「不妊?」と感じた際のチェック項目 女性5つ、男性4つを解説 おりもの、生活習慣、性交状態も重要なポイント

  • 作成:2016/07/25

不妊の原因は、男性や女性の臓器の問題から様々です。医療機関を受診すれば、原因が特定できることもありますが、原因不明な場合もあります。不妊につながる可能性のある原因を探るために、自らできる9つの項目について、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

平松晋介 監修
ちくご・ひらまつ産婦人科医院 院長
平松晋介 先生

この記事の目安時間は6分です

「不妊?」と感じたらチェックすべきポイントとは?
「不妊?」 女性のセルフチェック概要
女性のチェック項目(1) 基礎体温
女性のチェック項目(2) 生理周期と生理痛
女性のチェック項目(3) おりもの
女性のチェック項目(4) 過去の手術歴や既往症
女性のチェック項目(5) 生活習慣

「不妊?」 男性のセルフチェック概要
男性のチェック項目(1) 停留精巣や精巣上体炎、糖尿病などの病気
男性のチェック項目(2) 精巣の形
男性のチェック項目(3) 性交渉時の状態
男性のチェック項目(4) 生活習慣

「不妊?」 女性のセルフチェック概要

女性の不妊の原因は、女性ホルモンの分泌異常、子宮筋腫や子宮内膜症、頸管粘液分泌不全、卵管閉塞などさまざまです。原因によっては、病院で検査を受けないと分からないものもありますが、自分で不妊の可能性があるかどうか判断できる症状もあります。女性の不妊を判断するためのセルフチェック項目には、基礎体温、生理痛、おりもの、過去の手術歴や既往症、生活習慣などが挙げられます。

女性のチェック項目(1) 基礎体温

女性ホルモンには、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」があり、この2つのホルモンが周期的にバランスよく分泌されていることが、妊娠に重要です。卵胞ホルモンは卵子の成長を促し、体を排卵と受精に備える作用があります。黄体ホルモンは、妊娠の継続に必要なホルモンで、受精卵が子宮内膜に着床した後に内膜の厚さを維持する作用があります。そのため、排卵が終わると、黄体ホルモンが上昇します。黄体ホルモンは、基礎体温を上昇させる作用があるため自分で体温を測定することで、黄体ホルモンが正常に機能しているか推定することができます。

基礎体温は、専用の基礎体温計で測定します。薬局やドラッグストアなどで購入することができ、気軽にできるセルフチェック方法の1つといえます。毎朝、起床時に舌の下に基礎体温計を挿入して測定します。女性は寝ている間に基礎体温が最も低下すると考えられており、それを測定するのが正確ですが、現実的には困難なので起きたばかりでまだ動いていない時に測ればよいことになっています。睡眠時間や飲酒、ストレスなどでも基礎体温は変化することがあるので、一日ごとの結果で一喜一憂せず、数カ月間測定してみるのがよいとされています。

正常の基礎体温は、「低温期」と「高温期」の2相に分かれます。排卵を境に黄体ホルモンが上昇して、高温期になるからです。理想的な基礎体温は、低温期と高温期の温度差が0.3℃以上で、高温期が14日程度持続します。例えば、2相性ではなく、ずっと低温期が続く場合、排卵が正常に起こっていない可能性があります。これを「無排卵性周期」と呼びます。他には、高温期が10日以内であったり、高温期の途中で基礎体温が低下してしまう場合には「黄体機能不全」が考えられます。黄体ホルモンが十分に分泌されないと、妊娠に必要な状態を維持できない可能性があります。不妊症を疑って、産婦人科を受診する時には、最低でも1か月分の基礎体温表を持参することをお勧めします。

女性のチェック項目(2) 生理周期と生理痛

個人差はあるものの、生理は25日から38日周期で起こると考えられています。短い場合、も長い場合も、女性ホルモンの分泌異常などがある可能性があります。

生理の時には、不要になった子宮内膜が血液と共に排出されるので、痛みを伴うことがほとんどです。この痛みは、子宮の外へ不要なものを排出するために分泌される「プロスタグランジン」というホルモンの作用によるので、日常生活に支障がない程度であれば問題ありません。しかし、以下のような場合は、要注意です。

・鎮痛薬を内服しても痛みが治まらない
・時間経過と共に生理痛が悪化している
・生理痛だけではなく腰痛や排便痛、性交痛も伴う
・出血量が多い
・生理痛で学校や会社を休まなくてはいけない

子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が隠れている可能性があります。これらの病気は、女性ホルモンの影響を受けたり、生理のたびに病気が進行していくという特徴があるため、妊娠出産経験がなく、年齢が上昇するほど発症する可能性が高いといわれています。不妊症で産婦人科を受診する時には、事前に生理周期や生理の持続日数、痛みなどの症状、出血量などについてまとめておくとよいです。

女性のチェック項目(3) おりもの

おりものは、医学的には「子宮頸管粘液(しきゅうけいかんねんえき)」と呼ばれており子宮の中に細菌などが入らないようにする作用があります。また、おりものには性交時に精子が子宮内に入りやすいようにサポートする役割もあります。もし、おりものの臭いが強い、色が濃い、血液が混じるなどのような症状がある場合には、性感染症に感染している可能性があります。例えば、日本の性感染症の中で最も多いクラミジアに感染していると、卵管やお腹の中に炎症を起こし、卵巣から卵子がうまく運ばれなくなってしまいます。

