てんかん発作とは?頻度は?「重積発作」「大発作」「小発作」の意味も解説

  • 作成:2016/08/08

てんかん自体にも多様な種類がありますが、発作にも種類があり、「重積発作」「大発作」「小発作」などという言葉が使われます。それぞれが、どのようなものなのかを、発作の頻度も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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この記事の目安時間は6分です

てんかん発作はどれくらいの頻度で起きる?
てんかんの症状の発作とはどんなもの?
てんかん発作は、どれくらいの頻度でおきる?
重積発作とはどんなもの?
難治の重積状態とは?
大発作とは?
小発作とは?

てんかんには、大きくわけて、原因で2種類、脳の異常の起きる部分で2種類に分けられ、それぞれの掛け合わせで、4種類にわかれます。記事を読むうえで、注意をお願いいたします。詳しくは、こちらで解説しています。

症候性全般てんかん→病気が原因で、異常の発生部位が脳全体のもの
症候性部分てんかん→病気が原因で、異常の発生部位が脳の一部のもの
特発性全般てんかん→原因が不明で、異常の発生部位が脳全体のもの
特発性部分てんかん→原因が不明で、異常の発生部位が脳の一部のもの

てんかんの症状の発作とはどんなもの?

「てんかん発作」という症状は、脳のどこの領域に異常な電気発射が起こるかにより、非常に多彩なものになります。例えば、脳の一部の領域に起こる発作(部分発作)では、以下のようなものがあります。

(1)後頭葉の視覚野(しかくや;視覚をつかさどる脳の領域)で起これば「光がチカチカ見える」
(2)手の領域の運動野(うんどうや;運動をつかさどる脳の領域で、体の各部分に対応する領域がそれぞれあります)で起これば「手がピクピク動く」
(3)側頭葉で起これば、「前胸部(ぜんきょうぶ)不快感や既視感(きしかん;いわゆる“デジャヴュ”、初めての事なのに以前に見たり経験した感じがすること)」など

一方、異常な電気活動が脳全体に広がった場合、「意識を消失し、動作が止まって応答がなくなる」、「倒れて全身をけいれんさせる」など、患者さん自身は発作の間、意識がなくなり周囲の状況がわからない状態となっています。また、「体の一部あるいは全体が一瞬ピクンと動くミオクロニー発作」や、「突然、体の力が抜けてバタンと倒れる脱力発作」、あるいは「手足や口をもそもそと動かす自動症(じどうしょう)といわれる発作」などもあります。

てんかん発作は、どれくらいの頻度でおきる?

てんかんは、発作を全く同じ形でくり返すことが特徴です。人によっては、一生に1回だけの発作を生ずる場合がありますので、2回以上くり返す場合に、「てんかん」と診断することが一般的です。発作をくり返す頻度(ひんど)は、多いものから少ないものまで、さまざまですが、一般に次のような基準で考えます。

(1)1日1回以上
(2)1週間に1回以上(週7回未満)
(3)1カ月に1回以上(月4回未満)
(4)1年に1回以上(1年2回未満)
(5)数年間(2年より長い期間)起きていない

(5)は、「2年から5年以上の発作消失後に、抗てんかん薬の減量を考慮することができる」と「てんかん治療ガイドライン2010」にもあるように、てんかんの寛解(発作の消失)に使われる基準の頻度です。また、難治てんかんは、適切な薬を使って、2年以上治療しても、「発作が1年に1回以上の頻度でおこり、日常生活に支障をきたす状態」と定義されています。

社会的な「てんかんの障害認定基準」では、4つの発作分類の発生する「頻度」によって、重症度が1級から3級まで決められています。使われ方として、以下のようになっています。

1級→もっとも重いもの。重症度の高い2つの発作分類が、(3)1カ月に1回以上の頻度であり、かつ常時の介護が必要なもの
2級→比較的軽症な2つの発作が、(3)1カ月に1回以上の頻度であり、かつ日常生活が著しい制限を受けるもの。

「1カ月に1回以上」の発作は、ある程度、てんかんの重症度を判断する基準の頻度になっているようです。

重積発作とはどんなもの?

