溶連菌感染症

溶連菌感染症は、強い喉の痛みや発熱とともに、のどの奥や舌に赤い発疹がでる病気です。主な症状や、原因となる菌について、治療方法や予防について医師監修のもとご紹介します。

溶連菌感染症の症状

口蓋垂の周辺の赤い発疹

咽頭という喉の奥や口蓋垂(いわゆるのどちんこ)の周りに、点状の発赤(赤くなること)や、粘膜の小さな出血斑(内出血をした状態)を起こす咽頭炎は、溶連菌感染症に特徴的で、溶連菌感染症を強く疑う根拠となります。

扁桃腺(へんとうせん)の腫れ

溶連菌感染症では口の中に症状が出ます。口蓋扁桃(こうがいへんとう)扁桃線(へんとうせん)が腫れて強い喉の痛みを訴えます。症状が出た時に、扁桃線を観察すると赤く腫れており、表面に白い膿(うみ)が付着しています。ただしこれらの所見は溶連菌感染症だけでなく、他のウイルスによる咽頭炎でもみられるものです。したがって、溶連菌感染症に特徴的とは言えません。

イチゴ舌

溶連菌感染症では、「イチゴ舌」といって、舌がイチゴのように赤くブツブツと見える場合があります。溶連菌感染症に特徴的な症状の一つですが、イチゴ舌がみられるのは患者の約半数と言われており必ずみられるものではありません。

手足の発疹

溶連菌感染症では、顔や身体、手足などの皮膚にも症状があらわれます。顔では額、目のまわり、頬が赤くなったり、頬ににきびのような発疹がでる、肌荒れのように頬がカサカサするなどの変化がみられます。
手足の症状は溶連菌感染症に特徴的で、手のひらや手足の指の皮膚が白くむけてくる「落屑(らくせつ)」という症状が有名です。落屑は感染から数日して熱が下がったころに現れる場合が多いようです。手の甲や足の甲、身体には落屑はみられません。手のひらや指の間が赤くなったり、指先がつるつるになることもあります。
また前腕(肘から先)や足の甲、膝から下の皮膚に赤い点状の発疹が出ることも特徴的な症状です(「点状紅斑」と呼ばれます)。前腕や足には点状紅斑の他、顔と同じようなニキビ状の発疹が出る場合もあります。

発熱など風邪に似た症状も

溶連菌感染症では強い喉の痛みや発熱、発疹の他、くしゃみ、鼻水、咳、頭痛などがみられる場合があります。通常、熱は3日から5日程度で下がります。
溶連菌感染症の症状は風邪の症状とよく似ていますが、のどの痛みが強い場合や高熱が出る、顔や身体に発疹が出る場合は溶連菌感染症の可能性がありますので医療機関を受診するようにしましょう。

腹痛、嘔吐、下痢

溶連菌感染症では腹痛、嘔吐、下痢などの消化器の症状も出る場合があります。とくに嘔吐は、よく見られる症状の一つです。皮膚の症状やイチゴ舌など溶連菌感染症に特徴的な症状はあまりなく、嘔吐や下痢が症状の中心になるケースもあり注意が必要です。また溶連菌感染症と診断されると抗生物質を処方されますが、抗生物質を内服すると薬の副作用として下痢をする場合もあります。

大人と子供の症状の違い

溶連菌感染症は大人も感染します。とくに体力が低下しているときに感染するリスクが高くなると言われており、お子さんが溶連菌感染症になり、看病した親に感染して、病院を受診する例が多いようです。お子さんが溶連菌感染症の場合、兄弟で50%、親で20%の感染リスクがあるという報告もあります。

大人では、喉の痛みや扁桃炎などの症状は子供に比べて比較的軽いことが多く、抗生剤を内服して治療しなくても自然に治癒する場合も多いため、単なる風邪と思って溶連菌感染に気がつかないケースも多いと考えられています。

溶連菌感染症の原因

溶連菌感染症は溶連菌という菌に感染しておこる病気です。溶連菌(ようれんきん)とは、正確には「溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)」という名前です。血液を含んだ培地に、溶連菌を入れると血液の色がなくなる「溶血」という反応を起こします。また、丸い形の菌(球菌)がいくつも連鎖して存在するため、このような名前がついています。
溶連菌は、A群からH群、K群からW群までの計21群がありますが、とくにヒトに感染して病気を起こすのはA群溶連菌が95%程度を占めると考えられています。A群β溶連菌は日本では5種類程度が確認されており、世界中では、20種類程度があると言われています。A群β溶連菌だけでも多くの種類がある以上、一度かかってもその後何度も感染する可能性があります。

溶連菌感染症の治療

まずは検査を受ける

溶連菌感染症と診断するためには医療機関で検査を行う必要があります。溶連菌感染症の検査は大きく分けて3種類あります。外来で最も一般的に行われるのは「溶連菌迅速診断キット」によって行われる診断で、喉の奥(咽頭)を綿棒のようなものでこすり、付着した液体(咽頭ぬぐい液)を専用の検査キットを使用して診断します。この検査キットではおおむね95%以上の正確さで診断できます。ほかには、血液検査、咽頭培養という方法があります。

治療は抗生剤の服用が一般的

溶連菌感染症と診断されると抗生剤が処方されるのが一般的です。主に「ペニシリン系」と呼ばれる抗生剤を10日間内服するか、「セフェム系」と呼ばれる抗生剤を5日間内服するのが一般的です。ペニシリン系やセフェム系の抗生剤にアレルギーがあったり、「耐性菌」といって抗生剤に強い菌への感染があり効果がない場合は、耐性菌に強い別な種類の抗生剤へ変更する場合があります。

溶連菌感染症の予防

溶連菌には予防接種がありません。また一度かかっても何度も感染する場合もあり予防が大切になります。溶連菌は咳やくしゃみで菌が飛び散ったり(飛沫感染)、手についた菌が口から入る(経口感染)ことで感染が起きます。また皮膚の場合は傷口から菌が入って感染を起こします。
そのため、予防には溶連菌感染症の患者さんとの接触を避けることが最も大切です。患者さんと接触するときはマスクを着用しましょう。患者さんと接触した後は石鹸等できれいに手を洗い、使い捨ての紙タオルなどを使用して手をふきます。タオルの共有はしないようにしましょう。

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