後陣痛の原因、症状、治療 予防可能?薬も関係?痛みの程度は?

  • 作成:2016/04/26

後陣痛は、出産後子宮が急激に収縮することで起きるとされています。痛みの程度や治療の必要性などを含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

平松晋介 監修
ちくご・ひらまつ産婦人科医院 院長
平松晋介 先生

この記事の目安時間は3分です

後陣痛は陣痛より痛い?

後陣痛の原因 急速な子宮の収縮?

通常の子宮の大きさは、縦7センチ、横3センチから4センチ、厚さ2センチ、重さ40グラム程度です。これが、臨月になると、縦32センチから35センチ、厚さ20センチから22センチになります。容量でみると通常時の約800倍、そして重さは約20倍になるといわれています。妊娠で大きくなった子宮は、分娩後、急速に収縮します。この急速な子宮の収縮により引き起こされる不規則な痛みが、後陣痛といわれています。

陣痛促進剤が影響することも

分娩後の痛みが引き起こされる直接の原因は、胎児や胎盤が体外に出されることによる「子宮内圧の消失」、そして「プロスタグランジン」「オキシトシン」という薬の作用、の2点があげられています。

「プロスタグランジン」「オキシトシン」は、どちらも体内に存在しているホルモンで、母体では、出産できる準備が整うと、これらのホルモンを分泌し、子宮を収縮させ、出産のための陣痛が始まります。プロスタグランジンは、人の組織や器官に存在し、主に血圧低下作用、筋肉収縮作用、黄体退行作用(生理を引き起こす作用)、血管拡張作用があります。オキシトシンは、脳の「下垂体」という部分から分泌され末梢神経に作用し、子宮の収縮を促す作用をもっています。どちらのホルモンも、薬剤では子宮の筋肉に作用し陣痛を引き起こす作用をもっており、陣痛促進剤あるいは子宮収縮剤として使用されています。

分娩時あるいは出産間近になっても、これらのホルモンが分泌されない場合、陣痛促進剤として使用されています。具体的には、破水してもなかなか陣痛が始まらず、感染症の恐れがある場合、妊娠42週目に達していても出産の兆候がまったくない場合、分娩時に子宮口の開きが進まず陣痛が弱い場合(母体の体力消耗によりますます陣痛が弱くなる場合)などに用いられます。

後陣痛の症状 陣痛より痛い?

後陣痛の症状は、子宮の位置、つまり下腹部のほぼ中心(骨盤の中央:おへそと太腿の付け根の間あたり)の痛みです。初産よりも、出産経験のある経産婦のほうが、痛みが強く、また授乳をすると痛みが増す、という傾向が出ています。痛みの継続期間は、数時間から数日間継続と様々です。ただし、ずっと続く痛みではなく数分程度の痛みがやってきて、そして治まります。痛みの強度は、「陣痛ほど痛くない」という人もいれば、「陣痛より痛い」という人もいて様々です。

後陣痛の治療

後陣痛は、分娩後、大きくなった子宮がもとのサイズにもどるという生理的現象ですので、通常は特別な治療を必要としません。ただし、痛みがひどく日常生活もままならないような場合は、出産した病院の産婦人科の担当医に相談してください。消炎鎮痛剤や抗生剤が処方されることがあります。

後陣痛を経験された方たちの体験談として、入浴、カイロ、湯たんぽ、腹巻などで腹部を温めたり、マッサージをするほか、クッションや枕などの使用やうつ伏せの姿勢で、少し腹部を圧迫すると痛みが軽減する方もあるようですので、辛い場合は試してみてもよいでしょう。

誰でも起きる後陣痛

後陣痛は、誰にでも起こることですので、必要以上に不安になる必要はありません。また、通常、授乳期間中、子宮を収縮させる「オキシトシン」というホルモンが分泌されていて、後陣痛の痛みが強くなることがあります。痛みが治まってから赤ちゃんに授乳をしましょう。産後の基本は、自宅でゆっくりと休養することです。無理をせず、家族や周囲の協力を得ながら、自然に回復するのを待ちましょう。

後陣痛は予防できる?

後陣痛は、子宮がもとの大きさにもどるという生理的現象のため、予防は難しいです。また、一般的に、初産より経産婦、出産回数を重ねるごとに後陣痛の痛みを強く感じる傾向が出ています。それは、経産婦の方が痛みが強い理由として、子宮は初産よりもやわらかくなっており子宮の回復が早い、つまり子宮収縮のスピードが早いといわれているためです。また、双子以上の多胎妊娠や羊水過多症(羊水が多い)の場合も、通常の妊娠よりも子宮が大きくなっているため、子宮収縮のスピードも速く、同様に後陣痛がより強く感じられる傾向が出ています。後陣痛は、その痛みの強度や継続期間そして出産回数に左右されますが、誰にでも起こりえます。周囲の理解を得ながら、乗り越えていくことが重要となります。

後陣痛の症状や治療の必要性についてご紹介しました。出産後の痛みがひどくて、不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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