ノイローゼ(神経症)の原因、症状、治療 精神病との違いは?甘えなの?自分でできる対処法とは?

  • 作成:2016/10/14

ノイローゼは、神経症とほぼ同じ意味で使われます。ノイローゼという言葉を聞いたことがない方は多くないかもしれませんが、さまざまな種類があります。原因、症状、知慮の概要を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

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この記事の目安時間は6分です

ノイローゼ(神経症)の原因とは?

目次

そもそもノイローゼと神経症は同じ?

「ノイローゼ」と「神経症」。2つの言葉が存在するのは、日本における西洋医学は、ドイツの医療を参考に発展してきたことが原因で、ドイツ語の「Neurose」をローマ字読みしたものが「ノイローゼ」です。

ですが、今の日本の医療は、アメリカの医療を手本にしていますので、「あることに悩んでいる状態」を指して「ノイローゼ」ということはありますが、育児が原因で起こった「育児ノイローゼ」以外は、病気の名前として「ノイローゼ」が使われることはなく、代わりに、英語の「Nourosis」を日本語に訳した「神経症」が病気の名前として使われています。

どちらも環境の変化や精神的なショックなどが原因となって心のバランスが崩れ、不安な気持ちを強く感じるようになった状態で、「ノイローゼ」も「神経症」も全く同じものです。

最近では、「神経症」という言葉も使われなくなってきており、不安感が主体ということで「不安障害」という言葉が使われるようになってきています。

ノイローゼ(神経症)の定義と意味 「精神病」との違いは?

不安が強く、イライラしたり、悲しくなったりと精神的に不安定になっている状態があり、加えて、体のどこにも異常がないのに、動悸や息苦しさ、めまい、手足のしびれ等の体の症状や人を避ける、家に閉じこもる、何度も確認するなどの行動の変化が発生している状態を、精神医学上「ノイローゼ(神経症)」と言います。

多くの方が、「心の病気=精神病」のイメージを持っていると思いますが、実は、それは間違いで、精神医学的には、精神病は、妄想や幻覚を伴う状態と定義されており、妄想や幻覚を特徴とする「統合失調症」を指します。ノイローゼ(神経症)は勿論、うつ病や躁うつ病、パーソナリティー障害など多くの心の病気は、精神病ではありません。

つまり、「ノイローゼ(神経症)」では、「精神病」と違い、「人が自分の悪口を言っている」「自分は監視されている」「窓の外に自分をじっと見つめている人がいる」「家や自分の体に何かついている」といったような妄想や幻覚はありません。

ただ、「ノイローゼ(神経症)」も、放置しておくと、不安が徐々に強くなり、不安から逃れるために、育児ノイローゼであれば育児を放棄して逃げ出したり、潔癖症であれば、何度も手を洗ったりするなど、不安を消す行動(「回避行動」と言います)を行うようになります。

こうなってくると、一時的に不安は消えるのですが、不安を感じるたびに不安を消す回避行動を繰り返すようになり、不安と不安を消す回避行動の悪循環に陥り、抜け出せなくなって、症状が悪化し、妄想や幻覚が現れる場合もあります。

*神経症や統合失調と区別し、うつ病や躁うつ病などは精神障害と言います。

ノイローゼ(神経症)の神経症の原因と種類の概要 「育児」「母乳が出ない」「仕事」も原因に?主な神経症の種類

ノイローゼ(神経症)の原因の多くは、仕事上の失敗、失恋、病気、母乳が出ない等のショックなでき事や育児、環境の変化、家庭内のトラブル、職場内のトラブルなどによる精神的ストレスです。

つまり、本人にとって精神的に悩む出来事があり、その結果、精神的なバランスが崩れ、特に不安感を強く感じるようになった状態が「ノイローゼ(神経症)」です。

あるでき事をきっかけに、ひとり悶々(もんもん)と悩んでしまう事で起こるノイローゼ(神経症)ですが、一口にノイローゼ(神経症)といっても、いろいろな種類があり、起こっている症状によって、それぞれ分類されています。

