「ああ言えばこう言う」の同僚の教育を任され、メンタル絶不調。医師が勧める「2段STEP」解決法とは?

  • 作成:2021/10/04

AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、同僚の教育係になった結果、メンタル不調に陥ったという方からのご相談です。

堤 多可弘 監修
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷  副院長/精神科医・産業医
堤 多可弘 先生

この記事の目安時間は3分です

「ああ言えばこう言う」の同僚の教育を任され、メンタル絶不調。医師が勧める「2段STEP」解決法とは? 「ああ言えばこう言う」の同僚の教育を任され、メンタル絶不調。医師が勧める「2段STEP」解決法とは?

【今回のお悩み】
37歳女性です。仕事上、同僚の教育係をしています。その人は、教えたことは忘れ、マニュアルはめちゃくちゃにし、プライドは高く、いつも「ああ言えばこう言う」なので、私が疲弊してきました。怒るのも面倒なので何も言わないでいたら、上司に「教えてくれない」と言われ、私が呼び出されて残業する羽目に。
私は飲めなかったお酒を毎日飲むようになり、現実逃避の日々。先日、お酒が原因で倒れてしまいました。会社に相談しても「お前しかできる人がいない」と言われ、精神状態は崩壊寸前です。毎日、涙が出ます。

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ご相談ありがとうございます。かなりお辛い様子ですね。
このように、ストレスの原因がはっきりしていて精神的に辛い場合には、2段STEPで対処を考えていくことがポイントです。

STEP1では自分の心身の調子を整え、ストレスの原因を解決するためにエネルギーを蓄えます。STEP2ではストレスの原因解決のための作戦を立て実行していきます。この順番が非常に大事です。

〈STEP1〉
ご相談者のように、毎日涙が出ているのは既に心がストップをかけている状態です。

また、精神的に苦しく、飲めないお酒を飲んでいる時は、不眠に対処するためや、辛さを紛らわせるためのことがほとんどです。お酒では、その場を紛らわすことができても心の健康は取り戻すことができません。まずはご自身の体のことを第1とし、原因解決のためにエネルギーを蓄える必要があります。 適切な睡眠を取れるようにしたり、少しでも心を落ち着かせたりするために、メンタルクリニックを受診してみましょう。

状態によっては、一定の期間お休みをするのも有効な手段です。これはサボりでもなんでもなく、 必要なインターバルです。バスケットボールのタイムアウトや、F1レースでのピットイン、マラソンでの給水所のようなものと考えてください。

〈STEP2〉
STEP1でエネルギーを蓄えることができれば、いよいよSTEP2に突入します。

このケースでは教育係とはいえ、あくまで同僚の立場ですから、一人での対処は難しそうです。 職場の上司への相談が受け入れられない場合は、さらにその上の上司や人事などにも相談してみましょう。教育係を降ろしてもらったり、他の人にサポートに入ってもらえたりするように頼んでみてはいかがでしょうか。?

そうした相談をする時には、コツがあります。「DESC法」といって、以下の頭文字の順番で話をしていく方法です。

D:Describe 描写 :客観的な状況を伝える。
E:Explain 説明 :自分の困りや見解などを説明する。
S:Specify 提案 :具体的な提案を提示する。
C:Choose 選択(肢) :提案が通らない場合の代替案を提示する。

このケースでは、例えば次のような作戦となります。
D:同僚が仕事を忘れたり、マニュアルをめちゃくちゃにしたりする状況を客観的に話す。
E:自分が困っていることや、そもそも会社にとっても問題だということを説明。
S:自分を教育係から外してもらえるように提案。
C:それが難しければ、上司や自分以外の教育係を付けて欲しいと選択肢も提示。

まずは具体的な作戦を立て実行するためにも、体調を整えることが優先です。繰り返しますが、あくまでご自身の体が第1です。そもそも健康を損ねてまでやらなければいけない仕事はありません。休んだとしても、それは決して逃げや甘えではありません。苦しい状況を打開するためにも、第一歩としてメンタルクリニックを受診されることを検討してみてください。

弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップへのアドバイザー業務を務めるとともに、企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。

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