メラノーマの原因、症状、治療 なる確率は?どこにできる?痛みやかゆみあり?転移する?

  • 作成:2016/10/17

メラノーマは、皮膚癌の1種類で、「ほくろの癌」とも言われています。原因や症状、治療だけでなく、各種疑問と合わせて、専門医師の監修記事わかりやすく解説します。

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メラノーマの症状の特徴とは?

目次

メラノーマとは?概要

メラノーマは、一般的には「ほくろの癌」と呼ばれていて、悪性度の高い癌として有名ですが、これは黒い色素(メラニン)を作る細胞が悪性化したものです。メラニンを作る細胞は、全身の皮膚と口や目や外陰部の粘膜に存在していますから、体の表面のどこにでもメラノーマができる可能性があります。

もともと何もなかったところにメラノーマが生じてくることの方が多いのですが、生まれつき体の広範囲に黒褐色のあざ(「色素性母斑」)があると、その部位からメラノーマが出てくる可能性が高いことは古くから知られています。また、メラノーマの28%はもともと存在していた良性の黒褐色のあざから生じているという報告もあります。

メラノーマは比較的初期から転移をしやすいのが特徴で、転移が生じると治療はとても難しくなります。

体の表面にできるものですから、理論上は早期発見できるはずなのですが、現実にはかなり進行した状態で、初めて受診する患者の方もいます。

メラノーマを早期に発見するために、黒っぽいできものや不規則な形の「シミ」が数カ月前にできて自然に治らないという時には遠慮なく皮膚科に相談してください。

メラノーマの原因

知られるようになり、白人では、確かに紫外線にあたることにより、メラノーマが増えることが確認されています。そして、十分な効果のある日焼け止めを使用していると、メラノーマの発生が減少することが報告されています。

しかし、日本人メラノーマは手や足、外陰部などの、紫外線に当たりにくい部位に発生することが多いので、紫外線がメラノーマの主要な原因であるとは思えません。ただ、紫外線より高エネルギーを持つ宇宙線の被曝を受ける航空機の乗務員ではメラノーマの発症するリスクが2倍になるという研究報告があります。

妊娠中のメラノーマは経過が悪くなることは以前から知られています。この他、カフェインの総摂取量が多いとメラノーマの発症リスクが減るという調査結果、柑橘類の摂取が多いとメラノーマの発症リスクが上昇するという調査結果などもあります。

メラノーマの発症原因についての研究は進んでいますが、まだ十分には解明されていません。

メラノーマになる確率

2011年の厚生労働省の調査では10万人あたり3人がメラノーマになるという結果で、男女の比はほぼ同等です。

アメリカの統計では、メラノーマは白人に多く、白人では黒人に比べての20倍のリスクがあるとされています。また、色白で成長してからできてきたほくろが50個以上ある方では、そうでない方に比べて、メラノーマになる確率が高いとされており、成長後のほくろが50個以上あるような方は、注意しておくのが良いと思われます。

日本でも、生まれつきに、体の広範囲に黒褐色のあざ(色素性母斑)があると、その部位からメラノーマが出てくる可能性が高いことは古くから知られており、形成外科では培養皮膚(人工に作成した皮膚)などを用いた予防的な手術も行われています。

メラノーマになる年齢 なりやすい年齢がある?10代や20代でも?子供でもなる?

メラノーマの発症は、60歳代から70歳代にピークがあります。

しかし、他の皮膚癌とは異なり若年者でもメラノーマとなることがあり、頻度は低いのですが20歳代や稀にはそれ以下の年齢の小児でもメラノーマが発症します。メラノーマの場合は若いからと言って否定はできないということになります。

さらに、若年者のメラノーマは、外観が他の良性の腫瘍(がんは悪性腫瘍)に似ているケースもあり、注意が必要です。

メラノーマの進行スピード 早い?遅い?

