ネフローゼ症候群の検査、診断 血液検査?画像検査?「腎生検」の意味も解説

  • 作成:2016/10/15

ネフローゼ症候群の検査では、血液検査や尿検査に加えて、腎臓に直接針をさす「腎生検」という検査などを実施しますが、腎生検は、一部の方で実施することができません。ネフローゼ症候群の診断基準も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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ネフローゼ症候群の検査と診断を知ろう

ネフローゼ症候群の検査は、血液検査や尿検査

腎臓は「糸球体」と呼ばれる組織の集まりであり、何らかの病気により「糸球体」が障害されると、正常では排出されない量の蛋白尿が出てしまいます。結果として血液中の蛋白成分が減少します。血液中の蛋白成分が減少すると血圧低下やショック、腎機能障害、全身の浮腫(むくみ)を引き起こします。

このような大量の蛋白尿、低蛋白血症(血液中のタンパクが異常に低い状態)、全身性の浮腫(むくみ)をきたす疾患をネフローゼ症候群と言います。

ネフローゼ症候群の原因となる疾患は様々です。腎臓自体に病気が発症する場合を「一次性ネフローゼ症候群」、何らかの基礎疾患が原因で発症する場合を「二次性ネフローゼ症候群」と分類します。

ネフローゼ症候群の検査には、血液検査、尿検査、画像検査、腎生検があります。

ネフローゼ症候群の検査方法

ネフローゼ症候群の診断には、「高度の蛋白尿」と「低蛋白血症」の存在の確認が必要です。尿検査で蛋白尿の程度を測定し、血液中のアルブミンや総蛋白などの蛋白成分を検査します。血液中の蛋白成分が低下すると、肝臓が蛋白成分を作ろうとするため、蛋白成分と共に血液中の脂質濃度も上昇します。

また血液が濃縮され、血栓ができやすくなるため、採血で凝固系の異常(血液を固める機能の二条)がないかも検査します。

他には各種膠原病の原因となるような「自己抗体(自分を攻撃してします抗体)」や特定の腎疾患で減少する「補体(免疫を補助するたんぱく質)」なども血液検査で調べます。

腎生検の意味と方法

糖尿病などによる二次性ネフローゼ症候群のように、明らかに原因となる病気が推定される場合には腎生検を行わないこともありますが、基本的に腎疾患の確定診断には腎生検が必要です。

腎生検は、麻酔で痛みを感じないようにしてから、超音波で観察しながら、背中側から腎臓へ細い針を数回刺して、腎臓の組織を直接採取し、顕微鏡で観察する検査です。うつぶせで行う検査で、細い針とはいえ、腎臓に刺すので以下のような方は実施できません。

・うつぶせができない方
・出血傾向のある方
・全身状態が悪く検査を行えない方
・検査中に動いてしまう可能性があり危険がある方

腎生検は原因疾患の特定だけでなく、治療方針の決定、治療効果判定にも有用です。

画像検査の意味とは?

ネフローゼ症候群に対する画像検査には、超音波検査、CT検査、MRI検査があります。高齢で発症したネフローゼ症候群の中には、癌に関連して発症するものもあるので、全身をCTで検索することもあります。まれなケースではありますが、薬剤の副作用によってネフローゼ症候群を来すこともあるので内服歴なども重要です。

ネフローゼ症候群の診断基準とは?

ネフローゼ症候群の診断には、以下の2つの要素が必須です。

・1日3.5g以上の蛋白尿の持続
・血液中のアルブミンが3.0以下

1日の蛋白尿を診断するため、「蓄尿」といって、24時間分の尿を溜めて蛋白量を測定します。24時間蓄尿することが難しい場合や、外来などで経過を見る場合には、「随時尿検査」と呼ばれる尿を溜めない検査を行い、尿中の蛋白尿の質を推定することもあります。

血液中の蛋白成分の量を推定するために、「アルブミン」だけでなく、「総蛋白」と呼ばれる数値も有用なため、その値が6.0g以下の場合も、ネフローゼ症候群の診断のための参考値になります。

蛋白尿と低蛋白血症以外に、浮腫(むくみ)や脂質異常症(高LDL血症)、尿中の「卵円形脂肪体」などと呼ばれる物質の検出なども、ネフローゼ症候群の可能性を示唆する所見として参考になると考えられています。

むくみだけでは診断できない理由

ネフローゼ症候群の診断は、実際には、臨床経過(急激な発症か緩やかか)、全身症状(浮腫や血圧低下など)、尿検査や血液検査、腎生検などを併せて行います。

ネフローゼに特徴的な症状の1つに浮腫(むくみ)がありますが、この症状は肝不全や心不全、一部の薬剤の副作用でも起きるため、治療方針を決定するためには鑑別することが大切です。

治療開始後の効果判定や外来での診察のための観察項目は、ネフローゼ症候群の診断基準に必須であった蛋白尿と血液中のアルブミン値になります。

ネフローゼ症候群の検査と診断についご紹介しました。腎臓に関する病気について、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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