胎児水腫の原因、症状、治療、予防 りんご病が危険?流産リスクも?

  • 作成:2016/07/01

胎児水腫とは、胎児の体に水がたまり、全身がむくんでいる状態で、流産、死産、出生後の後遺症につながる可能性があります。母体と胎児の血液型の不一致で起こることもありますが、原因が不明のこともあります。どのような治療をするのかや、「りんご病」が危険とされる理由も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

平松晋介 監修
ちくご・ひらまつ産婦人科医院 院長
平松晋介 先生

この記事の目安時間は3分です

胎児水腫とりんご病の関係は?

胎児水腫はどんな病気?

胎児水腫は、胎児の腹部、胸、皮膚などに水が溜まり、全身がむくんでいる状態です。放置すると、貧血が重症化したり、溜まった水が肺や心臓を圧迫したりするため、死産につながることも多い病気です。

胎児水腫の原因

胎児水腫は原因によって、「免疫性胎児水腫」と「非免疫性胎児水腫」に分けられます。「免疫性胎児水腫」は、血液型不適合妊娠で起こる事が多く、母親が「Rhマイナス」、胎児が「Rhプラス」となっているRh式血液型不適合などで起こります。

分娩の時に、母体は、微量ですが、胎児の血液を取り込んでしまいます。Rhプラスは、赤血球にRh因子がある状態、RhマイナスはRh因子がない状態です。母親がRhマイナス、胎児がRhプラスの場合、Rh因子を持たない母親の体は、Rh因子を持つ胎児の赤血球を異物とみなし、母親の免疫が働いて、「Rh抗体」というものが作られます。通常、初産の場合、Rh式血液型不適合は起こりません。2回目以降の妊娠の際に、胎盤を通して胎児にRh抗体が伝わると、Rhプラス因子を持つ胎児の赤血球を破壊することがあります。胎児の赤血球の破壊が進むと、胎児が貧血となり、やがて全身がむくんで胎児水腫になってしまうのです。が、出産回数が増えるほどより早期に多くのRh抗体が作られるため、胎児水腫が起こる可能性が高くなります。

また、Rh血液型不適合妊娠の場合、出生後にも強い黄疸が出る事が多く、脳性麻痺を引き起こす事が多いため、このような抗体ができない様に、分娩後に抗体を作らない様な注射を行います。

非免疫性胎児水腫の原因は?

「非免疫性胎児水腫」は、血液不適合以外が原因で起こる胎児水腫のことです。感染症、心血管系の病気、染色体異常、呼吸器など胸部の異常、一卵性双胎児がひとつの胎盤を共有しているときに血流のアンバランスによって起こる「双胎間輸血症候群」、貧血などが原因とされていますが、原因が不明なことも珍しくありません。

母体がりんご病にかかると胎児水腫になる?

「りんご病」とも呼ばれる伝染性紅斑は、「ヒトパルボウィルスB19」というウイルスが原因で起こる感染症ですあり、一度感染すると免疫ができ、その後は生涯発症することはありません。

ヒトパルボウィルスB19は子どもが感染しやすく、大人はヒトパルボウィルスB19に感染しても自覚症状がみられないことが多いとされています。しかし、妊娠初期から中期の女性が、初めてヒトパルボウィルスB19に感染したとき、本人がウイルス感染に気づかないうちに胎児水腫になっている可能性があります。感染が起こると、胎児に溶血が起こり、重症の貧血になる事があります。わが国では、妊婦の約7割はヒトパルボウィルスB19への免疫がないと考えられているため、妊娠中はとくにヒトパルボウィルスB19の感染を防ぐことが大切です。また、妊娠中に伝染性紅斑(りんご病)の感染がわかった場合は、かかりつけ医に妊娠中であることを伝えたうえで、産婦人科にも相談しましょう。

胎児水腫のリスク

胎児水腫は、超音波検査で発見できる病気です。ただし、胎児水腫は、流産や死産の可能性が高く、無事出産できても、新生児に心臓や肺に重い症状が残り、生後すぐ死亡することも少なくありません。そのため、胎児水腫とわかった時点で治療を始めることが必要です。

胎児水腫の治療は?

胎児水腫の場合は、まず、むくみの原因となる余分な水分を抜く治療を行います。胎児に針を刺して水分を抜く「穿刺(せんし)」を行っても再び水分が貯まるときは、母親の子宮(=羊水腔)と胎児の胸腔に「シャントチューブ」という管を留置し、胎児から、母親の子宮内に水分を排出する「胸腔-羊水腔シャント術」という治療を行います。

貧血が原因であるときは、母親の子宮に針を刺し、へその緒から胎児へ輸血を行います。

胎児水腫の予防は?

胎児水腫を完全に予防する方法はわかっていません。ただし、父親がRhプラスで母親がRhマイナスである、多胎児妊娠などの場合は、胎児水腫の可能性が比較的高くなります。妊娠中は必ず定期健診を行い、超音波検査で胎児のむくみの有無を確認することが大切です。特に、Rh式血液型不適合による胎児水腫は、妊娠回数が多いほど発症する可能性も上がると考えられていることから、定期的に胎児の状態を検査することが重要です。

また、妊娠中は伝染性紅斑(りんご病)の原因となるヒトパルボウィルスB19に感染しないことも大切です。妊娠中は、伝染性紅斑を発症している人とは接触を避け、やむを得ない場合は、うがいと手洗いを念入りにし、タオルなどは別のものを使うようにしましょう。

胎児水腫についてご紹介しました。胎児の状況に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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