てんかん発作の疑問 睡眠中も起きる?大人と子供で違う?嘔吐、めまい、眠気、頭痛と関係している?

  • 作成:2016/08/03

睡眠中の「てんかん発作」と思われる発作については、別の病気の可能性があります。また、原因が違う傾向があるため、大人と子供でのてんかん発作の特徴には、異なる部分があります。嘔吐やめまい、眠気、頭痛との関係を含めて、医師監修記事でわかりやすく解説します。

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てんかん発作は睡眠中も起きる?
てんかん発作と嘔吐、めまい、眠気、頭痛の関係
てんかん発作は睡眠中も起きる?
てんかん発作に大人と子供、赤ちゃんに違いがある?

てんかんには、大きくわけて、原因で2種類、脳の異常の起きる部分で2種類に分けられ、それぞれの掛け合わせで、4種類にわかれます。記事を読むうえで、注意をお願いいたします。詳しくは、こちらで解説しています。

症候性全般てんかん→病気が原因で、異常の発生部位が脳全体のもの
症候性部分てんかん→病気が原因で、異常の発生部位が脳の一部のもの
特発性全般てんかん→原因が不明で、異常の発生部位が脳全体のもの
特発性部分てんかん→原因が不明で、異常の発生部位が脳の一部のもの

てんかん発作と嘔吐、めまい、眠気、頭痛の関係

抗てんかん薬による副作用の中で最も多いものに、「用量依存性(ようりょういぞんせい)」というものがあります。「用量依存性」とは、薬の投与量が増えれば発作を抑える効果も上がる一方、副作用も比例して出てくることです。抗てんかん薬は、脳のてんかん異常放電を抑えるために投与されますが、その他の神経系の活動も抑制されることによる副作用が出ます。

具体的には、「めまい」「眼振(がんしん、左右の眼球の動きのバランスが崩れること)」「複視(ふくし、物が2重に見えること)」「眠気」「嘔吐」「食欲低下」「頭痛」「平衡障害(体のバランス感覚の障害)」「運動失調」などが、一般的です。眠気は、最も早くあらわれる副作用とされています。さらに、薬の量が増えると、「集中困難」「傾眠(けいみん、意識が混濁した状態)」「錯乱(さくらん)」「譫妄(せんもう、落ち着きを失った状態)」といった中毒症状がみられることになります。

てんかんの発作を抑えるために必要な投与量の目安として、抗てんかん薬には「有効血中濃度」というものがあります。「有効血中濃度」とは、治療できるために必要な、血液中の薬の有効成分濃度のこと、一定の幅があります。一方、この範囲で、用量依存性の副作用も出現します。

したがって、発作を抑えるという効果と、副作用のバランスを考えて、抗てんかん薬の種類や投与量が決定されることになります。一般的に、過度な量の薬を使うと、中毒発現の濃度に入ることが知られています。抗てんかん薬の効果判定と副作用予測のために、治療中は、血中濃度の測定が定期的に行われています。

てんかん発作は睡眠中も起きる?

「夜間発作性ジストニア」という病気があります。具体的には夜間の睡眠中に以下のような、異常な運動を示す病気です。

・ジストニア→筋肉の異常な緊張や運動による姿勢異常など
・ジスキネジア→不随意(ふずいい;意思とは関係のない)運動
・アテトーゼ→ゆっくりとしたねじる様な不随意運動]
・バリズム→手足を投げ出すような大きな不随意運動
・舞踏病→ぶとうびょう。踊っているかの様な不規則な歩行が特徴

異常運動の発作は、「ノンレム睡眠(深い睡眠)」から生じ、持続時間は通常1分以内のことが多く、夜間睡眠中に、数回から多い場合には十数回出現します。発作は、しばしば粗大でかつ激しいため、身体を打撲することがあり、発作中に発声を伴う場合もみとめられます。発症年齢は幅広いといわれていますが、小児期から思春期にかけての発症頻度が高いとされています。発症に男女差はありません。夜間発作性ジストニアは、厳密にはてんかんではなく、睡眠の国際分類の中で、「睡眠随伴症(睡眠に伴う症状)」にも分類されていますが、最近は、「てんかん性」の発作とする報告が多いようです。異常運動発作は、大発作に進展することもあります。

