てんかんの治療薬の種類、効果、副作用 妊婦は奇形が起きやすい?確率は?デパケンとは?

  • 作成:2016/08/10

てんかんの治療につかう薬は多くの種類がありますが、働き方についていえば、「興奮を抑える薬」「興奮を抑制する機能を強める薬」「新薬」に大別されます。また、てんかんの薬は、胎児の奇形を発生させる可能性があり、妊娠中の治療には注意が必要です。てんかんの薬について、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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てんかん治療薬の副作用とは?

目次


てんかんには、大きくわけて、原因で2種類、脳の異常の起きる部分で2種類に分けられ、それぞれの掛け合わせで、4種類にわかれます。記事を読むうえで、注意をお願いいたします。詳しくは、こちらで解説しています。

症候性全般てんかん→病気が原因で、異常の発生部位が脳全体のもの
症候性部分てんかん→病気が原因で、異常の発生部位が脳の一部のもの
特発性全般てんかん→原因が不明で、異常の発生部位が脳全体のもの
特発性部分てんかん→原因が不明で、異常の発生部位が脳の一部のもの

てんかんの治療薬の種類 デパケンとは?

てんかんの治療薬である「抗てんかん薬」は、てんかん発作を起こさないように、大脳の過剰な電気的興奮を抑える働きをもっていて、発作を起こす可能性のある間は飲み続けることになります。てんかんでは、脳の神経細胞の過剰な電気的興奮と、その興奮が広がることで起きます。抗てんかん薬の種類は現在、以下の3つがあります。

(1)「興奮系」を抑えるタイプ
(2)興奮の広がりを抑える「抑制系」の働きを強めるタイプ
(3)これまでとは違った働きをする新しい抗てんかん薬

以下で概要を説明します。

(1)「興奮系」を抑える治療薬;神経細胞は、ナトリウムイオンやカルシウムイオンが細胞の膜を通過して、細胞内に入ることで興奮します。イオンの動きをブロックすることにより、過剰な興奮が起こらないようにしています。

(a) フェニトイン;てんかん重積状態の第2選択薬です。商品名:アレビアチン
(b) カルバマゼピン;部分発作の第1選択薬です。商品名:テグレトール
(c) バルプロ酸;全般発作に対する第1選択薬です。商品名:“デパケン”
(d) その他;ゾニサミド、エトスクシミド、トピラマート、ラモトリギンなどがあります。

(2)「抑制系」の働きを強める治療薬;脳の中にはGABA(γ-amino butylic acid;ガンマアミノブチル酸、略称ギャバ)という興奮を抑える働きをもつ物質があります。抑制系を強める抗てんかん薬はGABAの働きを強め、てんかんの症状を抑えます。

(a) ジアゼパム;てんかん重積状態の第1選択薬です。ベンゾジアゼピン系の1つ。
(b) ガバペンチン;部分発作が出る難治てんかんに有効とされます。商品名:ガバペン
(c) フェノバルビタール;最も古くから使われてきた抗てんかん薬です。バルビタール系の1つ。
(d) その他;クロナゼパム、クロバザムなどがあります。

(3)新しい作用機序をもつ治療薬;今までとは違った機序で過剰興奮を抑え、抑制系を強めます。

レベチラセタム;2015年2月に単剤療法(単独の薬で治療すること)の承認を取得し、部分発作を有する4歳以上のすべての患者さんへの使用が可能となっています。商品名:イーケプラ

現在、日本には多くの種類の抗てんかん薬がありますが、それぞれの薬が、どのような発作に効果があるかわかっていますので、それぞれの発作型を考慮し、てんかんの患者さんに合った適切な抗てんかん薬が選ばれることになります。

てんかんの治療薬の副作用

てんかんの治療は、しばしば小児から老年期まで長期間にわたるため、抗てんかん薬の選択に際して、副作用の種類や強さが大きな影響を及ぼすことになります。また、小児における学習や認知機能に及ぼす影響は、患者さんのQOL(生活の質)向上のためにも十分な配慮が必要とされています。一般的に、単剤治療(単一の薬だけによる治療)に比べて、多剤併用(2種類以上の薬を使用すること)の弊害(へいがい)が大きいことが知られています。

