意外と知らない?市販の「睡眠改善薬」と医療用「睡眠薬」の違い

  • 作成:2021/10/05

一般用医薬品の「睡眠改善薬」と医療用の「睡眠薬」は、どちらも“寝付きが悪い”、“眠りが浅い(途中で目が覚める)”といった症状に使うという意味では、同じような目的で使われる薬に思われがちです。しかし、これら2つの薬は、そもそも薬の作用から全く異なるものなので、注意が必要です。

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意外と知らない?市販の「睡眠改善薬」と医療用「睡眠薬」の違い

一般用医薬品の「睡眠改善薬」と、医療用の「睡眠薬」の違い

一般用医薬品の「睡眠改善薬」は、「ジフェンヒドラミン」という薬です。これは、もともとアレルギーの治療に使われる抗ヒスタミン薬の一種で、非常に眠くなりやすいという副作用がありますが、この眠くなるという副作用を薬として転用したのが「睡眠改善薬」です。風邪薬を飲んだときに眠くなった経験がある人も多いと思いますが、あの“眠さ”を不眠の解消に利用している、ということです。

ただし、この薬には神経を興奮させる作用があります1)。そのため、何日間も使い続けたり、用法・用量を超えた使い方をしたりすると、かえって不眠の症状を悪化させる恐れがあります。また、続けて使っていると4日ほどで耐性ができて、ほとんど眠くならなくなってくるとされています2)。そのため、「睡眠改善薬」が使えるのは2~3日ほどで、あくまで一時的な不眠にしか使えない、という点に注意が必要です。

一方で、医療用医薬品の「睡眠薬」は、最初から不眠症の治療を目的に研究・開発された薬です。昔からよく使われている「ベンゾジアゼピン系」の薬は、脳の働きを抑えることで眠気を催します。一般的に、作用の短いものは寝付きの悪さ(入眠障害)、作用の長いものは眠りの浅さ(中途覚醒)にそれぞれ使われます。また、近年は覚醒と睡眠を司るホルモンに働きかける「オレキシン受容体拮抗薬」や、体内時計を“夜”に合わせる「メラトニン作動薬」といったタイプの薬も登場しています。これらの薬は一時的な不眠ではなく、慢性的な不眠・・・つまり不眠症の治療に用いられます。

一時的な不眠と慢性的な不眠は、どこが違う?

一時的な不眠は、あくまで個人の「寝付きが悪いなぁ」とか「眠りが浅いなぁ」という感覚です。たとえば、会社で嫌なことがあって眠れない、パートナーと喧嘩をして腹が立って眠れない、旅行中に目が冴えてしまって眠れない、大事な仕事の前で緊張して眠れない・・・といったものが該当します。
もう一方の慢性的な不眠には、たとえば「眠れないことで日中の活動に支障を来たしている」、その状態がが「週に3日以上ある」「3ヶ月以上続いている」という診断基準があります3)。このような条件に当てはまっている場合は、一般用医薬品の「睡眠改善薬」を使うのは避け4)、医師の指導のもとで専門的な治療を行う必要があります。

ここで注意したいのは、慢性的な不眠の専門的な治療では、必ずしも「睡眠薬」を使うとは限らない、という点です。基本的に「睡眠薬」というのは、特別な事情がない限り、不眠の症状がひどい場合の緊急避難的な措置として使うものであって、ずっと使い続けるものではありません。そのため、まずは睡眠に対する習慣を見直したり、寝室の環境を整えたりすることが大事な解決策となります。

不眠の原因となりやすい習慣には、たとえば「カフェイン」を摂り過ぎている(特に日没後の摂取)、寝る前にお酒を飲んでいる、照明がつけっぱなしで寝室が明るいままである、布団の中でスマホなどの明るい液晶画面を長時間見ている、といったことが挙げられます5)。「睡眠薬」を使う前に、こうした習慣があれば、まずは改善してみてください。

なお、慢性的な不眠の診断基準に「眠れないことで日中の活動に支障を来たしている」というものがあることをご紹介しましたが、これはつまり「眠れていないが特に日中の活動に支障がない」のであれば、それはあまり問題にならない、ということでもあります。通常、人は7時間ほどの睡眠時間が適切とされていますが、個人差が大きく、また高齢になればなるほど睡眠時間は短くても良いとされています。特に65歳以上では、睡眠時間が5~6時間程度であっても、問題があるというわけではありません6)。「〇時間以上眠らなければならない・・・!」というプレッシャーは、かえって不眠の原因にもなります5)ので、あまり時間にはこだわらないことをお勧めします。

1) レスタミンコーワ錠 インタビューフォーム
2) J Clin Psychopharmacol. 2002 Oct;22(5):511-5. PMID: 12352276
3) 米国睡眠学会 International Classification of Sleep Disorders, 3rd ed.(2014)
4) 厚生労働省:睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン(2013)
5) 厚生労働省:健康づくりのための睡眠指針2014
6) National Sleep Foundation’s Sleep Duration Recommendations

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