ループス腎炎の原因、症状、治療、予防方法 薬でもなる?膠原病に併発?

  • 作成:2016/09/27

ループス腎炎とは、膠原病の1種に併発しやすい病気で、文字通り腎臓に影響が出ます。膠原病だけでなく、ある種の薬が同様の症状を引き起こすこともあります。症状や治療の概要を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は3分です

ループス腎炎の治療を知ろう

ループス腎炎の原因

ループス腎炎は、「全身性エリテマトーデス(SLE: Systemic Lupus Erythematosus)」という病気にかかった時に発症することがある腎臓病です。

全身性エリテマトーデスの明確な原因は未だにわかっていませんが、日光やストレス、ホルモン、感染、薬剤などがきっかけになり、自分を攻撃する「自己抗体」というものが産み出されることはわかっています。産生された自己抗体は全身のさまざまな臓器を攻撃し、強い炎症を引き起こします。

ループス腎炎の場合にも自己抗体が、腎臓を攻撃し炎症を起こしており、全身性エリテマトーデスの患者の約60%から80%に合併するといわれています。

病気の原因に自己抗体が関与していることから、関節リウマチなどと同様に自己免疫疾患と考えられています。

ループス腎炎のなりやすい年齢は?

好発年齢は20歳から40歳台で、男女を比較すると1:10で女性に多いといわれています。日本では、国に申請しているだけで約6万人の患者がおり、厚生労働省は難病疾患として認めています。

ループス腎炎の症状は?

全身性エリテマトーデスでは、その名の通り全身にさまざまな症状を起こすことで知られています。皮膚の特徴的な発赤や皮疹、日光過敏症、口腔内潰瘍、脱毛、関節炎、心臓の膜の炎症、神経障害、肺障害、肝障害、膀胱炎、腸炎など、多岐にわたります。

そして、腎臓が全身性エリテマトーデスに関連する自己抗体で障害された時には、「ループス腎炎」とよばれ、血尿やタンパク尿、手足や顔のむくみを自覚することがあります。また、採血では自己抗体の存在や補体の低下、腎機能障害を認め、血圧は上昇することもあれば、低下することもあります。

ループス腎炎は、しばしば「ネフローゼ症候群」といわれる状態を起こす可能性があります。ネフローゼ症候群は、さまざまな腎臓病によって、腎臓が障害されることにより、本来体の中に留めておきたいタンパクが尿から大量に排出されてしまい、血液中のタンパクが低下し、結果として。むくみや低血圧によるショックを引き起こす状態を指します。

自己抗体の活動性を抑える治療により腎臓の炎症を抑制できなければ、ループス腎炎は進行し、将来的には自分の腎臓では体の中の余分な水分や老廃物を尿として排出できない「末期腎不全」になります。

ループス腎炎の確定診断は、腎臓に直接細い針を刺して組織を取って顕微鏡で観察する「腎生検」という検査を用いて行います。

ループス腎炎は何科に行けばよい?

ループス腎炎は、腎臓内科や膠原病内科が専門とする病気です。ただし、全身性エリテマトーデスの場合、自分自身では腎機能障害よりも、皮膚の発赤や皮疹、発熱や倦怠感、関節痛などを自覚して受診することがほとんどです。まず内科を受診し、その後に専門となる科へ紹介されることが多いでしょう。

ループス腎炎の治療法は?

ループス腎炎は、自分を攻撃する自己抗体が原因で引き起こされているので、治療はその活動を抑えることを中心に行われます。

主にステロイドが使用されますが、ステロイドのみでは炎症のコントロールが難しい場合には、免疫抑制剤が併用されます。他にも自己抗体を血液中から取り除く目的で、「アフェレーシス治療」という治療が行われることもあります。

ループス腎炎は再発する?

ループス腎炎は、自己免疫疾患で、原因がはっきりしないこともあり、再発する可能性があります。治療により自己抗体の活動を抑えられていれば、ループス腎炎による腎機能障害も進行しないようにコントロールすることが可能です。

しかし、もし再発してしまうと急速に腎機能障害が進行し、末期腎不全になることもあるので注意が必要です。ループス腎炎の治療は、前述のように、再発しないようにステロイドや免疫抑制剤でうまく病状をコントロールすることがポイントです。

ループス腎炎は予防できる?薬の影響に注意?

ループス腎炎は、何らかの原因で自己抗体が産生されてしまうことはわかっていますが、そのきっかけは人によって違うので予防するのは難しいです。

ただし、ある種の降圧薬や抗不整脈薬、抗精神病薬などを内服すると「薬剤性ループス」とよばれるような、全身性エリテマトーデスと同様の症状を起こす可能性があることがわかっています。そのような薬剤を内服する時には、副作用として全身性エリテマトーデスと同様の症状が出ないか気にしておくと、すぐに症状に気づくことができ、悪化を防げる可能性はあります。

ループス腎炎についてご紹介しました。周囲に腎臓病の方がいて、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

病気・症状名から記事を探す

その他
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師