りんご病の症状、治療、感染経路、潜伏期間 妊婦は要注意の理由は?再発する?いつから登園や登校可能?予防は難しい?

  • 作成:2016/02/12

2015年には感染者の急増を見せたりんご病。例年、4月から増え始めて7月にピークを迎える傾向がありますりんご病は「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」とも呼ばれます。名前の通り、頬が蝶の羽のような形に赤くなることが特徴です。「ヒトパルボウイルスB19」というウイルスに感染することが原因です。年齢層としては、5歳から9歳の患者さんが最多で、つぎに多いのが0歳から4歳となっています。りんご病の症状や治療、大人や妊婦が注意すべき理由を、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

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この記事の目安時間は6分です

りんご病の症状や感染経路はどんなもの?

目次

りんご病の原因と症状 かゆみ、発疹が特徴?

ぽてっとした頬(ほお)が特徴の赤ちゃん。よだれがかぶれたり、寒いところにいたりするとすぐに頬が赤くなりますが、手足までうっすら赤くなってはいませんか?もしかしたらそれはりんご病の症状かもしれません。

りんご病は医学的に「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」とも呼ばれ、「ヒトパルボウイルスB19」という人間だけに感染するウイルスによって発症します。その名の通り頬がりんごのように赤くなるのが特徴で、頬の紅斑が出た後に手足にうっすらとレース状の赤みが出ます。手足だけではなく、おなかや全身に赤みが出ることもあります。紅斑にはかゆみを伴うことがあります。

頬の紅斑は2日くらいで消え、手足のほうは1週から2週間ほど続きます。赤い発疹が消えれば、りんご病は完治です。重症化することもほぼありませんので、発疹やほてりが悪化しないように保湿してあげたり、熱いお風呂や日焼けを避けてあげたりするだけでよいでしょう。ただ、念のため医師の受診もしてください。

りんご病の感染経路

りんご病のウイルスとなる「ヒトパルボウイルスB19」は感染者の鼻水や唾液、血液の中にいます。感染経路に以下の3種類があります。

・くしゃみや咳で飛び出したウイルスを吸い込んで感染してしまう「飛沫感染(ひまつかんせん)」
・皮膚を介しての感染者の血液への接触といった「接触感染」
・母から胎児への「垂直感染(すいちょくかんせん)」

最も重要なことは、一番ウイルスの感染力が強くなるのは症状が出ているときではなく、症状が出現する前の「潜伏期間中(感染しているが症状が出ていない時期)」であり、飛沫感染で周囲へ拡散してゆきます。

りんご病のウイルスの感染力は強い?流行時期は?

りんご病のウイルスの感染力は微弱といわれています。流行時期は様々で、一般的に晩冬から初春に流行するとされていますが、一部のデータでは6月から7月にかけて患者数のピークを迎えるという報告もあり、一定している訳ではありません。「4年から6年毎に、大きな流行の波がある」とも言われています。夏に夏風邪のような症状が出た場合、特に注意をするとよいでしょう。

りんご病の初期症状は?高熱が出ることはまれ?

紅斑だけと思われがちなりんご病ですが、実は潜伏期間が10日から15日と長く、紅斑が出る1週間くらい前には微熱や鼻水などの風邪のような初期症状が出ると知られています。高熱が出ることはまれです。この時期は、多くの親がただの風邪だと思ってしまいますので、紅斑ができてはじめて「あら、りんご病だったのね」と知ることになります。

風邪のような時期が、一番感染力が強いので子供の世話をしているお母さんがりんご病に感染してしまうこともあります。紅斑がみられる時期には感染力もなくなり、ただ発疹が消えるのを待つのみなので、拍子抜けした感じになるかもしれません。

赤ちゃんのりんご病で、両親に気を付けてほしいことは特別多くはありませんが、お母さんが妊娠している場合は注意してほしいと思います。妊婦さんがりんご病に感染するとおなかの子供に悪影響を与えてしまうことがあるといわれています。「子供が風邪かも?」と気づいた時から感染予防をするようにしてください。少しでも不安なことがある場合は医師に相談してみましょう。

りんご病の症状で下痢が起きる?