(1)パニック障害
突然、何の前ぶれもなく、動悸や息苦しさ、手足のまひに襲われ、「このまま死んでしまうのでは?」と思ってしまった強い不安と恐怖の経験が元になって、「またいつ、あのような恐ろしいことが起こるのだろうか?」「もし、起こったら、どうしよう?」という強い不安感、予期不安を常に抱くようになり、不安から外出を控えるなどの行動範囲を意図的に狭くする行動(回避行動)を起こしてしまっている状態です。

具体的な一例を紹介しますと、電車に乗っている最中に、突然、息苦しくなり、「このまま呼吸が止まり、死んでしまうのではないか?」と恐怖におびえ、救急車で病院に運ばれるが、あれだけ息苦しかったのに、いつの間にか、その息苦しさも治まり、病院での検査も異常ないようなことがあります。

病院で「異常がない」と言われても、心はスッキリせず、電車の中で経験したことが頭から離れず、「また、あのようなことが起こるのだろうか?」と不安と恐怖におびえる日々を過ごしている状態で、不安と恐怖から極力外出を控えてしまうこともあります。

(2)全般性不安障害
ある物やある事に対して不安と言うわけではなく、「何となく不安」という漠然とした不安感が常にあり、何をするにも、とにかく不安を感じてしまい、不安を振り払うことができないために、「しなければいけない」「このままではダメだ」と思っていても、一歩踏み出すことが出来ず、何もできなくなっている状態です。

具体的な一例を紹介しますと、仕事に行く時も、友人と食事などに出かける時も、何となく不安で、気がすすまず、仕事は、行かないわけにはいかないの、渋々出勤するが、仕事に集中できないなどの症状があります。友人との約束を、直前で断ることも、しばしばあります。

(3)強迫性障害
自分では「馬鹿げている」「そこまでする必要はない」と理解しているにもかかわらず、 自分を苦しめている考えやイメ-ジ(強迫観念)が頭から離れず、不安感や恐怖心を感じ、その不安感や恐怖心から逃れるために、手洗いや確認などの行動(回避行動)を繰り返し行ってしまう状態です。

具体的な一例を紹介しますと、ふと、窓のカギや玄関のカギの閉め忘れが気になってしまい、確認のために、帰宅して、窓のカギや玄関のカギの閉め忘れはなかったことを確認するが、出かけようとすると、なぜか、また気になってしまい、確認したにも関わらず、また確認してしまうようなことがあり、なかなか出かけることができないことがあります。

(4)社交不安障害(あがり症)
人前に出ると、極度に緊張し、顔が赤くなったり、声が出なくなったり、震えたりして、人前に出る事への不安感、恐怖心を感じてしまい、人前に出ることをなるべく避けようとする状態です。

具体的な一例を紹介しますと、子供のころから、人前で発表しようとすると声が震えてしまっていたような経験があり、大人になっても、会議などで意見を求められると、声が震え、上司や同僚にどう思われているのかが気になって仕方なく、会議となると、いつも不安で、落ち着かないようなことがあります。

(5)心気症
「死」への恐怖から、自分の体に異常なまでの関心があり、頭痛やめまいなど何らかの体の症状があると、すぐに「自分は、がんに違いない」など、死に直結するような重大な病気であると思い込んでしまい、死への不安・恐怖心から、何軒もの病院を転々と受診するいわゆる「ドクターショッピング」を行ってしまう状態です。

具体的な一例を紹介しますと以下のようなことがあります。ある日、突然、激しい頭痛に襲われ、病院を受診したものの、検査の結果、「特に異常はない」と医師から告げられるも、医師の言葉が何故か信用できなくなります。インターネットで頭痛について調べてみると、「脳腫瘍」という言葉を発見し、それ以降、「脳腫瘍では?」との思いが頭から離れず、他の病院を受診すしますが、そこでも、結果は、「異常なし」ということがあります。2つの病院を受診して異常なしだったのだから大丈夫と自分に言い聞かせるても、落ち着いたのは、一時だけで、頭痛が起こると、またすぐに、「やっぱり脳腫瘍?」「脳腫瘍だから、誰も本当の事を言ってくれないだけかも」と思ってしまいます。結果的に、あちこちの病院を次々に受診することになります。

(6)離人症
自分自身にとって耐えがたいでき事が起こったとき、自分に起こったことと受け止めてしまうと心が崩壊してしまうため、無意識的に、自分に起こったことではないと受け止めようとし、自分が自分でないような現実感のない状態を経験してしまう状態です。