メラノーマの成長には2種類のタイプがあります。

1つは、初期からイボ状に隆起してくるタイプで、まだ小さい時期でも転移してしまうことがあります。このタイプは他の皮膚癌より進行が早いと考えられます。

もう一つは「シミ」の形で生じてくるタイプです。このタイプは何年もの間隆起しないで、不規則な形の色素斑(シミ)として存在していることが多く、他の癌と比べて特に進行が早いということはありません。

メラノーマのステージの考え方と、予後、生存率

メラノーマは進行度にてステージが分類され、0期、I期、II期、III期、IV期に分けられています。

0期は、悪性の細胞が表皮にのみ分布している時期で、表皮には血管もリンパ管もありませんから、0期では、ステージでは内臓やリンパ節に転移することはなく、手術のみで治癒します。

I期は、転移のない初期のメラノーマです。腫瘍の厚さが1mm以下、および潰瘍のない腫瘍で厚さが2mm以下のものです。

II期は、転移のない少し大きくなったメラノーマです。腫瘍の厚さが2mmを超えているタイプ、および厚さが1mmを超えて潰瘍があるタイプです。

III期は、リンパ節転移があり、内臓転移のないものです。メラノーマは腫瘍の厚さとは無関係にIII期とされます。

IV期は内臓転移がある場合全てです。

メラノーマ治療の経験が豊かな大学の1つである信州大学(長野県)での、2000年から2009年の245症例の5年生存率(治療開始から5年後の生存率)のデータが2015年に公表されています。0期、I期、II期、III期、IV期のメラノーマについて、それぞれ100%、97%、82%、59%、18%となっています。

なおこの調査が行われたのは2000年から2009年までです。近年、メラノーマの治療成績を向上させることが期待されて新しい薬剤、「抗PD-1抗体のニボルマブ(商品名:オプジーボ)」、BRAF阻害剤というタイプの「ベムラフェニブ(商品名:ゼルボラフ)」、MEK阻害剤というタイプの「トラメチニブ(商品名:メキニスト)」の3剤はいずれもまだ使われていない時期のものです。今後、新薬で生存率が向上していくことが予測されます。

メラノーマができる場所 爪(足の爪)、足裏、背中、顔、陰部、手のひら、指、目にできる?できやすい場所がある?

日本におけるメラノーマの発生部位は多いものから以下の通りです。

足(足裏、足甲、足の指、足の爪)→約30%
手(手背、手のひら、手の指、手の爪)→約15%
外陰部や目、口の中の粘膜部→約11%

粘膜部は見逃されやすいので注意が必要です。多く発生している部位の特徴としては、外から物理的刺激を受けやすい部位であるためであろうという考えがあります。 その他にも、顔、頭、背中や腹部、腕や太ももやすねなど、全身どこにでも発症することがあります。

急に大きくなってきた「シミ」や急、にできてきたイボ状のできものには、注意しておくことが必要です。自分では見えない頭部や背部などは他の人に見てもらうのが良いでしょう。

メラノーマの初期症状の特徴 大きさや色に特徴?

メラノーマは、黒い色素(メラニン)を作る細胞が悪性化したものです。通常、悪性化した細胞もメラニンを作っているため、メラノーマは「悪性黒色腫」とも呼ばれるように、黒色系の色調であることが多いのです。ただ、まれに悪性化に伴ってメラニンを作る能力が失われてしまうことがあります。そのような場合には、赤っぽい色調や淡い褐色のメラノーマとなり、診断が難しくなってしまいます。

メラノーマの初期像には2種類あります。

1つは初期からイボ状に隆起してくるタイプです。このタイプは1cm程度の大きさであっても、リンパ節などに転移してしまうこともあり、早期発見が重要です。腫瘍の周辺部にしみだした黒色調の色素斑が全くない場合や、全体が赤っぽい色である場合では診断が難しく、「老化によるイボ」「血管腫(血管のできもの)」と誤解しないようにすることが大切です。「老化によるイボ」や「血管腫」として電気メスで焼いたり、液体窒素で凍結するなどの治療などを繰り返していると、治療に失敗してしまうことになります。

もう一つのタイプは、平坦で黒っぽい「シミ」のように見えるタイプです。「シミ」の形はきれいな丸い形ではなく、不規則な形であることが多く、色も部分的に白っぽい部分があったりして、色ムラがあるのが特徴です。このタイプはかなり進行すると部分的に隆起してくることがありますが、基本的にかなり長い間「単なる色素斑<シミ>」のように見える状態となっています。隆起が全くないために普通の「シミ」と考えて、美白剤を塗って様子を見たり、レーザー治療などを受けてしまうと、治療の機会を失うことになってしまいます。

メラノーマの症状 痛みやかゆみがある?体調に影響する?

