てんかんの定義と種類 「部分」「全般」「特発性」「症候性」の意味は?

  • 作成:2016/08/01

「てんかん」という言葉を聞いたことがない人は少ないと思いますが、一口に「てんかん」といっても、脳の異常が起きる部位や、てんかん症状の原因によって、種類がわかれます。てんかんの定義も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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てんかんにはどんな種類がある?

てんかんとはどんな病気?定義

てんかんという言葉を聞いたことがある人は、少なくないかもしれません。 “てんかん”とは、「慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰(かじょう)に興奮するために、脳の症状(てんかん発作)が反復性(少なくとも2回以上)に起こるもので、発作は突然に起こり、ふつうとは異なる身体症状や意識、運動および感覚の変化が生じるもの」と定義されています。

乳幼児から高齢者まで、どの年齢でも発病する可能性があり、原因や症状は人によってもさまざまなで、いろいろな病気を含んでいるものをまとめた総称名であって、実際に、“てんかん”という1つの病気があるわけではありません。脳腫瘍(のうしゅよう)、頭部外傷(とうぶがいしょう)、脳卒中(のうそっちゅう)、アルツハイマー病など原因が明らかなものは「症候性(しょうこうせい)てんかん」とよばれ、原因が不明なものは「特発性(とっぱつせい)てんかん」といわれています。また、一般的に治療は抗てんかん薬によりますが、発作を抑えることが難しいものに対しては、「難治(なんち)てんかん」という言い方が使われます。

ふだん脳の神経細胞は、規則正しいリズムで互いに調和を保ちながら電気的に活動をしています。「てんかん発作」は、脳の一部の神経細胞が、突然、過剰に興奮する(異常な電気活動をひき起こす)ことにより生じます。激しい電気的な乱れ(異常な電気活動)に、脳のどの範囲が巻き込まれるかにより、さまざな「発作の症状」を示すことになります。しかし、症状は基本的に一過性(いっかせい;一時的ということ)で、「てんかん発作」の終了後は、元通りの状態に回復することが特徴とされています。発作が明らかな「けいれん」であれば、てんかんの可能性は高くなりますが、脳波を中心とした種々の検査が、てんかんの診断の確定(「てんかんで間違いない」ということ)には必要になります。

てんかんの種類(分類の概要)

てんかんの発作は、大脳の皮質(ひしつ;大脳の表面に近いところにある神経細胞の本体が集まる層)の一部だけに起こる「部分発作」と、左右両側の大脳半球(はんきゅう)全体から同時に起こる「全般(ぜんぱん)発作」の大きく2つに分けられます。部分発作は、脳の一部の場所に関連しているということから、「部分」という言葉のかわりに、「局在関連(きょくざいかんれん)」、「焦点(しょうてん)」、「局所(きょくしょ)」などという言葉使われることもあります。

てんかんは2つの発作の型と、原因からの分類である「特発性(原因不明)」、「症候性(原因が病気)」の2つの組み合わせから、大きく4つの種類(類型分類)に分けられています。例えば「特発性局在関連(部分)てんかんおよび症候群」、「症候性全般てんかんおよび症候群」のような言い方がされます。「てんかん」は、さまざまな病気をまとめた総称名で、「原因のわかっている病気」だけでなく「同じような症状や所見を示すグループとしての症候群(症状の総称)」などが含まれているために、「てんかんおよび症候群」という表現が使われています。

(1)「局在関連(部分)てんかんおよび症候群」
(A) 特発性;小児によくみられます。年齢に関係して発病する、比較的症状の経過のよい良性てんかんです。「小児良性ローランドてんかん」「良性後頭葉てんかん」などの例があります。
(B) 症候性;小児の難病でもある海馬硬化(かいばこうか)を伴う「内側側頭葉てんかん<側頭葉の内側にある「海馬」という組織に異常がみられるものなっています>」が代表例です。

(2)「全般てんかんおよび症候群」
(A) 特発性;年齢に関係して発病します。25歳以上での発症は少ないとされています。代表例として、「若年ミオクロニーてんかん(JME)」などがあります。
(B) 症候性または潜因性(せんいんせい);発病年齢が早く、新生児期あるいは乳児期に発症することが多いのが特徴とされます。代表例として「レノックス症候群」があります。「潜因性」とは、病気が原因と推定されているものの、特定できない状態です。

上記に分類できないこともあります。

(3)「未決定てんかんおよび症候群」 「部分か全般か決定できないもの」と、「部分、全般の両者の特徴を同時に有しているもの」が分類されています。


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てんかんの定義や種類についてご紹介しました。自身や近いが「てんかんかもしれない」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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