下痢はりんご病の特徴的な症状ではありませんが、潜伏期間中に風邪に似た症状(発熱、倦怠感、せき、鼻水、鼻づまり、吐き気)が出るため、消化器の症状として下痢が起こる場合があります。

りんご病は何科に行く?皮膚科?小児科?大人はどこへ?

りんご病の場合、子どもは、かかりつけの小児科の受診が一般的です。かかりつけの医師のもとには今までの病歴が保存してありすし、また知っている病院や先生なのでお子さんも安心してスムーズに診察を受けられるでしょう。皮膚の赤みや発疹が顕著であれば、皮膚科を受診しても良いといわれています。りんご病は感染症ですが、感染症科は重症例、診断が困難な場合、あるいは渡航後の感染の疑いなど特殊なケースを診断することが多いため、お子さんの容態がいつもと違うと感じたら、まずはかかりつけの病院の先生に問い合わせるのが一番良いでしょう。

大人は、赤みなどの皮膚症状が出ない代わりに、発熱、関節炎、筋肉痛、浮腫など、症状が多種多様といわれているため、かかりつけの医院あるいは病院の内科を受診しください。

りんご病の診断と検査 血液検査の可能性も?

医師がりんご病と診断するためには、基本的に頬と手足の紅斑から診断し、「溶連菌感染症」や「風疹」などの症状の似た病気の可能性を消していき診断します。

子どもの場合、りんご病で血液検査をすることはほとんどありません。なぜなら、りんご病かどうかの判断は、血液中の抗体値(抗体がある、つまり一度感染し免疫ができているかどうか)を検査することで判明するためです。4歳から10歳ごろの小児のりんご病の多くは、幼稚園、保育園、学校のような施設における集団感染がウイルス初感染というケースが大半で、ほとんどの小児ではまだ抗体ができていないため、抗体値を測定する血液検査は不要といわれています。

しかし、大人の場合は、子どものような典型的な経過をたどることがない点、皮膚の症状が出にくく診断が困難である点、以前りんご病になったかどうか不明な方がおられる点(抗体があるかどうか不明な方)を考慮します。条件に該当して、かつ風邪に似た症状、関節痛、筋肉痛、発熱、浮腫など様々な症状がみられ、また最近子どもや孫と接触した、といったなどの経験があれば、りんご病の原因ウイルスの「ヒトパルボウイルスB19」感染の疑いを前提として抗体値を調べるために血液検査を受けます。

とはいえ、一般的には、妊娠中などの事情がない限り、保険も効きませんので行われることはありません。

りんご病の治療 薬はある?

りんご病と診断された場合、どのような治療が必要になるのでしょうか?残念ながら、これといった特効薬や治療法はなく、「対症療法」が中心となります。対症療法とは、出ている症状にあわせて治療を行うことをいいます。たとえば、発疹が強くてかゆくなったりするときにはかゆみ止めなどを使います。日光に当たると発疹がひどくなりやすいので、外で遊ぶのをひかえるか、帽子などでガードしてあげましょう。また熱いお風呂に入ることで血流がよくなり、かゆみが増すこともあるので熱いお風呂も控えたほうがよいでしょう。

また、りんご病では風邪などと同様に体力が落ちてくるので、長引かないようにしっかり休息を取ることが大事です。

りんご病に予防接種はある?

特効薬がないため、りんご病には感染を防ぐための予防接種(ワクチン)もありません。

りんご病の潜伏期間と予防方法 予防が難しいのはなぜ?