メラノーマはかなり進行すると表面に傷ができて、出血することもありますが、通常は初期には全く無症状です。痛みやかゆみもないためメラノーマを「シミ」や「単なるできもの」であると誤解してしまうことがあります。結果として、多くの場合、初期には体調に変化が出てくることはありません。

疲労感が出たり、体調に影響してくるのは、メラノーマが進行して全身に転移が生じてきた段階で起こる症状です。

メラノーマ部分からは毛が生えない?生えることがある?

メラノーマは、毛の生えた頭部や外陰部に生じることがあり、そのような部位ではメラノーマの黒い色が毛に隠されて発見が遅れることがあります。

一方ではメラノーマは手のひらや足の裏にできることが多いのですが、手のひらや足の裏は部、元々毛が生えない部位です。

つまりメラノーマは毛のあるなしとは無関係に発生してくる悪性腫瘍です。メラノーマの部位に毛がないことも、毛のあることもありますので、毛が、メラノーマのなんらかの手掛かりになるとは、考えづいらいです。

メラノーマはとれることがある?とれない?

まれなケースですが、メラノーマが体の免疫の働きで、自然に部分的に退縮していくことがあります。さらに、まれなケースとしては、もともと生じたメラノーマが消えてしまって、転移した部分のみが残っているということがあります。

以上のように、メラノーマには、免疫が働きやすい性質があるのですが、完全に自然治癒することは期待できません。現在、免疫を高める働きのある薬剤の開発が進められており、一部は実際に使用され従来の抗がん剤より優れた効果を発揮していますが、免疫を高める治療だけで完治が期待できるということではありません。

メラノーマは手術可能であれば、まず手術をして取るのが最善です。

メラノーマとほくろの見分け方

「ほくろ」とは医学用語では「単純黒子」または「色素性母斑」と呼ばれます。ほくろは、生まれつきのものと、年月がたつうちに出てくるものがあります。平坦なタイプと隆起のあるタイプがあります。いずれにしても「丸い形」「楕円形」「ドーム状」「半球状」などで、「形がいびつではない」のが良性のほくろの特徴です。 他にも、良性のほくろでは色も均一であることがほとんどで、濃淡があることはまれです。良性のほくろの大きさは、あまり変わらないという特徴もあります。

したがって、数カ月から数年で大きくなってきた時や、形が左右対称ではなくいびつである時、色にムラがある時には、皮膚科を受診して、メラノーマではないことを確認しておくのが良いでしょう。

メラノーマはどこに転移する?転移しやいすい場所がある?

メラノーマは転移しやすいことでよく知られた悪性腫瘍であり、比較的小さい腫瘍であっても血管やリンパ菅を通って全身に転移します。

特に肺、皮膚と皮下組織、リンパ節に転移しやすいです。その他、脳、骨、肝臓、腹膜などへの転移もまれではありません。

メラノーマの末期症状とはどのようなもの?