離人症は、病気と言うよりも、自分の心が崩壊してしまうのを守るための反応(自己防御反応)と言われています。

具体的な一例を紹介しますと、今まで親しくしていた友人が、たまたま自分の陰口を言っているのを聞いてしまったとします。今まで仲良くし、信頼していただけに、ショックで、「本当は、あんな風に思っていたのかな?」と思うと悲しくて仕方なくなります。また、翌日、朝起きると、ぼんやりした感覚があり、食事をしても、テレビを見ても、夢の中にいるような感じになるようなことが考えられます。

(7)恐怖症
特定のものや状況に対して、激しい不安と恐怖心を持っている状態です。例えば、高いところが怖い「高所恐怖症」や、先端が尖ったものが怖い「先端恐怖症」等があります。

(8)育児ノイローゼ
育児をしっかりこなそうと頑張りすぎることで、周囲に協力を求めることができず、上手くいかない、思うようにならない育児について「どうしたらよいのか?」「自分は子供を育てていくことができるのだろうか?」と1人で悩みこんでしまい、結果、心のバランスが崩れてしまい、憂鬱な気分に陥ってしまう状態です。

(9)ヒステリー神経症
「どうしたらいいのか?」「あのとき、ああしておけば・・・。」など、心の中の葛藤が原因で、意識を失ったり、手足などが動かなくなったり、声が出なくなったりする状態です。

(10)抑うつ神経症
うつ病のように、気分が憂鬱で、スッキリしない状態が数か月に、渡って続きます。ただし、うつ病のように、「自分はダメだ」「自分は迷惑な存在だ」といった自分を責める自責感を感じることは少ないのが特徴です。

ノイローゼ(神経症)になりやすい人、なりやすい性格がある?

ノイローゼ(神経症)になってしまうようなでき事を経験しても、ノイローゼ(神経症)になる人とならない人がいます。

ノイローゼ(神経症)になる人とならない人、その違いは、もともとの性格や考え方の違いと言われています。

つまり、ノイローゼ(神経症)になりやすい性格・考え方を持つ人が、ノイローゼ(神経症)になってしまうような精神的なショックを受けたり、ストレスを感じるでき事(原因)を経験した時、ノイローゼ(神経症)状態におちいってしまいます。

ノイローゼ(神経症)になりやすい人には以下のような特徴があります。

1.曲がったことが大嫌いの几帳面で、神経質な人
2.何事にも敏感で、傷つきやすい人
3.すぐに気になったりして、心配してしまう心配性の人
4.なんでも100%を求める完璧主義の人
5.自分に自信のない人

「ノイローゼ(神経症)は甘え」というのは本当?

ノイローゼ(神経症)に限らず、心の病気は、「甘えだ」と思われがちですが、ノイローゼ(神経症)になると、頭では、「頑張らないといけない」「怖がってばかりいたり、逃げてばかりいても仕方がない」と思っていても、体が思うように動きません。

頭の中では、「ノルアドレナリン」という興奮や不安を引き起こす神経伝達物質(脳からの指令を脳全体や体に伝える連絡物質)がたくさん作られ、逆に、体をリラックスさせ、不安を和らげる「セロトニン」という神経伝達物質が減ってしまっているので、常に緊張と不安を感じながら、毎日を過ごしている状態がノイローゼ(神経症)です

つまり、頭の中で神経伝達物質のバランスが崩れ、思うように体が動かず、頭と体が分離している状態がノイローゼ(神経症)であり、しようとする意思がないだけで、しようと思えばできる「甘え」とは全く違います。

ノイローゼ(神経症)の代表的な症状

ノイローゼ(神経症)の症状は、強い不安感が根底にあり、体の症状が発生します。具体的には、以下のようなものがあります。

1:強い不安感
2:夜、眠れない
3:疲れやすい
4:のどが詰まる感じがする
5:船に乗っているようなフワフワのめまいがする
6:ソワソワしたり、イライラしたりして、気持ちが落ち着かない
7:物音がうるさく感じる
8:下痢・吐き気など胃腸の調子が悪い
9:肩こりや頭痛など体の様々な不調が起こる
10:夕方以降に、特に、調子が悪くなる