ワクチンがない中でどうやってりんご病の感染を防げばよいでしょうか。実はりんご病を防ぐのはとても難しいのです。その理由はりんご病の潜伏期間にあります。りんご病はウイルスを体内に取り込んでから頬の紅斑ができるまで10日から20日かかり、その後、手や足に網目状(レース状)の発疹が出てくるのですが、頬の紅斑が出る10日前くらいに微熱をはじめとした、風邪のような症状が出ることがあります。実は、この風邪のような症状が出ている時期がウイルスの排泄が最も多い時期だと言われています。

この時期に感染予防ができればよいのですが、多くの人は風邪や体調が悪いだけと思ってしまい、見過ごしてしまいます。紅斑が出てきた時にはウイルスの排出は終わっているので、その時期に感染予防をしても感染を防ぐことはできません。そのためりんご病を予防するのはとても難しいのです。

ただ、りんご病の原因となるヒトパルボウイルスB19自体の感染力は弱いので、ウイルスにさらされても何も症状が出ない「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」で終わることも多々あります。

大切なことは、手洗いやうがい、咳エチケットなどの基本的な感染予防が大切になります。「咳エチケット」とは咳やくしゃみをするときに手やハンカチで口をおさえる事です。りんご病でも、ただの風邪でも、自分と周りの人を守るために必ず行いましょう。

りんご病は免疫がついて再発しない?二回目がありえる?

りんご病について、「一度感染すると抗体ができて、免疫がつくために二度とかからない」という話を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。これは正しい情報ではないと考えられています。ウイルスに対する抗体が付きやすい人もいれば付きにくい人もいるからです。一度感染すればもう感染することはないという人もいますし、実体験として何回も感染している人もいます。「一度かかったことがあるからもう大丈夫」とは考えず、「再発する可能性がある」と考えて、注意するようにしましょう。

りんご病の時にお風呂に入ってよい?注意点は?

りんご病では、お湯を介してウイルスに感染することはありません。症状が現れる前の潜伏期間中でも入浴は問題ありません。また皮膚に典型的な症状が出た後も、すでにウイルスの感染力は弱まっていますので、顔が赤く、身体に紅班が広がっていても入浴は問題ありません。

ただし、入浴によって身体が温まると発疹の痒みが増すため、お子さんが皮膚をかいてしまうことがありますので、ぬるめの温度設定をしたり、短時間で済ませるなど工夫してください。

りんご病なら、保育園、学校は出席停止?

りんご病は「学校保健安全法」と呼ばれる法律で、第三種以降の「その他の感染症」という区分になっています。「その他の感染症」とは「必ず出席停止を行うべきものではなく、感染症の種類や流行状況などを考慮したうえで学校長が判断する必要がある」とされている感染症です。りんご病は感染力がそれほど強くなく、爆発的に感染が広まるものではないため、保育園において、強制的な出席停止を伴わないような扱いになっています。「その他の感染症」にはりんご病のほかに、溶連菌感染症や手足口病、とびひなどがあります。

また、小学校などを管轄する文部科学省は、りんご病に関して「発しん期には感染力はないので、発しんのみで全身状態の良い者は登校( 園) 可能である」としており、ウイルスの排泄が終了してしまっている紅斑の時期には登校、登園が可能となっています。しかし、安易な自己判断は危険ですので、かならず医師に許可をもらってから登校するようにしましょう。

りんご病の時外出して良い?目安は?

潜伏期間中は、ウイルスの威力が強く、飛沫感染によって拡散しますので、できるだけ外出は控えたほうがよいでしょう。しかし、症状がないのでりんご病にかかっているかどうかわからず、現実的に「潜伏期間だから外出しないようにしよう」とするのは困難です。

目安として、発症後(典型的な症状が現れている約1週間から2週間程度の時期)、それにつづく回復期(発症から2週間以降)は、ウイルスの感染力は弱まっており、周囲の人が感染する心配はほとんどないため、登園や登校などの外出は問題ありません。

「りんご病でプール」はOK?

りんご病が流行する時期はちょうど初夏。学校ではプール開きが始まる時期です。ではりんご病にかかった場合、プールは入ってもいいのでしょうか?