おりものに異常を感じたら、後遺症が残る可能性も含めて、なるべく早めに治療を開始した方が良いです。すぐに病院に行くようにしましょう。

女性のチェック項目(4) 過去の手術歴や既往症

過去に婦人科系の手術や腹部手術を受けたことがある場合には、卵巣や卵管などが癒着(正常ならくっついていないところが、くっつくこと)を起こしている可能性があります。また性感染症にかかったことがある場合、卵管炎や子宮内膜炎を起こしたことがある場合にも、卵管が癒着していて、卵子がうまく子宮内までたどりつかずに不妊になっていることがあります。

糖尿病、甲状腺機能異常、自己免疫疾患がある方は、不妊になる可能性があります。また、うつや胃潰瘍に対する飲み薬の中には、排卵を抑制する「プロラクチン」というホルモンを過剰に分泌させる副作用をもつものがあるため、不妊症になることがあります。

女性のチェック項目(5) 生活習慣

冷えや運動不足、無理なダイエット、喫煙、カフェインやアルコールの摂り過ぎ、ストレスなどは体に負担を与え、ホルモンバランスを崩し、妊娠しづらくなると考えられています。思い当たることがある方は、日々の生活習慣の改善も心がけましょう。

「不妊?」 男性のセルフチェック概要

男性の不妊を判断するためのセルフチェック項目には、今までかかったことのある病気、精巣の形、性交渉時の状態、生活習慣などが挙げられます。

妊娠のためには、正常な精子が膣内に射精されることが必要です。精子の頭にはDNAの含まれた核があり、核の後ろに存在するミトコンドリアによって精子は運動することができます。精子は陰嚢(いんのう)の中の精巣で作られた後に、精巣上体(精巣の上部)に運ばれます。精巣上体で、受精に必要な能力や運動する機能を獲得し、精管と呼ばれる長さ約40cmの管を通って前立腺に送られて精液となります。男性の不妊は、精子自体や精子が作られる精巣、精子の通り道などに異常がある可能性が考えられます。

男性のチェック項目(1) 停留精巣や精巣上体炎、糖尿病などの病気

「停留精巣(陰嚢の中に精巣が入っていない病気)」や「精巣上体炎(精巣上体の炎症)」の既往があると、精液の通り道をふさいでしまう可能性があるため不妊になることがあります。停留精巣はがん化するリスクがあるため、早めの手術が推奨されています。停溜精巣は、自分ではわからないことがあるので親にも確認するようにしましょう。

おたふくかぜにかかると精巣に炎症を起こし、不妊症の原因になることがあります。また結核菌やクラミジアに感染し、精巣炎などを起こすと、精子の通過障害を起こし不妊症になることもあります。また、小児がんに対して、抗がん剤を使用していると、精巣の機能が低下している可能性があります。糖尿病では、細い血管に障害が起きるため、性交の時に勃起せず射精に至らないことがあります。糖尿病がさらに進行すると精子を作る機能も低下する可能性があります。

他にも一部の胃腸薬や血圧降下薬(降圧剤)には勃起障害や射精障害を引き起こすものがあるので、病院を受診する時には内服している薬は全て医師に見せるようにしましょう。

このように今までかかった病気や内服薬の副作用をチェックすることは、男性不妊の原因をつきとめるために重要です。不妊症で病院を受診する前に、今までにかかった病気についてあらかじめ調べておくとよいです。

男性のチェック項目(2) 精巣の形

左右の精巣の形が同じであるかチェックしてみましょう。左右の大きさが違うと、「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」という病気の可能性があります。「精索静脈瘤」とは、血液が逆流してしまうため、腫れが発生して、精索が圧迫される病気です。精巣は熱に弱いので、陰嚢と呼ばれる袋に包まれてお腹の外に存在しています。血液が正常に循環していると精巣を冷やすことができますが、精索静脈瘤の場合には血流が悪いため精巣の温度が上昇し、精巣の機能低下を引き起こし不妊症になる可能性があります。精索静脈瘤があると、長時間座っていると、陰嚢に痛みを感じることもあるので自覚症状がないか確認しましょう。

男性のチェック項目(3) 性交渉時の状態

性行為が問題なく行えているかを考える必要もあります。性行為で多い問題は、勃起障害と射精障害といわれています。強いストレスや動脈硬化、糖尿病などがあると勃起障害をきたすことがあります。

「射精障害」は、性行為で挿入はできるものの射精に至らないことを指します。陰茎に強い刺激を与えないと射精できない、普通の性行為では性的興奮が得られない場合などに射精障害が起こることがあります。

男性のチェック項目(4) 生活習慣

喫煙やアルコールは、精子の数を減らしたり、運動率を下げることが分かっています。また、精巣は熱に弱いので高温のお風呂に長くつかる習慣やサウナはよくないといわれています。また、肌に密着したぴったりとした下着をつけたり、長時間自転車に乗ることも精巣の温度を上昇させ、不妊症の原因になると考えられています。


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不妊のセルフチェック項目についてご紹介しました。「不妊なのでは」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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