ノイローゼ(神経症)を疑うセルフチェック項目の概要

ノイローゼ(神経症)かどうかを判定する目安になるセルフチェックテストは、何種類かありますが、どのテストも基本的に下の4つの項目で構成されていて、それぞれの質問に対して「はい」「いいえ」で答えることで、「ノイローゼ(神経症)になりやすい傾向を持っているかどうか」「ノイローゼ(神経症)かどうか?」をチェックすることできるテストです。

1:ノイローゼになりやすい性格かどうかのチェック
  例えば、「人目が気になる」「何事にも完璧を求めてしまう」「些細な事でも気になってしまう」「心配性である」「繊細で、傷つきやすい」

2:体の不調のチェック
  例えば、「息苦しい感じがすることがある」「胃腸の調子が悪い」「めまいがする」      「のどが詰まった感じがする」「胸が苦しくなることがある」「手足が冷える」

3:精神的な不調のチェック
  例えば、「不安を感じる」「気分が憂鬱」「イライラして落ち着かない」「将来に希望が持てない」「不満を感じことが多い」「疲れた気分の事が多い」

4:睡眠状態のチェック
  例えば、「なかなか寝付けない」「寝ても疲れが取れない」「嫌な夢ばかり見る」      「眠っても、すぐに目が覚めてしまう」「寝ているのに、眠った気がしない」

参考までに、以下のサイトでノイローゼ(神経症)のセルフチェックを受けることができます。

http://www.nenshosha.co.jp/FNI.html

ノイローゼ(神経症)の診断概要

当然ですが、常に緊張している状態で、体の力が抜けない、落ち着かない、物音がうるさく感じる、疲れやすい、夜眠れないといった「ノイローゼ(神経症)」状態に陥ると発生する症状があることが前提条件となります。さらに、自分でコントロールできないほどの強い不安が1カ月以上続き、自分自身が苦痛を感じているのは勿論、外出できないとか電車などの乗り物に乗ることができないなどの、日常生活に支障が出ている状態があると「ノイローゼ(神経症)」と診断されます。

緊張感が取れない、体の力が抜けない、落ち着かない、物音がうるさく感じる、疲れやすい、夜眠れないなどの症状だけで、生活上の支障がない場合は、放置することで、ノイローゼ(神経症)になってしまう状態で、「要注意状態」と診断されます。

ノイローゼ(神経症)は自力で克服可能?難しい?

「ノイローゼ(神経症)」の多くは、ノイローゼ(神経症)を引き起こしている原因を取り除くことで症状が改善する場合が多いです。そのため、原因を克服することがノイローゼを克服する、つまり治す方法と言われており、事実、ノイローゼ(神経症)かな?と思って、病院を受診したとしても、ただ、医師から処方された薬を飲むだけでは、ノイローゼ(神経症)を克服、治すことはできません。結果として、何年も、だらだらと薬を飲み続けるようなことが起きています。

つまり、ノイローゼを克服するには、「自分で克服しよう。治そう」という気持ちが必要不可欠です。「自分で克服しよう。治そう」という気持ちがあれば、自力での克服も可能です。

とはいっても、ノイローゼ(神経症)を自力で克服しようとする場合、「どうすればよいのか」「どう克服していけばよいのか」といったことが、分からないのでしょう。実際には、克服方法が書かれている書籍を読んで、克服方法を学び、書籍に書いてあった方法を自分のペースで進め、ノイローゼを引き起こしている原因や症状を引き起こしている不安の元を取り除いていけばよいと考えられます。

病院を受診して、薬を飲むほうが簡単ですし自力での克服は、難しい部分もあります。ただ、自力で克服した人の方が再発しにくいのも現実です。

自力での克服が不安な場合は、病院を受診し、医師やカウンセラーから自宅でできるノイローゼ(神経症)克服のアドバイスをもらいながら、ノイローゼ(神経症)を克服していくこともできます。

ノイローゼ(神経症)の薬物治療 向精神薬編

不安が非常に強く、日常生活への支障も大きい場合は、薬を使ってノイローゼ(神経症)の治療を行います。

ノイローゼ(神経症)で使う薬は、向精神病薬(安定剤)と抗うつ薬です。

具体的には、以下のようなものがあります。

(1)向精神病薬(安定剤)