感染という点では、頬に紅斑ができている時期には感染力はないので入っても構いません。しかし、頬を真っ赤にした発疹のある子供がプールに入っていたら、周りの人はどう思うでしょうか。「わが子にうつるのでは」という心配を含めて、無用なトラブルを避けるためにもなるべくなら控えたほうがいいかもしれません。スイミングスクールや学校ならば、運営者や先生に相談してみるのも一つの手です。発疹が続いている場合は、太陽の光にあたるとかゆみが悪化してしまう場合があるので、プールは控えたほうが良いといえます。

りんご病とおたふくかぜの違いと見分け方

りんご病とおたふくかぜの決定的な違いは、まず原因となる病原体(ウイルス)です。

りんご病は「ヒトパルボウイルスB19(パルボウイルス科単鎖DNAウイルス)」、そして、おたふくかぜは「ムンプスウイルス(パラミクソウイルス科のRNAウイルス)」です。

見分け方あるいは見た目の違いの特徴として、りんご病は、頬に「紅班」という紅い皮疹ができ、太ももや上腕にも斑点やレース状のまだら模様ができます。

一方、おたくふくかぜは、耳から頬の下の「耳下腺」という組織が膨れ上がり(腫れは両側あるいは片側だけの場合もあり)、顎下腺や唾液腺の「圧痛(圧迫した際の痛み)」や「嚥下痛(飲み込む際の痛み)」といった痛みを伴います。また、高熱が続くこともあり、耳下腺が腫れている期間はウイルスの排泄が多いため、前述のように、一般的に腫れがひいてから5日が経過し、全身状態がよくなるまでは登園や登校は禁止されています。

大人のりんご病の症状 かゆみがある?

子供に多いりんご病ですが、大人がかかるとどのような症状が出るのでしょうか。 大人のりんご病は、発症すると子どもより重症化しやすいと言われています。はじめに頭痛(後述)や発熱、倦怠感といった風邪の症状が見られるのは子供と同様ですが、子供に特徴的な頬の紅斑が大人では頻度があまり多くありません。その代わり、手足にかゆみを伴う紅斑ができたり、あざのような紫斑やぽつぽつとした点状の出血がある方がいます。典型的な紅斑が見られないために、りんご病と気づかれにくいことがあります。

りんご病の症状で関節痛が起きる?

他に大人のりんご病に特徴的なこととしては、発熱や倦怠感、関節痛やむくみなどの全身症状が強く出ることです。関節痛やむくみは1週間から2週間で治まりますが、症状がピークを迎える1日から2日は歩行困難になる方や、痛みが数ヶ月続く方もいるようです。以下、関節痛とむくみについて、くわしく解説します。

関節痛はりんご病の特徴的な症状ではありませんが、前述のよに、小児よりも成人で関節炎の症状が比較的多く出ています。

東邦大学の研究結果(http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0830010045.pdf)によると、りんご病の原因ウイルス「ヒトパルボウイルスB19」が原因となっている関節炎は、小児(10歳以下)で5.8%、青少年(10代)で11.5%、成人(20歳以上)では77.2%で発生しています。また関節腫脹(関節の腫れ)は、小児で2.8%、青少年で5.3%、成人では59.6%で発生していると報告されており、成人のりんご病(パルボウイルスB19感染症)の症状として関節痛(関節炎)が出る「多発性関節症症候群」の頻度が高くなっています。

関節痛の症状が一番多く出る箇所は、足関節(足首)です。続いて、指、肘、手、肩、膝の関節でもみられています。症状は身体の両側の関節が必ず対称的に痛むのではなく、片側だけ痛む場合もあります。

りんご病の症状でむくみ(浮腫)が起きる?

浮腫はりんご病の特徴的な症状ではありませんが、原因ウイルス「ヒトパルボウイルスB19」に感染した場合、小児ではなく成人で浮腫の症状が出ており、感染した成人の約80%で浮腫が見られるという報告が出ています。

むくみは、四肢(両手足)、特に指先、手のひら、足首、足先、足底に出るのが特徴的ですが、約30%では顔面に浮腫が出ており、また重症になると全身浮腫もみられ、腹水(腹部に水がたまること)、胸水(胸部に水がたまること)を伴う場合もあります。

大人のりんご病で頭痛が起きる?