「レム睡眠(浅い睡眠)」中に起こる、睡眠随伴症の1つに、「レム睡眠行動異常症(RBD)」があります。一般に50歳以降の中高年の男性に多いとされています。何らかの原因によってレム睡眠の時に手足を動かしたり、大声で叫ぶなど、夢に一致した行動がみられます。30%はパーキンソン病やレビー小体認知症の発症前に出るとされていますが、前頭葉または側頭葉てんかんと誤診されることがあるようです。

また、小児期に多い「夜驚症(やきょうしょう;睡眠時驚愕症)」は、睡眠中突然起こる強い恐怖のエピソードが、通常一夜の睡眠の最初の3分の1のタイミングの「徐波睡眠(熟睡状態)」の時に起こることが知られています。4歳から12歳に多く、持続時間は1分から10分程度で、出現頻度は一晩に数回から、月に一回程度までさまざまです。積極的な治療を行わなくても大部分が思春期までに消失しますが、てんかんとの鑑別が必要となるものの1つです。

てんかん発作に大人と子供、赤ちゃんに違いがある?

小児科の「小児」とは、一般的に中学生までを指しますが、ここでは、生後1歳までの乳児を「赤ちゃん」、以降の幼児から学童期(12歳)までを「子供」として述べます。 疫学研究(ある集団を対象として、どのような病気を発症するかなど調べた研究)からは、小児てんかん全体においては、「部分てんかん」は60%から70%、「全般てんかん」は20%から30%、「未決定てんかん」が1%から10%前後という結果が得られています。

【赤ちゃん(生後1歳まで)の場合】

「小児てんかん」は、赤ちゃん、つまり生後から1歳までの発病が最も多く、生まれた時の脳の損傷や先天性代謝異常、先天性奇形などが原因で起こる「症候性てんかん」がほとんどです。赤ちゃん、特に生後1カ月未満の新生児に起こるけいれんは、出生時の体重が通常よりも軽い赤ちゃんに起こる頻度が高く、けいれんの原因にもよりますが、ある程度の割合で、てんかんに移行します。また、新生児の場合、けいれんを伴わず、ぐったりするだけの発作も多いとされています。新生児けいれんは、早期に診断して治療を始めないと、脳性麻痺(のうせいまひ)やてんかんなど、神経に後遺症を残したり、死亡することもあるので要注意です。なお、新生児の多くの発作は、「未分類てんかん発作(脳の異常の起きている部位が特定されないもの)」に分類されています。

【子供(1歳超、12歳まで)の場合】

幼児期から学童期の時期では、「小児欠神てんかん」や「特発性部分てんかん」などと呼ばれ、成人までに治ってしまうことが多い特徴があります。普通に話をしたり、何かをしている時に、突然意識がなくなる「欠神発作」というタイプの発作が多いです。発作の起きている時間は20秒から30秒と短いことが多く、また、けいれんなどの症状はあらわれないため、周囲の人に気づかれないことも少なくありません。食事中に箸を落としてぼーっとしたりすることがあるほか、発作がたびたびおきるようだと、「落ち着きがない」「集中力に欠ける」「授業中にぼんやりしている」といった印象を与えることがあります。

【大人(12歳超)の場合】

大人のてんかんは、小児に較べて「症候性部分てんかん(病気が原因で、脳の一部に異常が起きるタイプ)」の割合が、さらに大きくなります。てんかんの原因となる部位では、「側頭葉」や「前頭葉」が多くなっています。

前頭葉は、脳の中で、主として運動性の機能を分担しています。したがって、短い発作でも、けいれんや強制的な姿勢の変化などの症状が出現しやすいのが特徴です。側頭葉は、聴覚や記憶・言語・情動などの精神機能や自律神経機能と関係があり、非常に多彩な発作の症状を示します。

発作の型は「単純部分発作(意識消失がないもの)」または「複雑部分発作(意識消失を伴うもの)」ですが、実際には二次性の全般化発作(脳の異常が起きている部分が、次第に全体に広がるタイプ)が表れる場合が多いとされています。


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てんかんの発作の睡眠中の発生や、大人と子供の違いなどの疑問についてご紹介しました。自身や近いが「てんかんかもしれない」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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