遊走腎とは?原因、女性に多い理由、症状、重症度、治療を解説

  • 作成:2016/02/26

「遊走腎」とは、腎臓が通常の状態より下にさがっている状態です。女性、特に痩せているかたに多くみられ、排尿などの障害が起きることがあります。重症度、治療などの対応法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は3分です

遊走腎が女性に多いのはなぜ?

遊走腎の原因とは

腎臓は腰の辺りに位置する臓器で、左右両側に1つずつあります。腎臓は主に、体内の余分な水分や電解質、老廃物を尿と共に体の外に排出しています。腎臓は横になっている時や座っている時に比べて、立っている時に重力の影響で少し位置が下がります。「遊走腎」では、立っている時に、生理的な範囲以上、具体的には2椎体(背骨を構成している骨)以上。または5㎝以上、下に垂れている状態となっています。

「排泄性尿路造影」と呼ばれる造影剤を使用した検査で、レントゲン撮影をすることで、どれくらい下に垂れているかを判断します。

遊走腎の原因は、先天的または後天的に腎臓を支える周囲の脂肪組織や筋肉組織が弱いため立位時に腎臓を支えきれず下垂するためと考えられています。

遊走腎はなぜ女性に多いの?

遊走腎は女性に多く発症するとされており、特にやせている女性によく起こります。腎臓は動脈と静脈の2本の太い血管で固定され、周囲の脂肪組織や筋肉組織に囲まれることで位置を保っています。そのため、やせ形の女性では脂肪が少なく、筋力も弱いことが多いため、腎臓を正常な位置に保てず、遊走腎が起きると考えられています。また、遊走腎は右側に起こりやすいと言われています。

遊走腎の症状と治療法は?

遊走腎の10%から20%では無症状と言われています。健診などで血尿や蛋白尿を指摘されたため精密検査を行ったところ、遊走腎が原因だったと分かる人もいます。最もよく自覚される症状は、背部痛やわき腹から側腹部にかけての痛みで、立っている時や重いものを持っている時に現れることが特徴です。尿の流れが悪くなり、腎臓に水が溜まる水腎症を起こすと、痛みを生じることが多いと考えられています。腎臓が生理的な範囲以上に下に垂れてしまうと、血管が引っ張られたり、尿管が折れ曲がることがあるだけでなく、下に垂れた腎臓が他の臓器を圧迫する可能性もあります。そのため、血尿や蛋白尿、尿管や膀胱が圧迫されることによる排尿困難や頻尿が起きます。その他の症状としては、倦怠感、頭痛や耳鳴り、胃腸障害などの訴えがあることもあります。

ただ、遊走腎によって腎不全になることはほとんどありません。遊走腎は重症度以下の3段階に分けられます。

重症度1:症状がなく治療の必要のないもの
重症度2:症状はあるが、水腎症などは起こしていないもの
重症度3:症状があり、立位時に水腎症や腎臓の血流低下を認めるもの

重症度3のものでは手術が検討される症状ですが、基本的には腎臓の周囲の脂肪組織を増やすために体重を増やす、腹筋を強くするために腹筋強化運動を行う、医療用コルセットを装着して腎臓が下垂しないようにするなどの対策が行われます。治療で症状が改善することが多いですが、再びやせてしまったり、筋力が落ちると再発する可能性があります。また日常生活で遊走腎の症状が出ないようにする予防法としては、長時間立ち続けない、腎臓が下がった状態でウエストを締め付けないなどの方法があります。

遊走腎は何科にかかればいい?

遊走腎は腎臓内科か泌尿器科を受診するようにしましょう。しかし実際には自分で遊走腎であると判断することは難しいので、健診で血尿や蛋白尿を指摘されて内科や腎臓内科を受診して精密検査が行われることが多いです。手術が必要と判断された場合には、泌尿器科を紹介してもらえるでしょう。

遊走腎の症状や治療などについてご紹介しました。腎臓の病気に不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

症状や健康のお悩みについて
医師に直接相談できます

  • 24時間受付
  • 医師回答率99%以上

病気・症状名から記事を探す

その他
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師