慢性活動性EBウイルス感染症の原因、感染経路、症状、治療 蚊が関係?再発や予防可能性は?

  • 作成:2016/10/05

慢性活動性EBウイルス感染症とは、多くの人が感染しているウイルスの影響で起きる病気です。ただ、原因となるウイルスに感染しても発症する方は少なく、患者が少ない難病の1つです。症状、治療、再発可能性などを含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

慢性活動性EBウイルス感染症とはどんな病気?症状は?

目次

慢性活動性EBウイルス感染症の原因

慢性活動性EBウイルス感染症は、英語で「Chronic Active Epstein-Barr Virus Infection(CAEBV)」といい、発症の原因は、そのまま「EBウイルス:Epstein-Barr Virus:EBV」というウイルスになります。

EBVは、「ヘルペスウイルス科」に分類されるウイルスで、5歳までに約50%の人が、そして20歳以上では約90%から95%の人がこのウイルスに感染しています。

CAEBVは、アジア地域で発症する例が多く特に日本での症例が突出しています。逆に欧米での症例が少なく、また発症の形式や症状が日本とは異なっています。CAEBVの治療および疾患に対する研究が世界的にあまり進んでおらず、日本でも治療法が確立していない「難病」といわれています。

疾患の発症や症状には地域差があるものの、CAEBVは「リンパ増殖性疾患」と捉えられています。「リンパ増殖性疾患」とは、名前の通りリンパ系細胞が、過剰に増殖する疾患です。厚生労働省の報告によるとCAEBVは大変まれな疾患で、現在、日本では年間約100人程度(推定)発症しています。

EBウイルスの感染経路

EBVは、人から人へ、唾液を介して、鼻咽頭上皮細胞とBリンパ球へ感染していきます。感染経路は、乳幼児期では家庭内そして保育所などの施設における感染、思春期以降では異性間の交流が主になっています。

一度感染すると、一生涯「Bリンパ球」という血液細胞に潜伏する「潜伏感染」です。EBVに感染しているからといって、必ずCAEBVを発症するわけではありません。発症するきっかけは、免疫力が低下したとき(疲労、ストレス、外傷、病気など)といわれています。

EBVは、Bリンパ球に潜伏していても直接病気を発症するわけではなく、「T細胞」や「NK細胞」という種類の細胞に感染した場合、CAEBVを発症することがわかっています。

CAEBVでは、EBVに感染したT細胞やNK細胞が次第に増殖してゆきます。増殖したT細胞やNK細胞はやがて腫瘍の性質をもつようになり、リンパ腫や白血病へと進行してゆきます。T細胞やNK細胞は、本来「サイトカイン」という物質(ホルモンの一種)を出し、身体に侵入してくる病原体を攻撃してくれる役割を持っていますが、いったん腫瘍としての性質をもってしまうと、さらにリンパ球を活性化させ、炎症も引き起こしてしまいます。

結局、CAEBVは「腫瘍」としての性質そして「炎症性疾患」としての性質の両方を兼ね備えた特徴を持っています。そのため、増殖したT細胞やNK細胞を根絶しない限りCAEBVの治療は期待できません。

慢性活動性EBウイルス感染症の症状

通常、乳幼児期にEBVに初感染しても、症状のあらわれない「不顕性感染」で無症状の場合が多く、感染したことに気づかないことも多いようです。

一方、思春期以降で初感染すると、「伝染性単核球症」という病気に似た症状を発症しています。伝染性単核球症はCAEBVとは異なる疾患ですが、同じEBVが原因となり、唾液を介して感染しています。伝染性単核球症では、発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹という3つの症状が出ますが、特定の治療法がないため対症療法をとります。通常、約4週間から6週間程度で自然に症状が治ってきます。ただ、伝染性単核球症は、まれに数か月間症状が続き重篤となるケースもあり、その場合にCAEBVと診断されています。

CAEBVの特徴的な症状は、以下の通りとされています。

・何か月も続く発熱、倦怠感
・リンパ節腫脹
・肝腫大
・血中肝酵素上昇
・脾腫
・皮疹
・口腔内アフタ

また、症状が進行悪化すると、合併症として、「心疾患」「肝不全」「腎炎」「脳炎」などの多臓器不全、「悪性リンパ腫」などの悪性腫瘍が起きる場合があります。

蚊アレルギーとの関係は?