りんご病では風邪に似た症状が出るため、発熱がある場合は頭痛が起こる場合もあります。大人のりんご病では、浮腫、関節痛、発熱、筋肉痛が代表的な症状としてあげられていますが、人によって症状は多種多様といわれていますので、倦怠感や頭痛を感じる方も、あまり多くはありませんが、いるようです。

大人のりんご病の治療は、子供の治療と違いがある?

子どもは対症療法といって、りんご病に感染しても、経過をみながら自然治癒を待つというスタイルです。

一方大人は、「ヒトパルボウイルスB19」に感染すると、子どものような典型的な症状が出ず、人によって症状は多種様々であるため、早めの確定診断が必要とされています。関節炎の痛みが強く長引く方にはステロイド薬や消炎鎮痛剤を、また浮腫には利尿剤などを用いる場合もあります。また免疫不全患者や「鎌状赤血球症」などといわれる溶血性疾患(血液の成分の一種の寿命が短くなる病気)を持っている方などは、合併症として「赤芽球癆(せきがきゅうろう)」などの特殊な重症貧血になることがあります。

大人のりんご病の潜伏期間は子供と違いがある?

大人の場合も、子どもと同じように、ウイルスの潜伏期間は10日間から20日間程度です。ただし、その後の経過(症状が出てから消失するまで)には、かなりばらつきがあります。参考までに、ある病院の報告では、1週間未満が約26.7%、1週間から3週間が約53.3%、それ以外は4週間以上持続、と大人の場合は治癒が長期化しています。さらに合併症などを発症している場合や、自己免疫疾患あるいは別の感染症にかかっている場合は、治療と経過には更に時間を要します。

妊婦のりんご病症状は普通の大人と比べて特徴がある?

妊婦のりんご病の場合、症状については、通常の大人の症状と特に際立った違いはありません。ただ、妊婦へ影響するリスクはあります。

妊婦のりんご病 妊娠初期は「胎児水腫」という重大なリスク

妊婦さんと貧血患者と免疫不全者では特に注意が必要になります。「ヒトパルボウイルスB19」に免疫のない妊婦さんが感染すると胎児に「胎児水腫」という異常を引き起こし、流産や死産を起こしてしまうことがあります。胎児水腫とは赤ちゃんの体に水分がたまって、全身がむくんでしまっている状態です。ヒトパルボウイルスによる赤ちゃんの貧血が、血液循環がうまくいかない状態を引き起こし、むくみを生じてさせてしまいます。

妊娠20週以前の感染がより危険であり、感染した場合4週から6週後に胎児が死亡してしまうという報告があります。もし、超音波で胎児水腫を疑われる状態を見つけた場合、へその緒からとった赤ちゃんの血液や、子宮からとった羊水からウイルスのDNAを検出する方法か、もしくはお母さんの血液からウイルスの抗体を見つける方法で、確定診断を下します。治療法は胎児への輸血です。驚くかもしれませんが、お母さんのおなかから赤ちゃんに針を刺して輸血をしてあげることで胎児の生存率は高くなるといわれています。

しかし放っておいても30%が自然に治るといわれておりますし、おなかの中にいるときに感染が確認された赤ちゃんでも、先天異常が認められた例や発育が異常であった例は知られていないので、感染がすぐ赤ちゃんの異常に結び付くわけではありません。

また、妊娠中にりんご病にかかると、赤ちゃんが小さく生まれやすいリスクもあるとされています。ただ、先天的な奇形の原因にはならないとされています。

妊婦さんは子どもが多く集まる場所などのりんご病が流行っていそうなところはなるべく避けて、感染予防に努めるようにしましょう。そして、しっかり検診を受けて、赤ちゃんの異常にいち早く気が付けるようにしましょう。

