ギランバレー症候群の治療 「単純血漿交換」「グロブリン大量静注」とは?治療費の目安も解説

  • 作成:2016/08/22

ギランバレー症候群の治療には、免疫を調整する治療法が実施されます。「単純血漿交換療法」と「免疫グロブリン大量静注療法」という治療の概要や、保険適用になるかを含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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ギランバレー症候群の治療を知ろう

ギランバレー症候群は、治療可能?

ギランバレー症候群の約7割は、カンピロバクターなどの菌やウイルスの先行感染があるとされます。感染が引き金となって免疫系に異常が起こり、自分自身の神経細胞を破壊してしまいます。発症すると手足のしびれや麻痺などの症状が急速に表れますが、症状のピークは1カ月くらいまでにあり、後は、徐々に症状は治まります。8割のケースは半年以内に自然に回復するため、重篤な症状が見られない限り、治療は保存療法(手術などをせずに、経過を見守る方法)が基本です。

しかし約1割のケースでは、歩けなくなるなどの後遺症が残ります。特に、症状が急速に重症化するケースでは、人工呼吸器が必要になったり、重い後遺症が残ったりすることが多いため、その場合は早期に治療することが必要です。また、重症化している場合に、適切な治療が行われないと、自律神経の障害や血圧の異常が原因で、死にいたる場合もあります。

ギランバレー症候群の治療では、以前から神経の炎症を抑える目的でステロイド剤が使われていました。しかし、その効果は否定的とされ、現在は単独で使われることはありません。昨今では「免疫調整療法」(免疫のバランスを調整する治療法)が主に行われ、効果を示しています。

単純血漿交換療法とは?

ギランバレー症候群のほとんどのケースでは、感染した菌に対する抗体が誤って自分自身の神経細胞を攻撃してしまうので、これらの抗体を取り除く必要があります。このように血液中の有害な物質を取り除く目的で行うのが「血液浄化療法」です。ギランバレー症候群の治療で行われる「単純血漿交換療法」(たんじゅんけっしょうこうかんりょうほう)は血液浄化療法の一つです。

「血漿」とは血液中の液体成分のことで、血液中の有害な成分を血漿成分ごと取り除き、「ヒトアルブミン製剤」という薬、または新鮮な凍結血漿と入れ替えます。発症2週間以内に、軽症であれば2回、中等症または重症ならば4回行うのが一般的です。ただし、高齢者(体重40Kg以下)や子どもにはすすめられません。副作用として頻度の高いものには、低血圧やアレルギー、気分が悪くなる(悪心)、低Ca(カルシウム)血症などがあります。

免疫グロブリン大量静注療法とは?

「免疫グロブリン大量静注療法」という治療が実施されることもあります。「免疫グロブリン大量静注療法」とは、ヒト抗体である「免疫グロブリン」を血液に投与する方法です。免疫系を刺激し、弱っている免疫に対して、通常通りの働きを促す効果があります。ギランバレー症候群での治療効果は認められていますが、体内でどのように作用しているかについて詳しくはわかっていません。

歩行が困難になるなどの重症の場合に、発症から2週間以内にヒト免疫グロブリン製剤を5日間連続で点滴投与します。主な頻度の高い副作用は頭痛、肝機能障害、発熱、皮疹、悪心などです。有効な治療法であるのは事実ですが、薬がヒトの体液を元にしてつくられる血液製剤のため高価であるのが難点です。

治療費は保険適用になる?

単純血漿交換療法と免疫グロブリン大量静注療法は、発症して早いうちであれば、どちらも同じくらいの効果が期待できます。しかし単純血漿交換療法は特別な装置や専門の技師によって行う必要があり、また時間がかかるのが難点です。そのため比較的、準備が容易な免疫グロブリン大量静注療法が選択されることが多くなっています。

血液浄化療法や免疫グロブリン療法は、歩行困難などの重症度の高いケースで保険が適用されます。しかし実際には基準よりも重症度が低い場合でも、症状が急速に進んでいるケースでは治療に用いられることも多く、その場合には保険の適用が認められています。

保険が適用される症状の基準は、助けがあっても5メートル歩くことが困難な場合とされますが、免疫療法は発症してから1週間以内に行うと高い治療効果を示すため、重症化する以前でも行うことがあります。

また治療後いったんは筋力が回復したにもかかわらず、再度、症状が表れたりさらに悪化したりするケースが見られます。再度症状が現れたり、悪化した場合には発症初期同様の治療が必要です。この場合にも保険が適用されます。



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ギランバレー症候群の治療についてご紹介しました。手足の神経症状に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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