てんかん重積発作(重積状態)とは、「発作がある程度の長さ以上続くか、または、短い発作の場合でもくり返し起こって、その間の意識の回復がないもの」と定義されています。発作の持続時間に関しては、これまでは30分間以上とされていましたが、理由は、動物実験のデータから、てんかんの異常な電気の状態が30分から45分以上続くと、脳に損傷が起きることからでした。ただ、最近の考え方では、「5分から10分間以上発作が続く場合は、てんかん重積状態と判断して治療を開始することが勧められる」となっています。大部分は、けいれんを主な症状とした重積状態であるため、治療は主に抗けいれん作用をもつ「ジアゼパム(第1選択薬、最優先で選択されるもの)」、「フェニトイン(第2選択薬)」が投与されます。ジアゼパム(向精神薬ベンゾジアゼピンの1つ)は、76%の発作を抑えるとされますが、抑制効果の持続が短いため、すぐに効果の持続時間が長いフェニトインを投与することになっています。

難治の重積状態とは?

「ジアゼパム」と「フェニトイン」で抑制されないものは、「難治てんかん重積状態」と定義されています。てんかん重積状態は、およそ3分の1が、難治性になるといわれています。難治てんかん重積状態では、脳に不可逆的(元に戻らない)な損傷を起こす前に、できるだけ早く、発作が起きてから約30分までに、全身麻酔による治療(全身麻酔療法)に移る必要があるとされています。全身麻酔薬により、脳の電気的活動を十分に小さくし、発作を抑え込もうとするものです。治療には、人工呼吸が必要になりますし、並行して脳波がモニターされることになります。全身麻酔治療のゴールは、見た目に発作が抑制されるだけでなく、脳波上のてんかん異常放電を消失させることも必要だからです。

大発作とは?

てんかんの大発作とは、けいれんを伴う発作で、正式には「強直間代発作(きょうちょくかんたいほっさ)」といいます。てんかん発作の中で最も良く知られていて、古くから「大発作「」と呼ばれてきました。突然、意識を失い、全身が硬くなり、細かなけいれんが左右対称に10秒から20秒くらい続きます(強直期)。手と足は強く突っ張り、身体はのけぞり気味になります。その後、細かなけいれんから次第にリズミカルな動きになり、30秒から60秒くらい続きます(間代期)。強直期には呼吸は止まっていますが、間代期に入ると、はじめは浅い呼吸をしていますが、じょじょに深い呼吸になるにつれて、口の中の唾液を同時に吹き出してきます。また尿や便をもらすこともあります。その後、多くの患者さんは眠りに移りますが、もうろうとした状態となることもあります。 なお、脳の一部にしか以上に起きない部分発作の中には、「2次性全般化」と呼ばれる現象もあります。脳の位置部から始まった部分的な異常放電(部分発作)が、急速に脳全体に拡がるというもので、結果的には大発作と同じ型の発作となります。

小発作とは?

「小発作」という用語は、元々、大発作に対応する概念として使われていたため、広い範囲の小さな発作が含まれていましたが、現在では混乱を避けるため、純粋な小発作は「欠伸発作(けっしんほっさ)」のことを指しています。発作の特徴は、「突然始まり、それまで行っていた動作は中断し、呆然とし、時に両眼球は上転(上を向く)する」、「話をしている途中であれば、発語が緩徐(ゆるやかなこと)になるか中断する」、「歩いていると立ち止まってしまう」、「食事している途中であれば食べ物が口まで行く途中で止まってしまう」、「話しかけられても一般には反応しない」、「時に話しかけると発作が中断されて終わることもある」、といったものです。欠神発作の持続時間は数秒から30秒続きますが、発作の始まりと同様、発作の終わりも速やかに訪れます。


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てんかんの発作の種類や頻度についてご紹介しました。自身や近いが「てんかんかもしれない」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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