「発達障害児の迷惑は許さないといけないの?」と問われたら…当事者の父が「他害行為」に思うこと

  • 作成:2022/09/03

こんにちは。外科医ちっちです。うちの子どもたちは、神経発達症(発達障害)の診断を受けていて、区分としては精神の障害があります。私は「健常者と障害のある方、それぞれに知識があれば楽に過ごせる部分がある」と思い、発達障害の実際の様子を発信し始めました。そうすると、定期的に「自分の近くには、態度の悪い発達障害の人がいる。配慮という名目でこちらばかりに気を使わせるつもりか?」というメッセージが届きます。色々な状況・考え方があるのは当然です。 今回は、発達障害の子どもの父が考える「他害」につい具体的にお話ししていきます。

外科医ちっち 監修
 
外科医ちっち 先生

この記事の目安時間は3分です

うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟−「発達障害児の迷惑は許さないといけないの?」と問われたら…当事者の父が「他害行為」に思うこと

「あのお母さんは過保護だよね」と言われて…

発達障害は内部での問題ですから、他人からは目に見えにくい障害です。一般の方が「こんな簡単なこと」と思うことが、うちの子どもたちにはできません。

たとえば、「毎回、体操服を持ち帰る」とか「学校からの手紙を親に渡す」などです。
今は、まだ小・中学生なので、私たちが環境を整えるために介入をしています。それでも、子どもたちは「困っている」という主張もできずに、ただ時間を過ごしていることがあります。思いもよらないことで大きく傷ついているときもあります。放ったらかしにはできません。

子どもそれぞれに合う環境を作りたくて、学校や習い事先に配慮をお願いしているのですが、やはり健康な人から見ると傲慢でわがままなのでしょうか。習い事の先生が「あのお母さんは『うちの子は』『うちの子は』って過保護だよね」と言っているのを、妻が聞いてしまったこともあります。

うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟−「発達障害児の迷惑は許さないといけないの?」と問われたら…当事者の父が「他害行為」に思うこと

他害を「悪い人がいた」「迷惑」で終わらせない

私たちは、子どもの特別扱いをして許してほしいわけではありません。皆さんに伝えたいことは、大きく分けて4つあります。

1)「他害」を許せ、という意図はない
どんな診断があり、立場であっても、他害を許す必要はないです。

2)視点が変われば、感じ方も違う
ここが一番伝えたいところで、「理不尽な他害」と思われていることが、見方を変えると「理由がある防御反応」であることがあります。

具体例をあげると次のようになります。

うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟−「発達障害児の迷惑は許さないといけないの?」と問われたら…当事者の父が「他害行為」に思うこと

長男にっちの年少時代、幼稚園の帰りが初めての雨だったことがあります。そのため、迎えを普段の自転車ではなく徒歩で行きました。その時、なんとにっちは「激怒」してしまいました。

これも、周囲から見たら、ただの怒りん坊です。
ですが、本人としては「いつも自転車で迎えに来る母が歩いてきた。しかも初めて雨が降っている」という、いつもと違うことだらけで不安だったのです。強い不安から、怒ることで自分を守ろうとしているのです。

そんなこと、言われないとわからないですよね。しかし、こういった「本人にとっては理由がある防御反応」があるのです。当事者たちは主張が下手で、全く伝わりません。そのため、周囲が感じてしまうのは……、
変な行動をした → 理解できない → 理不尽な態度だ
となってしまうのです。

当事者の置かれた状況や理由を突き詰めず、「悪い人がいた」「迷惑だ」となりトラブルを終わらせてしまうと、お互いに学びがないので、それ以降も似たようなことを防ぐことはできません。

発達に関係なく「他害は許されない」からこそ、何かトラブルがあった時には当事者同士の悪意の有無に着目する。さらに、当事者達の特性の把握と、環境の見直しは必要だと思っています。

無理やり普通級を選ぶ親は少ない。その理由は?

3)定型発達の人に我慢してもらい、無理に一緒に過ごさせたいという気持ちはない
発達障害の子どもの親というと、ステレオタイプに「普通級に入れたい」「周囲(定型児)から刺激を受けることで(障害児を)成長させたい」という想像をする人もいるかもしれません。でも、実際にはそうした親は少ないのではないかと思います。

我が家の場合、子どもたち3人は普通級で過ごしていますが、親の希望は「支援級」でした。SNSで言われているような、無理やり普通級を選ぶような発達障害の親像は、ごく一部です。なぜそう言い切れるかというと、現実には枠が少な過ぎて、支援級や支援学校、通級の枠は取り合いなのです。まさに椅子取りゲーム状態です

4)本人たちも、周囲を不快にさせたいわけではない
ここも誤解されやすいところです。

少なくともうちの3人の場合、多くの問題行動は「困った結果の反射」であって、他人を不愉快にさせたいわけではありません。本人たちもその行動をしてしまうことが嫌ですし、周囲が不快な気持ちになることも嫌だと感じています(そう思っても、すぐには改善ができないのです)。
本人たちはずっと努力していますし、「周囲とうまくやっていきたい」という気持ちは変わらずあります。

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以上の4つを踏まえて伝えたいこと

最後になりますが、「発達障害だから、性格は○○」と言い切ることはできません。
同じ診断名であっても色んな人がいます。

なかには、性格が悪い人もいるでしょう。なので、発達障害の方に、悪意のある行動をとられる可能性はあります。
ただ、診断のある人から迷惑をかけられた、嫌なことをされた時に「発達障害の人は、性格が悪い」と判断するのではなく、「あなたの近くにいる××さんが、(あなたから見ると)性格が悪い」と判断するのが真実なのではないでしょうか。
障害があろうとなかろうと性格は十人十色、ひとくくりにすべきではないでしょう。

「知ってもらうことでお互い楽に過ごせる」

変な行動や、迷惑をかけるような行動をしてしまうことがある我が子たち。

SNSでの発信を始めて以来、「診断のある人の迷惑は許さないといけないのか?」と聞かれた時に、私はこう答えています。
「あなたが感じた迷惑は我慢する必要はない。ただ、あなたが悪意があると予想している行動の背景は違うかもしれないと知って欲しい」

長時間一緒にいる親から見ると、問題行動にも本人たちなりの理由があり「悪意がないこと」、周囲に迷惑をかけたい気持ちはなく「本人たちも止めたいこと」が、よくわかるのです。

SNSでの発信を始めた理由は、「知ってもらうことでお互いに楽に過ごせる」ということです。楽に過ごしてほしいのは当事者だけでなく、その周囲で過ごす人たちも含めてのことです。

外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti

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