免疫の病気の患者も要注意

また、ヒトパルボウイルスB19には赤血球の産生を止めてしまうはたらきがあります。健常者では大きな問題はないのですが、「溶血性貧血」という病気の患者さんにとっては病気の悪化を招き、非常に危険です。また、HIVなどで免疫が弱っている免疫不全患者にも慢性的な貧血を引き起こしてしまうことがありますので注意が必要です。

妊娠後期のりんご病の胎児や出産への影響

妊娠早期(妊娠19週未満)の感染の場合、約20%の確率で胎盤を通過しウイルスが胎児へ感染、約10%で流産あるいは死産、そして約4%で胎児の貧血や胎児水腫を引き起こしています。

妊娠20週以降はウイルスに感染しても胎児に異常が出ることは、ほぼ無いといわれています。ただし、胎児水腫の場合、母体がウイルス感染してから時間がたってから判明する(8週間以上たってから胎児水腫が判明するケースもあります)場合が多くなっています。ウイルス感染から10週間経過しても特に胎児に変化や異常がなければ、週に1度の胎児検査を受ける必要はなくなり、通常の妊婦の健康管理を実施してゆきます。2011年の厚生労働省が実施した妊婦に対する調査では、妊娠中にウイルス感染した妊婦のうち半数は感染していたことを知らず、また症状も出ていなかったという結果が出ています。これは知らない間に胎児にウイルスが感染している危険を意味しています。

国立感染症研究所は、妊娠28週以降の感染による胎児へのリスクは低下し、また妊娠後期に感染しても胎児および出産には影響ないと報告しています。胎児感染、流産、死産、胎児貧血や胎児水腫の全妊婦に占める割合は決して高いものではありませんが、妊娠中期では週に2度そして後期になると週に1度の妊婦健診がありますので、自分の健康状態そして胎児の様子をしっかり把握する機会としましょう。

妊婦に必要なりんご病の抗体検査とはどんなもの?いつごろうける?費用はいくらくらい?

「ヒトパルボウイルスB19」の抗体検査は任意です。りんご病の抗体検査とは血液検査のことを指し、血液中に含まれる「IgM抗体値」および「IgG抗体値」というものを調べます。

「IgM抗体値」とは、ウイルスに感染すると最初に作られる抗体で、ウイルス感染後約2週間後に血液中に検出され、約3か月間持続します。一方、「IgG抗体値」とは、感染後約1か月後に「IgM」が低下する変わりに作られる抗体です。IgGは感染後一定の値を保つことから、ウイルスに対する免疫(抗体)ができたと判断できる指標となります。

まず、初回検査では、IgM抗体値を調べます。IgMが陽性の場合、最近感染したと診断され、その後必ず週に1度は胎児検査を受けていきます。これは胎児異常がないかどうか、そして異常を早期に発見するために必要な過程です。

初回の検査で、IgMが陰性(未感染)の場合は、2週間後に再検査を受けることが推奨されています。なぜなら、IgMが陽性に変わる可能性もあるといわれているためです。再検査でIgMが陽性になっていた場合は、最近感染したということになりますので、その後必ず週に1度の胎児検査を受けてゆきます。再検査では、IgMと同時にIgG抗体値も調べられます。IgMが陰性でもIgGが陽性の確認ができれば、抗体を獲得しているためウイルス感染の不安はありません。

再検査で、IgGとIgMの両方が陰性と確認された場合は、未感染と診断されますので、妊娠早期にウイルスに感染しないように日常生活で十分注意して過ごしてください。

不明あるいは不安な方は、妊娠が判明した時点あるいは妊娠を希望している時点など、なるべく早い時期に血液検査を受け、抗体の有無を調べましょう。費用は病院によって異なりますが、平均3,500円から高くても5,000円程度に設定されています。

りんご病について、症状や感染経路など全般的にご紹介しました。もしかしてりんご病かもしれないと不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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