・エチゾラム(先発品商品名:デパス)
不安を和らげる効果、筋肉をほぐす効果が高く、即効性もあり、ノイローゼ(神経症)の治療薬として頻繁に使われます。ただし、鎮静効果が高いため、眠くなりやすく、酔い止めや風邪薬で眠くなる人には向きません。

・ロラゼパム(先発品商品名:ワイパックス)
 不安を和らげる効果が向精神病薬の中で最も高く、即効性もあり、鎮静効果も少ないため使いやすいです。ただ、筋肉をほぐす効果が、ほとんどないため緊張が強い人には向きません。

・ブロマゼパム(先発品商品名:レキソタン)
  不安を和らげる効果も高く、筋肉をほぐす効果もあり、即効性もあるうえに、「エチゾラム」ほど強い鎮静作用はありません。「エチゾラム」で眠くなる方でも使うことができる薬です。

・アルプラゾラム(先発品商品名:コンスタン、ソラナックス)
不安を和らげる効果や筋肉をほぐす効果は、中程度であるが、パニック障害特有の突然に起こる呼吸困難感や激しい動機などのパニック発作と呼ばれる症状を抑える効果が高い薬です。そのため、主に、パニック障害の治療薬として使われます。

ノイローゼ(神経症)の薬物治療 抗うつ剤編

(2)抗うつ剤

ノイローゼ(神経症)の場合、脳の中の「セロトニン」という神経伝達物質が減っていることが多いので、脳内のセロトニンの量を増やす効果のある抗うつ剤(SSRI)が向精神病薬(安定剤)とともに使われます。

・パロキセチン(先発品商品名:パキシル)
 かなり強いセロトニン増加作用があり、症状がひどいときには有効な薬ですが、症状が改善し、薬を止める時に、頭痛や吐き気などの減薬に伴う症状が起こりやすい薬です。

・フルボキサミン(先発品商品名:ルボックス・デプロメール) パキシルほど強いセロトニン増加作用がないため、薬を止める時の減薬症状が起こり にくいのが特徴です。

ノイローゼ(神経症)の薬の使い方は?

向精神薬(安定剤)も抗うつ剤も、基本的には、1カ月から3カ月間連続して服用します。

不安が和らぎ、今まで通りの日常生活が送れるようになってきたら、ノイローゼ(神経症)のぶり返しや薬を止めたことで起こる症状(減薬症状)に注意しながら、薬を徐々に減らしていきます。

薬ですので、人によっては、副作用が出て、途中で薬の服用を中止しなければいけないこともありますし、薬を飲んだからといって、必ず、ノイローゼが治るということもありません。とはいえ、不安が非常に強い場合は、自力で克服しようにも、不安が強すぎて克服の一歩を踏み出せませんので、薬の力を借りて、まずは、不安を和らげるのが一般的なノイローゼ(神経症)の治療方法です。

ノイローゼ(神経症)の薬物治療(向精神薬)の概要 漢方薬を使うこともある?

不安が強く、薬の服用が必要な状態であるのに、薬を服用することへの不安感があり、 どうしても薬が怖くて飲めない場合は、ノイローゼの治療で通常使う向精神病薬(安定剤)や抗うつ薬ではなく、「薬」という強い認識を持つことの少なく、飲むことにあまり抵抗感のない漢方薬を使います。

ノイローゼ(神経症)で、よく使われる漢方薬は、不安を和らげる効果と自律神経のバランスを整える作用を持った漢方薬です。

・加味逍遥散(カミショウヨウサン)
体力がある程度あり、不安に加えて、イライラしやすい症状がある時に使う漢方薬です。

・桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)
体力があまりなく、不安に加えて、疲れやすい、眠れない、動悸がするなどの症状 がある時に使う漢方薬です。

・女神散(ニョシンサン)
体力がある程度あり、不安に加えて、眠れない、頭痛がする、めまいするなど、体の症状が強い場合に使う漢方薬です。

・半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)
体力があまりなく、不安に加えて、喉が詰まった感じがする、気分が憂鬱といった症状がある時に使う漢方薬です。

・抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンカンカチンピハンゲ)
体力があまりなく、不安に加えて、イライラしやすい、眠れない、落ち着かないなどの症状がある時に使う漢方薬です。