メラノーマは初期に手術で取るのが最善の治療ですが、不幸にして、術後に転移や再発が発見されることがあります。近年新しく開発された治療薬は従来の抗がん剤よりも効果が期待できますので、進行してきたメラノーマの多くの場合では新しい薬剤を使って経過をみることになります。しかし、転移が起こったメラノーマでは、徐々に転移が進行してしまうことが多く、治療は難しいものとなります。

メラノーマが転移した時の症状は、転移した部位によって決まります。例を挙げますと脳に転移が起こった場合は、脳の組織がメラノーマの増大により圧迫されることで、症状が急変することがあります。腹膜転移では、腹水が溜まってお腹が膨れてきます。肺への転移では、胸水が貯留してきて次第に呼吸が苦しくなります。

子供のメラノーマの特徴

皮膚癌というと高齢者に起こるという先入観念がありますが、メラノーマは比較的頻度は少ないのですが、小児にも発生することがあります。小児のメラノーマは見た目では良性の腫瘍に見えてしまうものがあって診断が非常に難しいケースもあります。また、小児では麻酔をして腫瘍を切って検査をすることを、本人や両親がためらってしまうこともあるため、診断が遅れることがあります。

なお、小児ではときどき「スピッツ母斑」という腫瘍が生じますが、これは「若年性黒色腫」と呼ばれることがあります。「若年性黒色腫」は、見た目がメラノーマにとても似ているので、この診断のためには腫瘍を切除して検査することが必須です。

診断が難しいこともあるのですが、「若年性黒色腫(スピッツ母斑)」というのは悪性ではなく良性の腫瘍ですので、癌ではありません。

したがって若年性黒色腫、スピッツ母斑との診断の場合は、拡大手術や、リンパ節を取る手術や、抗がん剤の治療は不要です。悪性黒色腫と似た名前なので、決して誤解しないようにしてください。

メラノーマの病院の診療科

メラノーマが心配な時は、まず皮膚科を受診するのが良いでしょう。メラノーマは、初診時に正しく診断することが最も大切で、初期治療を適切に行うことが治療結果を大きく左右します。

黒い「シミ」はメラノーマ以外にもたくさんありますが、熟練した皮膚科医はそれを目で見ることにより、メラノーマの疑いがあるかどうか、おおよその判断ができます。

また、皮膚科では日常的にダーモスコープを用いて診察を行います。ダーモスコープでは、疑わしい部位を拡大して見ることができるだけではなく、少し皮膚の深い部分の画像情報が得られるため、メラノーマの診断に大きく役立ちます。

目で見る診断、ダーモスコープによる診断は、医師の熟練度により結果がかなり異なってしまいますが、全く痛みはなくすぐに結果が得られるのがメリットで、メラノーマを診断するうえで、極めて重要な所見となります。

口の中や、目の結膜、女性の外陰部の粘膜にできていたりした場合は口腔外科や、眼科、婦人科に紹介したうえで、連携して診療を行うことになります。また手術については皮膚科で全て行うこともありますが、形成外科や整形外科と連携することがあります。

いずれにせよ、最初の診断には皮膚科が大きく関与することになります。

メラノーマの検査と診断 どんな検査?

腫瘍の診断に慣れた皮膚科医は、まず目で見てメラノーマの心配があるかどうかおおよその見当はつきます。ただ、小児のメラノーマの場合、見た目が良性の腫瘍に似ているケースがあり、診断がとても難しいことがあります。

近年では目で見る検査の他に、一種の拡大鏡である「ダーモスコピー」を用いることがメラノーマの診断に大いに役立つことがわかってきました。「ダーモスコピー」の検査では、痛みは全くなく、容易に皮膚の少し深い部分の情報が画像として得られるので、普通の拡大鏡でみるのと異なった種類の情報が得られます。

しかし、画像とはいっても、画像にうつったものの解釈には、ある程度の修練が必要ですから、メラノーマが心配になってきた時には。ダーモスコピーの検査に習熟した皮膚科を探して、受診するのが良いでしょう。

肉眼やダーモスコピーの検査でメラノーマが疑われる場合には、切除して標本を顕微鏡で見る検査を行うことになります(生検)。生検による病理診断がメラノーマの確定診断となります。

メラノーマが疑われる病変が小さくて簡単に全体を切除できるときは、病変全体を含む最小のサイズで切除して、病理検査を行うのが普通です。メラノーマの初期の場合は、顕微鏡で見る検査でも、メラノーマであるかの判断が難しいことがあるので、小さいものほど全体像を見て診断することが大切なのです。

