動脈硬化を促進するため、高血圧や、その先の心臓や脳の血管の障害にもつながる可能性があります。また、糖尿病というと太った方を思い浮かべる方もいると思いますが、痩せていく場合もあります。メカニズムを含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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痩せていても糖尿病がありえる?

糖尿病が動脈硬化を促進する理由

糖尿病は血液中の血糖値が高いことによって動脈硬化が進み、様々な合併症を引き起こすことが知られています。動脈硬化の進行に伴う合併症には、狭心症、心筋梗塞、脳出血など命に関わるものもあります。動脈硬化には大きく分けて2つあり、比較的太めの動脈に起こる場合は「粥状(じゅくじょう)動脈硬化」または「アテローム動脈硬化」と呼び、細い動脈に起こる場合は「細動脈硬化(さいどうみゃくこうか)」と呼びます。粥状動脈硬化の方が、一般的に動脈硬化といわれているものです。細動脈硬化は、基本的に高血圧が原因で起こる脳や腎臓の細い動脈の病気のことです。

動脈は、内側から「内膜」「中膜」「外膜」と呼ばれる3枚の膜で成り立っており、内膜には「内皮細胞」と呼ばれる細胞があります。内皮細胞は動脈硬化を防ぐさまざまな働きをもっていますが、糖尿病や高血圧により内皮細胞が傷つくと動脈硬化を防ぐことが難しくなります。すると血液中の悪玉コレステロールが、内膜の内側に侵入し、対応するための白血球の1種である「単球」と呼ばれるものも内膜内に入り込み、結果的に沈着物(プラーク)として蓄積し内膜が厚くなります。プラークのせいで血液の流れが悪くなり、血管に負担がかかるようになります。これが、糖尿病は高血糖が持続することにより血管の内皮細胞を傷つけ、結果的に動脈硬化を進行させる仕組みです。

動脈硬化によって起きる高血圧や心血管の問題

糖尿病によって動脈硬化が進行すると、高血圧、心血管疾患、脳血管障害、認知症など様々な合併症を引き起こします。血圧は心臓から送りだされる血液の拍量と末梢血管の抵抗を考慮して、計算されます。つまり糖尿病によって引き起こされる動脈硬化によって、血管が硬くなると高血圧となります。高血圧は心血管疾患、脳血管障害、腎疾患の原因になることが知られており、糖尿病と高血圧を合併すると死亡率が上昇することも明らかになっています。

糖尿病に伴う心血管疾患としては狭心症、心筋梗塞が有名です。動脈硬化が進行することによって心臓を栄養する血管がせまくなったり、つまったりして、胸痛、不整脈、心不全などの症状が狭心症、心筋梗塞に伴って起きます。糖尿病患者さんは糖尿病性神経障害を合併していることも多く、一般的に自覚できる胸痛を自覚できず、知らないうちに狭心症や心筋梗塞を起こし、心臓の機能が低下している可能性もあります。そのため糖尿病患者さんに対して定期的に心電図検査などを行うことが多いです。

脳血管関連の問題は?認知症もある?

糖尿病に伴う脳血管障害としては脳梗塞、脳出血などが挙げられます。糖尿病によって、動脈硬化が進行し、脳の主要な血管がせまくなったりつまったりして、手足の麻痺や言語障害、歩行障害を起こします。動脈硬化により高血圧も合併していると脳の血管が高い圧力に耐えられなくなり、脳出血やクモ膜下出血を起こし、意識障害になるだけでなく命の危険もあります。また糖尿病では、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の発症率が高いことが知られています。

糖尿病は太っている人だけ?痩せている人も危険?

糖尿病は太っている人に多い印象があるかもしれませんが、血糖値が高い状態を放置していると痩せることがあります。その理由は2つあり、糖を正常に利用できないことによるエネルギー不足と、高血糖の状態による脱水と言われています。

糖尿病の場合にはインスリンが正常に機能しないため、血液中の糖をエネルギーとして利用できないため、筋肉や脂肪を分解しエネルギー源を得ようとします。そのため体の筋肉や脂肪が分解され、体重が減り痩せていきます。また、高血糖が持続すると人間の体は、薄めようと細胞内の水分が血管内へ流入します。このことにより糖尿病の初期症状として、口の渇き、多飲、多尿という症状が出ますが、大量の尿が排出されてしまうため脱水になります。結果として脱水により体重が減る原因となります。

メタボリック症候群、死の四重奏について

メタボリック症候群は、内臓脂肪の蓄積による肥満に、高血圧、糖代謝異常、脂質代謝異常が合併することで、心血管疾患や脳血管障害などの動脈硬化による病気の発症を招きやすい状態のことを指します。日本人の死因の1/3は心血管疾患と脳血管障害(脳卒中)によって占められており、それらは動脈硬化が原因であることが分かっています。

内臓脂肪が蓄積された状態は、高血圧、糖尿病、脂質異常症を引き起こしやすく、動脈硬化も促進させることが明らかになったため、健診などでも腹囲を測定しメタボリック症候群を早めに発見し、動脈硬化による心血管疾患や脳血管障害を防ごうという試みが行われています。

メタボリック症候群の前に使用されていた言葉が、「死の四重奏」です。死の四重奏とは、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症を合併している状態だと、心血管疾患による死亡率が上昇することが分かったためアメリカで提唱された概念です。メタボリック症候群は内臓脂肪蓄積がその他の合併症の元になっていると考える点が死の四重奏と違うところです。しかし、メタボリック症候群を発症している状態では死の四十奏と同様に、様々な動脈硬化性疾患(心血管疾患や脳血管疾患)を発症し、死亡する危険性が高いことは変わらないため日頃から生活習慣に気を付けて予防することが大切です。

糖尿病と高血圧の関係などについてご紹介しました。血糖値が高めで不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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