全身麻酔が効かない人、術中目覚める人がいる?どう対応?

  • 作成:2016/09/01

「全身麻酔」の手術ときくと、「途中でめざめるのでは?」「薬が効かなかったらどうなるのか」といった疑問を持つ方も少なくないかもしれません。可能性や対応方法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は3分です

全身麻酔が効かない人がいる?

全身麻酔で術中に覚醒する人がいる?確率は?どう対応する?

一般に全身麻酔・手術中に目が覚めてしまうことは術中覚醒とよばれ、頻度は0.2%から0.4%程度と報告されています。術中覚醒は患者さんにとって非常に不快な経験であり、情動の障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)につながる可能性もあるため、全身麻酔における重大な合併症の一つとされています。

全身麻酔下の産科の手術(帝王切開など)、心臓外科の手術、重症外傷(ショック状態)の手術など、術中覚醒のリスクが高い術式や状況は以前からよく知られています。これらは、患者さんの状態が悪かったり、胎児への影響を少なくするために、麻酔を浅くせざるを得なくなることが多いためだと考えられます。

一方、一般的な手術においても、近年普及している強力な鎮痛薬(麻薬性鎮痛薬など)を主体とする「バランス麻酔(NLA麻酔など)では、意識に影響する静脈麻酔薬の投与量が少ないと術中覚醒のリスクが高まるとされています。

術中覚醒につながる麻酔薬の不足は、次のような原因で生じることがあります。

・ガス(吸入)麻酔薬の気化器の内容が空になっていることに気がつかない
・インフュージョンポンプ(静脈から薬を持続的に投与する精密ポンプ)の設定の誤り。具体的には「目標とする濃度」「患者さんの体重」「投与の速度」などの設定ミス
・静脈投与部位の監視不足。具体的には、カテーテルとチューブの接続のゆるみ、血管外皮下への漏れ、輸液バック内への逆流など

多くはヒューマンエラーが介在していて、麻酔科医が手術室看護師、薬剤師などとともに確認することで回避できる可能性の高い原因です。

ただ、麻酔は十分に深いと考えられる場合、つまり十分に麻酔薬が効いている状態でも、術中覚醒は報告されています。現在では脳波を基にしたモニター(BISモニターなど)によって、意識レベルが数値化され、十分に意識が消失しているか監視されています。結局、脳波などを用いたモニターによっても、今のところ完全に術中覚醒を防止することはできないといわれています。

全身麻酔が効かない人、効きにくい人がいる?

「全身麻酔が効く」「効かない」という話を聞くことがあるかもしれません。全身麻酔が効くか効かないかは、人によって全身麻酔薬の効果の違いがあるかということになります。全身麻酔薬は、(1)吸入麻酔薬と(2)静脈麻酔薬に分けられます。それぞれについて、見てみましょう。

①吸入麻酔薬;

吸入麻酔薬の効力の指標として、「最小肺胞濃度(さいしょうはいほうのうど;MAC)」というものが使われます。「MAC」とは、有害な刺激(皮膚の切開など)を加えられた患者さんの半数(50%)が、痛みを感じず動かなくなるのに必要な肺胞内における吸入麻酔薬の濃度です。例えば、現在よく使われる麻酔薬では、「セボフルラン1.8%」や「イソフルラン1.2%」などとなっています。

外科手術には、MACの1.2倍から1.5倍の濃度が必要とされ、麻酔科医はMACを目安に麻酔を行っています。したがって、同じ濃度でも効きやすい人と効きにくい人がいることは十分考えられます。しかし、吸入麻酔薬は調節しやすいことが特徴で、麻酔の効きが悪い場合、麻酔薬濃度を機器のダイヤルを上げることで即座に対応できますので、実際には問題にならないと思われます。

一方、「麻酔が効かない」とは、吸入麻酔薬においては薬の肺胞ではなく、脳内濃度が上がっていないということです。肺胞内濃度は、脳内濃度を反映するとされ、現在では全身麻酔の人工呼吸中に、呼気の終わりの麻酔薬の濃度(正式には「呼気終末麻酔薬濃度」)をモニタリングすることで、肺胞内濃度を測定できます。吸入麻酔では、肺胞内濃度が十分上がっていれば、一般的に麻酔が効かないということは考えられません。

②静脈麻酔薬;

肝臓における薬物や毒物、アルコールなどの代謝にとても大切な役割を担っている酵素群(「肝ミクロゾーム系」)の1つに、「チトクロムP-450(以下P-450)」という酵素があります。静脈麻酔薬の多くも、肝臓のP-450系によって代謝(分解)されることがしられています。ある種の薬物中毒や慢性の大量の飲酒などによって、P-450が誘導され、薬物代謝(分解)の酵素活性が高まることで、薬物が効きにくくなることがあります。

しかし、実際の麻酔の際に、静脈麻酔薬の効果が低下するというデータはほとんどみられません。また、バルビタール系の麻酔薬は酵素誘導を起こす薬剤としてしられています。

静脈麻酔薬が効かない場合は、むしろ血液中の濃度が上がっていない、すなわち確実に投与されていないような場合が考えられます。点滴が血管外に漏れてしまっているケースなどがありえます。



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全身麻酔で途中で目覚める可能性や効かない可能性をご紹介しました。全趾麻酔に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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