小児のネフローゼ症候群の原因、完治・再発可能性 難病扱い?先天的?後天的?

  • 作成:2016/10/15

ネフローゼ症候群の原因は、「うまれつきかどうか」「病気が背景にあるかどうか」で、多様で、子供の場合も、多様な病気が原因となりえます。完治と再発可能性を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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子供のネフローゼ症候群の原因とは?

ネフローゼとは?その分類は?

腎臓は「糸球体」という組織の集まりでできている、腰の辺りに左右1つずつある臓器です。「ネフローゼ症候群」とは、糸球体の毛細血管が障害され、正常であれば排出されない蛋白(たんぱく)が大量に尿中に出てしまう病気です。高度の蛋白尿が排出されることにより、血液中の蛋白成分が減少し、血圧の低下や全身の浮腫(むくみ)、ショックを起こすこともあります。

ネフローゼ症候群の原因には様々なものがあり、以下の大きく以下の2つに分類されます。

先天性→遺伝子異常による病気
後天性→先天性以外

さらに後天性の病気は、以下の2つに分類できます。

一次性ネフローゼ症候群→腎臓自体に病気が起きるもの
二次性ネフローゼ症候群→全身の別の病気(「基礎疾患」といいます)により腎臓に障害が起きるもの

小児の先天性ネフローゼ症候群の原因は?

小児における先天的な原因のあるネフローゼ症候群として、生後3か月以内に発症する「フィンランド型先天性ネフローゼ症候群」や3か月以降に発症する「びまん性糸球体硬化症」が、医療関係者の間ではよく知られています。

他にも、「Denys-Drash症候群」「Pierson症候群」「nail-patella症候群」「Herlitz致死型表皮水庖症」「中枢神経奇形症候群」「Galloway-Mowat症候群」「微小変化型ネフローゼ症候群」「膜性腎症」「ミトコンドリア異常」などの種類があります。

小児の後天性ネフローゼ症候群の原因は?

小児の一次性ネフローゼ症候群の原因となる病気も様々で、「微小変化型ネフローゼ」「巣状分節性糸球体硬化症」「膜性腎症」「メサンギウム増殖性糸球体腎炎」「管内増殖性糸球体腎炎」「膜性増殖性糸球体自然」「半月体形成性腎炎」「Alport症候群」などがあります。 この中でも、「微小変化型ネフローゼ症候群」「巣状性分節性糸球体硬化症」「膜性腎症」の頻度が高いと言われています。

小児の二次性ネフローゼ症候群の原因疾患としては、「先天性梅毒」や「トキソプラズマ」「B型肝炎」などの感染症によるものや「全身性エリテマトーデス(SLE)」などの膠原病によるものがあります。

小児のネフローゼ症候群は難病?

日本には小児慢性特定疾病に対する医療費助成制度があり、慢性的な病気で、生命を長期にわたって脅かし、症状や治療のために生活の質を低下させ、長期にわたって高額な医療費の負担が続く可能性のある「難病」と認められた場合には国から助成金が出ます。基本的に18歳未満が適応となります。

ネフローゼ症候群は難病指定されており助成の対象となっています。詳細な条件や手続きについては小児慢性特定疾病情報センター(http://www.shouman.jp/)のホームページを見るか、受診している医療機関で聞いてみるのがよいでしょう。

小児のネフローゼ症候群の原因の特徴

小児の一次性ネフローゼ症候群の原因としては、前述のように、「微小変化型ネフローゼ症候群」「巣状性分節性糸球体硬化症」「膜性腎症」などの頻度が高いことがわかっていますが、その中でも、「微小変化型ネフローゼ症候群」は小児の一次性ネフローゼ症候群の約80%をしめると言われています。一方で成人の一次性ネフローゼ症候群の原因は、「膜性腎症」が多くなり、「微小変化型ネフローゼ症候群」の割合は低下します。

小児の二次性ネフローゼ症候群の原因は、「紫斑病性腎炎」、全身性エリテマトーデスという膠原病による「ループス腎炎」、感染症に伴う「急性糸球体腎炎症候群」が多いのが特徴です。成人は、糖尿病性腎症(糖尿病が原因で起きるもの)や、「アミロイド腎症」などの頻度が高いと言われています。

小児のネフローゼ症候群の完治可能性

小児のネフローゼ症候群の原因で多いと言われている「微小変化型ネフローゼ症候群」の経過は良好なことが多く、約90%の人がステロイド治療や免疫抑制剤で大量に出ていた尿蛋白が消失すると考えられています。ステロイド治療を開始後は徐々にその量を減量し、最終的には中止して様子を見ます。長期に再発しなければ完治と考えます。

しかし、微小変化型ネフローゼ症候群でも、ステロイドに反応しない人(「ステロイド抵抗性」があると表現します)やステロイドを減量するとすぐに再発する「ステロイド依存性」の人は。投与するステロイドの量が多くなってしまうため、副作用も出やすくなります。

小児のネフローゼ症候群の再発可能性

微小変化型ネフローゼ症候群はステロイドが効きやすいと言われていますが、再発もしやすく、約70%の方で再発を繰り返すことがあります。再発しても入院せずに外来で治療できることもあり、通学はできます。一部の小児において、成人になるまで病気を持ち越す場合もありますがほとんどの人は思春期になるころに治ると考えられています。

微小変化型ネフローゼ症候群以外のステロイドが効きにくい病気や遺伝子異常などによる先天性のネフローゼ症候群の場合には、腎機能障害が悪化し透析を必要とすることもあります。

どの病気が原因だとしても、小児のネフローゼ症候群は発症してから長く付き合う可能性がある疾患です。

小児のネフローゼ症候群の原因や治療・完治可能性などについてご紹介しました。子供の体調不良に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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