大きな病変である場合や、病変全体を切除すると確実に術後の見かけが明らかに悪くなる場合などでは、まず小さく部分的に切って検査を行い、メラノーマであることが確認されれば、全体を切除するという計画となることもあります。以前は、段階的な切除だと治療成績が下がるという意見が一般的でしたが、近年の研究結果では否定されていますので、部分的に切って検査を行うことも合理的な選択と言えます。

メラノーマは、転移があるかどうかで治療方針が大きく変わってきますから、メラノーマと診断されたら、胸部レントゲン、超音波検査、CT、MRI、PETなどの画像検査を必要に応じて進めることになります。リンパ節転移が疑われる時には、リンパ節を切除して病理診断を行います。ただ、早期の0期では、転移の可能性はありませんので、転移を確認する画像検査は推奨されていません。

なお血液検査については、転移のある進行期のメラノーマでは異常値が出ることがありますが、メラノーマの早期発見に役立つ血液検査は、2016年時点で、開発されていません。

メラノーマの手術治療 どのようなもの?メリットとデメリットは?

メラノーマの治療は手術可能であれば、まず手術を行うのが最もメリットの大きい治療方法となります。メラノーマであっても、早期であれば適切な手術で完治が期待できます。

リンパ節転移がある場合は、他に内臓などへの転移がなければ、「リンパ節郭清」という手術で、転移のあるリンパ節全体を摘出するのが普通です。リンパ節は、癌細胞の転移をせき止める装置です。メラノーマの細胞がリンパ節で、せき止められているうちに。うまく取ることができれば、治癒することも期待できます。

ただ、リンパ節郭清を行うと、手術部分でリンパ液の流れが悪くなりますから、リンパ液がたまって浮腫(むくみ)が起こってきます。むくみは、程度の差はありますが、不可避です。

股のリンパ節を郭清すると下肢に、脇のリンパ節を郭清すると上肢に、程度のひどい浮腫が起こって、腫れて細菌感染を繰り返したり、リンパ液が常に皮膚から漏れ出てきたりするとような事態となることがあります。術後早期からマッサージをしたりするなどの対策をして、予防することが大切となります。

メラノーマの治療薬 作用機序と副作用

現在のところ、メラノーマを完治させることのできる点滴や飲み薬はありません。手術を避けて、薬で治療を勧めるような情報がある場合、手術を恐れる気持ちを悪用したビジネスである可能性がありますので、注意してください。

メラノーマができた部分が切除不能で、内臓転移もあるメラノーマに対しては、抗がん剤治療として、以前から「ダカルバジン」という薬が用いられてきましたが、効果は低く、満足できる治療ではありませんでした。

また従来の「ダカルバジン」などの抗がん剤は、増殖の速い細胞に強い毒性を発揮することにより、癌細胞を抑えるという性質がありました。使用に伴う副作用として、白血球や血小板を作る細胞の働きも抑えられてしまいます。白血球が減少して、様々な感染症が起こったり、血小板が減少して出血しやすくなるということが起こります。

ある程度進行したメラノーマは手術のみでは治療成績が悪いために、リンパ節転移はあっても内臓への転移がないメラノーマや、手術後再発の恐れがあるメラノーマの治療として、「ダカルバジン」を中心として3種類の抗がん剤を組み合わせた「DAV療法」や、それに免疫を高める「インターフェロンβ」という薬を併用する「DAV-Feron療法」が、生存率を改善する可能性があるということで、日本では、長らく行われてきました。しかし「DAV療法」や「DAV-Feron療法」について、十分なデータが示されていないことと、最近明確な有効性が示された新しい治療薬が開発されてきたことにより、治療方法を見直す動きがでています。

メラノーマの治療費の考え方

メラノーマは健康保険で診療できますので、他の病気に比べて、特別に高額の医療費かがかるということはありません。新しい高価な治療薬を使用することがありますが、その場合でも「高額療養費制度」という制度で、月ごとの自己負担の上限額が決められており、超えた分については、免払い戻しを受けることができます。