また、「蚊アレルギー」といって蚊に刺された後に重症化する人(皮膚のただれ、潰瘍、水ぶくれ、発熱などの症状が出る人)や、日光に当たると蚊アレルギーと同じような症状が出る「重症型腫痘水疱症」という病気の人も、EBVに対応する抗体がその症状に関係しているといわれているため、CAEBVである可能性があるといわれています。

何科を受診すればよいか?検査はどのようなもの?

子どもの場合は小児科を、思春期以降であれば内科を受診するのがよいでしょう。CAEBVの確定診断は容易ではありません。病院では段階を経て3つの検査を受けます。

まず抗体検査を受けます。抗体検査では、EBVに感染したかどうか判断するための「EBV抗体価」というものの値を測定します。健康保険が適用されるため自己負担は3割です。

抗体価が判明し、CAEBVが疑われる場合は、次に、「DNA定量検査」といい、EBVが増加しているのかどうか血液中のEBVのDNA量を調べます。この検査には健康保険が適用されないため現状2万円程度の費用を全額自己負担することになっています。

EBVの増加が確認され、ますますCAEBVの疑いが強まった場合、「リンパ球検査」といい、どの細胞に感染しているのか(Bリンパ球、T細胞、NK細胞)を調べます。これは特殊な検査のため一部の施設でのみ実施されています。検査費用は研究機関が負担することになっているため検査費用は無料です。

慢性活動性EBウイルス感染症の治療

現在、CAEBVの治療の効果として、「造血幹細胞移植」が報告されています。抗ウイルス薬や化学療法(抗がん剤)などの治療効果はありません。

「造血幹細胞移植」とは、化学療法などを実施して、血液細胞が破壊されてしまった後、ドナーから提供された造血幹細胞を投与する方法です。造血幹細胞移植は、CAEBVの完全な治療法として確立されているわけではなく、なおかつ治療数も少ないのが実情です。ただ、2010年時点、移植後3年後の生存率は90%という結果が治療実施機関から報告されています。

しかし、CAEBVは、医療機関での認知ががそれほど高い病気ではないため、正しい診断が下されるまでに長い時間を要する場合があります。適切な治療を受けられないまま疾患を放置してしまうことになりかねないような対策の検討も必要といえるかもしれません。

再発の可能性は?

CAEBVは適切な治療を受けない限り、症状が繰り返されます。つまり再発を繰り返します。CAEBVでは、病状の急変や進行悪化が多くみられ、合併症、多臓器不全、悪性リンパ腫、白血病などを発症し、数年以内で約50%の人が、十数年以内にほぼ全ての人が死に至る可能性があります。

予防できる?

また、2016年現在、CAEBVには予防策はありません。なぜEBV感染したT細胞とNK細胞が異常増殖をしてしまうのか、その原因が判明していないためです。

CAEBVは免疫力が低下しているときに発症しやすいといわれていますが、年間発症患者数も極わずかであること、地域差もあり症例も少ないことから研究が進んでおらず、疾患の全面的な解明には至っていません。

厚生労働省科学研究・難治性疾政策研究事業では、以下のような方に、一度EBV抗体検査を受けるよう推奨しています。

・原因不明の熱(37.5度以上)が3か月以上続くあるいは繰り返す
・首のリンパ節がずっと腫れている
・蚊や虫に刺された後の皮膚が水ぶくれになり発熱を伴う
・顔や手足が日光に当たると水ぶくれができる

慢性活動性EBウイルス感染症についてご紹介しました。原因不明の症状に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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