漢方薬は、薬と違い、どれも、ゆっくりと徐々に効いてきます。そのため、漢方薬は、普通の西洋の薬よりも長め、大体6か月程度、服用します。

ノイローゼ(神経症)の薬物以外の治療の概要

ノイローゼ(神経症)の薬を使わない治療法として、カウンセリングによる治療法があります。

ノイローゼ(神経症)で行うカウンセリングは、苦痛や生活の支障を引き起こしている不安を取り除くことを目的としたもので、「自分は母親失格」「外に出れば、必ず、また息苦しくなって救急車で運ばれてしまう」などの、間違って刷り込まれてしまった考えを修正していくカウンセリング(認知療法)があります。

他にも、不安から逃れるために行っている外出を控える、手洗い、確認などの行動を制限して、「不安から逃れる行動を行わなくても大丈夫」という自信をつけさせていくカウンセリング(行動療法)を主に行います。

例えば、人の視線が怖くて、外に出ることができない視線恐怖症であるならば、最初は、人の少ない朝とか夜の時間帯に家の玄関から出ることからはじめます。次に、近所を散歩するとか、車で一周してくるなど、徐々に、行動範囲を広げていきながら、人の多い時間帯にも行動時間を広げていき、「人がいても大丈夫、外出できる」という自信をつけさせていきます。こうすることで「人が怖い」という気持ちがなくなり、外に出る事が出来るようになり、同時に、症状も改善していきます。

ノイローゼ(神経症)の自分でできる対処方法の概要

ノイローゼ(神経症)で起こる症状は、すべて不安から発生していますので、不安を和らげることが、ノイローゼ(神経症)の症状を和らげることにつながります。

ですので、不安を和らげることを日々の生活の中で取り入れていくことが、ノイローゼにならないためにも、ノイローゼを悪化させないためにも大切です。

具体的には、以下のようなものがあります。

・気持ち本位で活動しないようにする
「気のりがしないから」「気分が良くなったら」といって、行動せずに過ごすと、かえって、何もできないことに不安を感じて逆効果です。気持ちはそのまま、多少の不安があっても、行動してみることで、「不安があっても、行動できた」という考え方を生み出し、ノイローゼ(神経症)を克服していくことにつながっていきます。

・タッピング法
嫌な経験を思い出し、不安を感じたときは、特定の部位を決められた順番に軽くトントンと叩いていく方法(タッピング法)が有効です。

目の下や、鼻の下、あごなどの7カ所のポイントを、トントンと軽く順番に叩いていてだけですので、やり方さえ覚えてしまえば、誰でも手軽に行うことができますし、かつ、即時に不安を和らげることができる方法です。

・筋弛緩法
不安や緊張からこわばってしまい固くなった筋肉をほぐす方法が「筋弛緩法」です。 緊張感を強く感じる場合に有効で、手、足、体全体と順番にグッと力を入れては、力を抜くという作業を繰り返し、不安と緊張で固まってしまった筋肉をほぐし、リラックスさせます。誰でも簡単に行うことができますし、また、緊張がほぐれていくことを実感しやすい方法です。

ノイローゼ(神経症)は原因を取り除かないとなおらない?

ノイローゼ(神経症)になった原因が必ずあり、原因を取り除かないとノイローゼ(神経症)は治らないと思っている方が多いと思いますが、確かに、「特定の人とのトラブルが原因でノイローゼ(神経症)になった」とか「職場環境が原因でノイローゼ(神経症)になった」「1人で育児をこなしノイローゼ(神経症)になった」まど、ノイローゼ(神経症)になった原因は、必ずあります。

そして、職場の配置換えや転職、夫婦や両親に育児を手伝ってもらう等、ノイローゼ(神経症)になった原因を取り除くことで、ノイローゼ(神経症)は改善しやすくなりますから、ノイローゼ(神経症)になった原因を取り除くことができるのであれば、それが第一優先です。

しかし、ほとんどの場合、たとえ、原因がわかっていても、そう簡単に原因を取り除くことができませんし、原因がよくわからない場合もあります。原因が取り除けない場合は、「ノイローゼ(神経症)は治らないのか?」というと、そうではありません。

ノイローゼ(神経症)になった原因を取り除くことができなくても、ノイローゼ(神経症)の症状は「不安」から起こっていますので、症状が起こっている元である「不安」を和らげることで、ノイローゼを治すことができます。

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