なお上限額は所得に応じて変わり、現在のところ最も高い上限額は月に140100円となっています。

健康保険の適応となっていない治療を行うと、「自由診療」という扱いになり、高額な費用となってしまいます。日本では、基本的に、科学的な効果が十分確かめられた治療法については、保険を使えるようにしていく方針となっています。

その意味で、自由診療となっている治療は、効果や副作用の点でまだ十分な検討ができていない治療ですから、費用の検討をする以前に安全性や有効性について十分確認することが必要です。

メラノーマの新薬の効果のメリット、デメリット

メラノーマの新しい治療薬として、近年、国内で以下の3つが承認されています。

2014年 抗PD-1抗体の「ニボルマブ(点滴薬、商品名:オプジーボ)」
2014年 BRAF阻害剤の「ベムラフェニフブ(内服薬、商品名:ゼルボラフ)」
2016年 MEK阻害剤の「トラメチニブ(内服薬、商品名:メキニスト)」

新しい3つの薬は、従来の治療薬より、高い効果の得られることが期待されています。従来の抗がん剤は、細胞毒性を利用して、癌細胞の増殖を抑える仕組みになっているため、ある程度は正常細胞にも毒性があり、結果として様々な副作用が現れていました。また、メラノーマに対しては、従来の抗がん剤治療は満足できる治療成績をあげることができなかったことがはっきりしています。

最近、「分子生物学」という分野で得られた知識を応用して、開発されてきたメラノーマの新しい治療薬は、癌細胞の異常増殖に必要な分子だけを抑えたり、体の免疫の力を高める仕組みに介入するという戦略ですから、正常細胞に与える影響が従来の抗がん剤より少ないという特徴があります。

しかし。まだ使用された症例の数が少ないため、思わぬ副作用が出てくる可能性もあります。新しい薬による治療は、メラノーマの治療経験豊富な医療施設で加療を受けることが望まれます。

なお新しい薬剤は、従来の薬剤よりも高額です。特に、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は1年間使用すると約3500万円にもなるということで、公的な仕組みの中で、医療費を負担している日本の医療財政上問題となるという議論が出てきています。

2016年時点で、この議論は国の財政の問題です。健康保険の治療で、適正な投与を受けると、「高額療養費制度」があって、月ごとの個人負担額の上限額が決められいますので、治療を受ける方自身の問題ではありません。

ただ、今後、通常1割から3割負担の自己負担額の割合を引き上げたり、高額療養費制度において、自己負担額の上限額を引きあげる議論が出てくるような影響は、考えられるでしょう。

メラノーマの予防方法

生まれつき20cm以上の長さを持つ大きなほくろがある場合は、そこからメラノーマが発生する危険性が高いため、予防的に早めに切除しておくことが勧められています。形成外科では、手術が難しいような大きなほくろでも、様々な工夫をして手術を行っていますので、小児の場合でもためらわずに相談してみることをお勧めします。

なおレーザーでの治療は、深部の病変を取り残して、そこからメラノーマが発生してしまう可能性があることを考慮すると、予防的治療としてはおすすめできないのが現状です。

また、頭部に生まれつきの無毛斑(毛の生えていない部分)があり、それが脂腺母斑(毛根近くの脂腺が増殖するタイプあざ)であった場合は、その部分に成人期以降に様々な種類の皮膚癌が発生しやすいとされています。無毛斑でかつ、脂腺母斑の場合、治療を兼ねて小児期に手術で切除しておくという考えがあります。

白人の場合、「UVB」と「UVA」の紫外線タイプ、両方に効果のある日焼け止めを塗っていると、メラノーマの発生が減ったという研究が出ています。日本人を対象にした研究ではないうえ、日本人では紫外線に当たらない部分に出てくるメラノーマの方が多いので、日本人において日焼けがメラノーマの発生率を高めているとは断言することはできません。しかし、過度な日焼けは、皮膚の老化を促すこと、「有棘細胞癌」という別のタイプの皮膚癌の発生の要因となることは確実ですから、過度な日焼けは避けておくのが良いと思われます。

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