てんかんの発作以外の症状、合併症、後遺症 精神症状も?子供と大人で合併症が違う?

  • 作成:2016/08/09

「てんかん」と聞くと発作症状を思い浮かべる方が多いと思いますが、発作以外にも精神症状が出ることがあります。てんかんの合併症や後遺症を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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てんかんは発作以外にどんな症状がある?

目次


てんかんには、大きくわけて、原因で2種類、脳の異常の起きる部分で2種類に分けられ、それぞれの掛け合わせで、4種類にわかれます。記事を読むうえで、注意をお願いいたします。詳しくは、こちらで解説しています。

症候性全般てんかん→病気が原因で、異常の発生部位が脳全体のもの
症候性部分てんかん→病気が原因で、異常の発生部位が脳の一部のもの
特発性全般てんかん→原因が不明で、異常の発生部位が脳全体のもの
特発性部分てんかん→原因が不明で、異常の発生部位が脳の一部のもの

てんかんには、発作以外の症状がある?精神症状もでる?

てんかん自体は、精神疾患ではありませんが、経過中に抑うつ、不安、易刺激性(いしげきせい;ちょっとした事で不機嫌になったり、怒りっぽくなることです)などの感情の障害、幻覚や妄想状態、精神病状態(統合失調症と躁うつ病の2つの状態が主)など多彩な精神症状を合併することがよくあります。

てんかんの患者さんに精神症状を引き起こす要因としては、以下のようなものが考えられています。

(1)てんかんの原因となる脳の器質的障害(きしつてきしょうがい;物質的、物理的に特定できる病変によって生じる障害です)
(2)てんかん発作そのもの
(3)発作を繰り返すてんかんの過程
(4)抗てんかん薬の影響、
(5)てんかんを患うことにより生じる、さまざまな心理的および社会的ストレス

しかし、実際に精神症状が現れるのは単独の要因によるものではなく、複数の要因が複雑にからんでいることが多いようです。

発作と精神症状以外は?

てんかんの発作以外の症状では、精神症状(障害)の他にも、いくつかあります。主に症候性てんかん(病気が原因のてんかん)に多くみられますが、障害されている脳の部位によって、運動の障害、知的障害、言語障害をはじめとして、認知機能の障害などがあります。高齢者に起き、難治てんかんとしても知られる「側頭葉てんかん」の場合、と他のてんかんに見られない、さまざまな随伴症状(伴う症状)がみとめられます。特徴的なものとして、「記憶障害」、「性格変化」、「自律神経症状」などが挙げられます。

(1)記憶障害;
内側側頭葉てんかんの問題の中心は「海馬(かいば)」にあります。海馬は記憶の出し入れに関係した脳の領域です。側頭葉てんかんにおいて障害されやすいの、は主に短期記憶で、2、3日前のことや、数時間前のでき事を忘れやすい傾向がみられます。

(2)性格変化;
海馬は、「辺縁系(へんえんけい)」といわれる脳の原始的な部分(ヒトも動物も同様の発達をしている部分)に属しています。海馬は、怒りや不安などの原始的な感情とも密接に関係していることが知られています。穏やかな時と攻撃的になる時のむらのある性格の変化は、てんかんの経過期間とともに、少しずつ表れてくると考えられています。

(3)自律神経症状;
悪心(おしん、吐き気)・おう吐、発汗、立毛(りつもう;鳥肌)、熱感、冷感、腹鳴(ふくめい;腸が動くことで、お腹が鳴ることです)、心悸亢進(しんきこうしん;心臓の鼓動が増加し、前胸部に強く感じることです)、胸部圧迫感、頭重感(とうじゅうかん、頭が重い感じ)などがあります。

子供のてんかんには合併症がある?

「特発性てんかん」では部分てんかん、全般てんかんのいずれにせよ、小児のてんかんの合併症として、運動の障害(手足のマヒなど)や知的障害は一般的に認められません。

一方、「症候性(潜因性、病気が原因のもの)全般てんかん」は、「特発性全般てんかん」よりも発病年齢が早く、新生児期または乳児期に発病することが多く、発作の回数なども多いことが知られています。さらに、症候性全般てんかんでは、発病する前から重度の知的障害や、さまざまな神経の症状がみとめられ、重症で予後の悪いものも多いです。病名としては、「ウエスト症候群(点頭てんかん、乳児スパスムとも呼ばれます)」、「レノックス・ガストー症候群」、「ミオクロニー失立発作てんかん」、「ミオクロニー欠神てんかん」、「早期ミオクロニー脳症(EME)」、「サプレッションバーストを伴う早期乳児てんかん脳症」などで、重度の脳障害(脳症)が主体になっている難治性てんかんです。症候性部分てんかんは、お母さんのお腹の中にいる間、または分娩時の何らかの原因による大脳のキズ、生れつきの脳の奇形(先天性奇形)が原因であることが多いとされますが、発達障害や知的障害が、程度に差はありますが合併する傾向があります。

大人のてんかんには合併症がある?

成人および高齢者については、症候性てんかんの原因となっている病気である「脳卒中(脳梗塞や脳出血)」や「脳腫瘍」のような脳の病気、またはアルツハイマー病のような神経変性疾患が合併していることが多くなります。ただ、この場合、てんかんの原因となる病気が先にあり、てんかんが後から合併したと考えた方がよいかもしれません。

また、さまざまな精神機能の障害を合併することが知られていますが、言語障害、記憶障害、認知機能など「高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)」は、てんかんの発作の症状としても確認できるもので、単純に「合併症」とは言えないかもしれません。

一方、てんかんの患者さんの多くは、心理的な負担または社会生活で問題を抱えており、感情も不安定になりやすく、うつ状態や不安障害を合併しやすいとされています。また、てんかんの経過中に、発作と関連せずに、急性の感情症状と幻覚妄想症状を伴う精神病性エピソードが生じることがあり、精神病性障害とよばれています。

てんかんには後遺症がある?

てんかんに伴う精神・神経症状は、発作に関連して出ますが、発作後にも症状が残っていることが多くあります。また、発作とは直接関連しないで発症したり、あるいは非発作時(発作消失後)にも障害として、固定してしまう可能性もあります。後遺症として可能性のあるものに、次のようなものが挙げられます。

・記憶力および記名力障害
・言語障害
・認知機能障害
・自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)など発達障害
・知的障害
・人格変化
・うつ病
・幻覚・妄想を伴う精神症状または精神病

後遺症として、とくに可能性が高いものの1つに知的障害があります。発作が抑制されていない成人の各種てんかんの患者さんに対して、10年以上の間隔で知能検査(「ウェクスラー成人知能検査」)を繰り返し行った英国のデータでは、IQ(知能指数)は平均で90.7から83.1に低下したということです。知能低下に最も強く関連していたのは、全般強直間代発作(大発作)の頻度であるという結果を報告しています。


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てんかんの発作以外の症状についてご紹介しました。自身や近いが「てんかんかもしれない」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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