サポートが必要な親子の「困りごと」をアンケートしてみた

  • 作成:2023/09/08

こんにちは。外科医ちっちです。うちの3人の子どもは、全員が自閉スペクトラム症の診断を受けており、いくつかの困りごとを抱えています。一緒に生活するうえで、「こんな発想でこんなことをしてしまうのか」と驚かされることもあれば、「こうとしか考えられないのか」と辛い思いをすることもあります。この連載では、軽度の発達障害のわが子の日常や、子育ての様子を徒然なるままに綴ります。世の中にはこんな「変わっている子」「変わっている人」もいることを、いろいろな方に広く知ってもらい、皆さんの生活でも役立つと嬉しいです。 次男はまだまだ絶賛不登校ですが、少し長男と長女の生活が落ち着いてきました。そして、この14年を振り返って、発達障害の支援について「欲しかったもの」「嫌だったもの」について考えています。

外科医ちっち 監修
 
外科医ちっち 先生

この記事の目安時間は3分です

ちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟—サポートが必要な親子の「困りごと」をアンケートしてみた

我が家の場合は、3人とも自閉スペクトラムの診断で、当然両親は共通していますが、性格も違えば困りごとも違います。学校や社会がどう変わったら、より多くの人の利益になるんだろうと考えています。

ずっと考えていますが、煮詰まって上手く言葉に出来ないので、X(旧Twitter)で質問してみることにしました。

「診断に関係なく、当事者も親も子育ての困りごとを教えて」

約150の意見が集まりました。意外だったのは「元子ども」の当事者の方からも想いが寄せられたこと。
ざっとまとめるとこのようになります。

〈親、保護者側からの困りごと〉

1 預ける先がない

親が疲労しても、辛くても子どもを預ける先がない。変わった子に対応してくれるか交渉する余裕がないし、良い返事でも実際にきちんと対応してくれるか信じきれない。

2 親が上手くやれているか常に不安

子どもの行動や反応が独特で、発達障害に関する講演や本の指導、外来でのアドバイスもそれぞれが矛盾して感じたりする中、「自分が上手くやれているか?」という強い不安がある。サービスを探そうにも大半は詐欺っぽいもの。残りわずかなマトモそうなものにも怖くて応募しづらい。

3 申請、手続きをマネジメントし、フィードバックしてくれる仕組みがない

申請しない限りは支援が受けられないし、そもそも自分の子がどの制度に申請出来るのか分からない。

学校との交渉も親単独が多くて、上手くいかない。

申請や手続きに関して専門の人に手伝ってほしいし、上手くいかない理由を教えてほしい。

4 お金

とにかく普段の生活にお金がかかるし、将来、子どもが「働けないかも」「施設に入るかも」という思いから貯金をしたい。けれど、1~3の困りごとから、片方の親(多くは母)が働けない、子の傍から離れられないことが多い。

5 周囲の無理解

頑張った上で、どうにか落ち着いて過ごしていても、悪意のない他人の言葉に落ち込む。

他人だけでなく、祖父母や教師、パートナーからも同様。

例)「親の愛情不足」「親がもっとがんばらないといけない」「障害者にしたいの?」など

6 パートナーとの不仲

子育ての方針や、困りごとを共有したくても、パートナーとの温度差があり、けんかになる。離婚して1人で育てにくい子と暮らしていくとなると、より一層人生がハードになりやすい。

〈当事者側からの困りごと〉

7 「出来ない事」「自分ではやり方が分からない事」を要求されて苦しかった

当事者の感覚として出来るはずがない、どうしようもないことや、やろうとしても出来ない事を要求されて辛かったという思いがある。

①、②、③はビジネスとして何とか出来そうな気もするけど、理想的な「親として要求したいレベル」の人件費を考えると利用者負担が月1万以上はかかりそう。

④の状況だと簡単には出せないよな。

かと言って、安い「提供者側の善意」に依存するシステムは内部を酷使するので長期的には上手くいきづらいし、拡大しない。

理想は「発達っ子の親が隙間時間で働ける仕組み→その儲けで専門家育成、支払い→子が安定し良いサイクルに」の流れを作り出したい。

自分は、何が出来るだろうか?というのを、ずっと考えています。

一つのヒントとして目標としているのが、「ヘラルボニー」という会社。

障害者×アートをテーマに、ファッションやアート作品などを企画販売しています。チャリティとしてお金を出させるのではなく、障害者の「感性が面白い」をピックアップして需要を生み出し、適正な価格で販売し、当事者たちの所得アップに貢献している形は自分の一つの理想です。

子どもの将来のためお金は極力使いたくない、支援はほしいけど「どこがマトモで、親子の地雷を踏まないでくれるのか?」が分からないと追い詰められやすい状況がよく分かりました。

発達障害に関する困りごとにはやはり共通点が多いことは分かったので、実際に私に出来ることを形にする方法を考えていきます。

外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti

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