「性行為未経験」40歳未満で25% 日本人の性事情、海外比較

  • 作成:2021/09/25

性については、ほかの人と比べたり、ざっくばらんに相談する機会がないので、「自分は異常ではないか」と心配になることがあると思います。日本は、ほかの国に比べて性行為の頻度が少ない国と言われているので、なおさらかもしれません。 今回は、産婦人科医の柴田綾子(淀川キリスト教病院)先生が、日本人のセックスや避妊について世界と比較しながら紹介します。

柴田 綾子 監修
淀川キリスト教病院 産婦人科医長・産婦人科専門医
柴田 綾子 先生

この記事の目安時間は3分です

「性行為未経験」40歳未満で25% 日本人の性事情、海外比較

1. 「童貞」は恥ずかしい?

若いときは「性行為の経験が無い(未経験)」ことを恥ずかしいと感じることが多いと思いますが、本来はまったく恥ずかしいことではありません。
さらに言うと、実は日本では性行為の経験が無い人はたくさんいます。
日本の18~39歳の男女の4人に1人は未経験(約25%)、30代でも10人に1人は未経験です(30~34歳の約12%、35~39歳の約9%が未経験)(1)。
性行為をするかどうかは、自分の体のことなので、ほかの人と比べたり、卑下したりする必要はありません。「セックスを経験していない」ことを恥ずかしく感じる必要はありません。

2.日本人はセックスより食事?

日本では30歳男女の約30%、40歳男性の36%、40代女性の47%が「1年間以上、性行為が無い」と回答しています(ジェクス2021年調査)(2)。一方アメリカでは35~44歳で「1年間まったく性行為が無い」のは10%、約50%の男女が「週1回以上性行為がある」と回答しています(3)。

このように書くと「日本人はダメなのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、セックスの回数は多いほうが良いということはありません。
そもそも、日本人はそれほど性行為が好きではない人が多いのかもしれません。9か国の男女約1万人に「一番楽しい時(pleasurable)はいつですか?」と質問した調査では、アメリカ、イギリス、フランス、スペイン、中国、韓国が「セックスをしているとき」と回答したのに対して、日本人だけが唯一「美味しいごはんをたべているとき」と回答しました。(ちなみに日本人ではセックスをしている時は5位でした) (TENGA,2019)(3)

日本人は、セックスではなく、友人や恋人、大切な人とごはんを食べているときに幸せを感じる人が多いのかもしれません。ただし、性行為の頻度が少ない原因として、女性の63%が性行為で痛みを感じていたり(2)、セックスをしたくない理由として「面倒くさい(男性40%、女性50%)」、「仕事や家事で忙しく疲れている(男性30%、女性40%)」などの課題があります(SAGAMI2013,4)。

3.初回性行為年齢と性知識への不安

世界的コンドームメーカーのDurexの調査では、日本の初回性行為の平均年齢は20.4歳で、ブラジル(17.3歳)、コロンビア(17.4歳)より遅く、マレーシア(23.7歳)やインドネシア(23.6歳)より早くなります(5)。一方で、「楽しい/幸せな性行為をするための知識を持っている/自信がある」は、世界各国70%前後に比べて日本は60%以下、「性/性行為についてアドバイスや相談を受けられる場所を知っている」は、世界各国70%に比べて日本は40%と圧倒的に低いのがわかっています(6)。
日本では、性行為の知識を学ぶ機会が少なく、不安や心配なことがあっても相談できない人が多いのではないでしょうか。

4.避妊方法のカン違い

日本の避妊法として58%がコンドームと一番多く、海外でよく使用されている避妊ピル(低用量ピル)は2.6%と非常に少ないのが特徴です(2)。さらに、間違った方法で「避妊できる」とカン違いしていることもあります。腟外射精(いわゆる外出し)や、安全日(生理の日から排卵日でない日を予測する)、性行為後に腟の中を洗うことは、避妊とは言えず妊娠してしまいます。日本では義務教育のなかで、避妊や性行為について勉強できないこともカン違いが多い原因だと思います。

性や性行為についての知識を学ぶこと、知ること、相談することは恥ずかしいことではありませんので、心配なことがあればぜひ産婦人科/泌尿器科へご相談ください。

参考文献
1. Ghaznavi, C., Sakamoto, H., Yoneoka, D. et al. Trends in heterosexual inexperience among young adults in Japan: analysis of national surveys, 1987–2015. BMC Public Health 19, 355 (2019). https://doi.org/10.1186/s12889-019-6677-5
2. ジェクス株式会社、一般社団法人日本家族計画協会, ジャパン・セックスサーベイ(2021) (Access 2021/8/10)
3. TENGA self-pleasure report 2019.
4. 相模ゴム工業会社,ニッポンのセックス 2013
5. durex. THE FACE OF GLOBAL SEX 2012
6. durex .The Face of Global Sex 2008 The path to sexual confidence

2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。

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