抗てんかん薬による副作用には、「用量依存性の副作用」、「アレルギーが関与する薬に対する特異体質の反応」、「長期服用に伴う副作用」の3つに大きく分けられます。

(1)用量依存性の副作用;
抗てんかん薬は、脳のてんかん異常放電を抑えるために投与されますが、その他の神経系も抑制されることによる副作用です。中枢神経症状(眼振、ものがだぶってみえる、めまい、頭痛、眠気、平衡障害、運動失調)や消化器症状(食思不振、吐き気、嘔吐)が一般的にみとめられます。さらに、投与量が多くなり、薬の血中の濃度が一定レベルを越えてしまうと、集中困難、傾眠、錯乱、せん妄、幻覚妄想症状といった中毒症状がみられます。

(2)アレルギーが関与する薬に対する特異体質の反応(使用量と関係なく出る副作用);
アレルギーが関与する副作用では、比較的よくみられる皮疹(ひしん、発疹)および汎血球減少(はんけっきゅうげんしょう;血球成分とくに白血球の減少)が代表的です。まれなものですが、重篤(じゅうとく)な副作用として、「Stevens-Johnson症候群(SJS)」「中毒性表皮壊死症(TEN)」「薬剤性過敏性症候群(DIHS)」といった症状が出ることがあります。

(3)長期服用に伴う慢性的な副作用;
多毛、歯肉増殖、体重の増加(または減少)、小脳の萎縮(いしゅく)がよく知られています。骨代謝が影響をうけ、骨軟化症(骨が軟らかくなる病気)や骨粗鬆症(骨がもろくなる病気)のリスクが高まるといわれています。

妊婦はてんかんの薬に注意が必要?

てんかん治療の原則は、抗てんかん薬の長期服用であるので、妊娠中も中止できないことが多く、抗てんかん薬による生まれてくる子供が奇形になることは、大きな問題となります。

(1)奇形の頻度;
妊娠第1期(妊娠2カ月から4カ月)に抗てんかん薬を飲んでいた場合、生まれてくる子供の平均奇形発現率は、一般に比べて2倍から3倍高い(一般の2%から5%に対して4%から10%の発現率です)と報告されています。

(2)奇形の種類;
一般人口にみられる奇形と同じようで、口唇裂(こうしんれつ、上唇が割れた状態)、口蓋裂(こうがいれつ、口と鼻がつながった状態)、心奇形(心臓の奇形)が高率となっています。

(3)奇形になる原因;
抗てんかん薬の服用のみが原因にではないといわれています。他の主要な危険因子としては、「てんかんの遺伝素因の存在」、「発作型(部分発作の方が危険性が高いといわれます)」、「妊娠中の発作出現」などがあげられています。

(4)抗てんかん薬の奇形発現性;
動物実験では、すべての抗てんかん薬に奇形発現性があることが指摘されていますが、日本において市販された抗てんかん薬の中で、人体に対する奇形発現性が証明されている薬物はトリメタディオンのみとされています。奇形発現性の強さは、以下の通りとされています。
・トリメタディオン>フェニトイン=バルプロ酸>カルバマゼピン=フェノバルビタール

(5)危険性の増加要因;
胎児の奇形を招く、もっとも重要な要因は、複数の抗てんかん薬による治療とされています。併用する薬剤数の増加とともに、奇形発現率は直線的に上昇し、特に4剤以上の使用では危険性が増大することが知られています。てんかんをもつ女性の172回の出産において、奇形発現率は全体では14.0%、単剤治療(31例)では6.5%、併用治療(141例)では15.6%であったというデータがあります。抗てんかん薬の併用治療による薬物間の相互作用も危険性を増加させる要因となることがわかっていて、「妊娠中の投薬は、発作を抑制できる最少数、最低量の使用を目指す必要があり、単剤での治療が望ましい」とされています。


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てんかん治療薬についてご紹介しました。自身や近いが「てんかんかもしれない」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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