子宮内膜炎の原因、症状、治療、予防 不妊になる?内膜症との違いは?

  • 作成:2016/08/23

子宮内膜炎とは、子宮の内部をおおう膜が炎症を起こした状態です。原因は多様ですが、陰部を不潔にしているとリスクが高まります。不妊との関係や症状、治療、予防方法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

平松晋介 監修
ちくご・ひらまつ産婦人科医院 院長
平松晋介 先生

この記事の目安時間は3分です

子宮内膜炎とはどんな病気?

子宮内膜炎とはどんな病気?

「子宮内膜炎」とは、文字通り、子宮の内側を覆っている「子宮内膜」という部分が炎症を起こしている状態です。主な症状は、下腹部の痛みや不快感、38度以上の発熱、排尿痛、無月経、疲れなどがあり、不正出血や色のついたおりものが見られることもあります。なお、症状の程度には個人差があり、ほとんど自覚症状がないことも珍しくありません。

子宮内膜症とは全く別もの

ちなみに、病名が似ているため「子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)」と間違えられることがありますが、全く別の病気です。子宮内膜症は、本来子宮の中にしかできない子宮内膜が子宮以外の場所にできる病気で、重い月経痛や性交痛、不正出血、月経の出血量の増加などが起こります。子宮内膜症は、炎症が起きるわけではありません。

子宮内膜炎はどこから感染する?

子宮内膜炎の原因は、子宮内膜が細菌等に感染することです。感染のほとんどは子宮口から細菌が入り込む「上行性感染(じょうこうせいかんせん)」によるものです。ただ、原因となる菌が、体内の子宮以外の場所から流れてきて、子宮の内部に感染することがあります。このケースは、「下行性感染(かこうせいかんせん)」と呼ばれます。下行性感染を起こす菌は、血管やリンパ管、卵管を通って子宮内膜まで運ばれてきます。

子宮内膜炎の原因菌は?

子宮内膜炎の原因となる菌としては、「大腸菌」「ブドウ球菌」「結核菌」などの細菌以外に、性感染症の原因でもある「クラミジア」や「淋菌」などがあげられます。ただし、成人女性の場合は、腟内の常在菌(常に存在している菌)による酸性状態や子宮頚管部の粘液が、子宮内部へ菌が進入するのを防いでいます。また、子宮内に細菌が入ったとしても、多くは、月経時に子宮内膜がはがれる際に、体外に排出されます。

しかし、出産、流産、人工妊娠中絶、IUD(子宮内避妊リング)挿入などにより、膣から子宮内に細菌が侵入しやすくなることがあります。また、子宮頸がんや子宮体がんの手術後、傷口の化膿が原因で、子宮内膜炎を発症することがあります。クラミジアや淋菌などの性感染症に感染した場合に、子宮頸部から子宮内膜まで細菌が繁殖して炎症を起こすこともあります。月経時に陰部を清潔にしていなかったり、タンポンを長時間入れたままにしておいたりすることも、感染のリスクを高めます。もし、気になる症状があるときは、婦人科を受診してみましょう。

子宮内膜炎は不妊の原因に?

子宮内膜炎の炎症が長期に渡って続いたり、炎症が拡がって卵管にまで及んだりすると、子宮内膜炎は、着床不全(受精後の受精卵の着床がうまくいかないこと)を招くため不妊症や流産の原因となることがわかっています。特に、性感染症の原因菌であるクラミジアや淋菌などは、感染すると不妊や流産のリスクが高くなるため、早期に治療を始めることが大切です。また、別の菌が原因である場合も、子宮内膜炎の治療後は妊娠率が高くなることが報告されています。出産を希望しているにも関わらず不妊が続いたり、流産を繰り返したりする場合に加えて、痛みや不正出血、おりものの異常といった体からのサインが確認された場合、婦人科で子宮内膜炎の有無を調べてみるとよいでしょう。

子宮内膜炎は、比較的症状が軽く、自覚症状が乏しい病気です。しかし、症状が進行すると、まれに「腹膜炎」「骨盤内膿瘍」「骨盤内血栓性静脈炎」などという重大な病気を発症することがあります。さらに、子宮内膜の炎症が全身に及ぶと敗血症性ショックによる低血圧症を起こし、死に至る危険性もあります。

また、妊娠中に子宮内膜炎に感染すると、細菌が胎児に影響を及ぼす可能性があります。母子感染(母から子供への感染)によって、赤ちゃんがクラミジア肺炎、クラミジア結膜炎、淋菌性結膜炎などの病気を発症すると、重症化することも少なくありません。妊娠中に子宮内膜炎とわかったら、すぐに治療を始めましょう。

子宮内膜炎の診断と治療法は?

子宮内膜炎の可能性がある場合は、触診と内診を行い、下腹部の痛みと子宮を押したときの痛みの有無を確認します。また、子宮内膜が炎症を起こすと血液中の白血球数が急増するため、血液検査を行うことがあります。子宮内膜炎と明らかになった場合は、原因菌を特定する検査を行います。

子宮内膜炎の大半は、通院治療で回復します。ただし、吐き気や高熱が続くときや、妊婦さんの場合、飲むタイプの抗菌薬が効かないとき、卵管や卵巣の膿瘍を伴うときなどは入院が必要です。

子宮内膜炎の治療は、原因菌の増殖を抑える抗菌剤を5から7日間使用します。軽症から中等度の場合は、原因菌の種類により、「セフジトレン」などのセフェム系薬、「スルタミシリン」などのペニシリン系薬、「レボフロキサシン」などのニューキノロン系薬などの飲み薬を使います。 比較的症状が重い場合は、「セフメタゾール」などのセフェム系、「ピペラシリン」などのペニシリン系、「イミペネム」などのカルバペネム系薬、マクロライド系薬の「アジスロマイシン」のいずれかを5から7日間注射します。また、「メトロニダゾール」や「クリンダマイシン」などの飲み薬,「ミノサイクリン」などの飲み薬または注射を併用することもあります。

薬を飲み始めたら、処方された分の薬を必ず最後まで飲み切りましょう。症状が改善されたと感じたところで服用を止めてしまうと、菌が消滅しきっていないためにすぐに再発することがあります。

子宮内膜炎の予防法

子宮内膜炎の予防のためには、膣周辺を清潔に保つことが大切です。便座についている温水洗浄機能は、雑菌が入りやすいため、膣周辺に水がかからないように心がけましょう。また、細菌の繁殖を防ぐために通気性のよい下着を使用したり、生理中はナプキンをこまめに換えたりするようにしましょう。月経時や産後、流産や中絶の後などはは特に注意が必要です。

また、パートナーが子宮内膜炎の原因菌に感染していると、子宮内膜炎が再発してしまうことが少なくありません。性交時は可能な限り、コンドームを使って細菌を体内に入れないようにし、性交の前後にはシャワーを浴びて性器周辺をていねいに洗いましょう。

子宮内膜炎について原因、症状、治療、影響などをご紹介しました。腹部周辺の症状に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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