掌蹠膿疱症の原因、症状、治療、薬 かゆい?薬が妊娠に影響?ストレスで発症?「ビオチン」の意味?関節炎につながる?

  • 作成:2016/03/02

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は白血球が刺激されて、手足に皮膚の症状が出る病気です。扁桃腺や虫歯が悪化要因になっているほか、治療薬の中には妊娠への影響を考慮して、使えないものがあります。掌蹠膿疱症の原因から症状、治療まで、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

掌蹠膿疱症の原因は?
掌蹠膿疱症の原因は何?
掌蹠膿疱症は難病なの?
掌蹠膿疱症とストレスは関係がある?
掌蹠膿疱症と扁桃腺の関係
掌蹠膿疱症の症状 かゆみや痛みが出る?爪(つめ)は?
掌蹠膿疱症での処方薬 作用と副作用
飲み薬はどんなもの?
掌蹠膿疱症に市販薬はある?効く?
掌蹠膿疱症に漢方薬はある?効く?
掌蹠膿疱症の「ビオチン治療」とはどんなもの?
掌蹠膿疱症は完治する?
掌蹠膿疱症は妊娠に影響?薬が問題?
「掌蹠膿疱症による関節炎」とは?

掌蹠膿疱症の原因は何?

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、発症しやすい遺伝子を持つ人に、悪化要因が加わり、白血球が皮膚に炎症をおこすように刺激されて、発症するものと考えられています。つまり発症しやすい体質の人に、悪条件が重なると、掌蹠膿疱症になるということです。持って生まれた遺伝子を変えることは今のところできませんが、本来、細菌やウイルスと戦うべき白血球を悪い方向に刺激してしまう要因をなくすことで、掌蹠膿疱症の症状を抑えていくことができると考えられています。

掌蹠膿疱症は難病なの?

掌蹠膿疱症はなかなか完治しにくい慢性疾患(症状の続く病気)ですが、命に関わるような症状はありませんので、「難病」には当てはまらないでしょう。しかし、重症例では手足の広い範囲に目立つ皮膚炎が出るだけでなく、関節にも炎症が起こる慢性疾患ですから、精神的にはとてもつらいところがあります。

少しでも軽くしたいのですが、もしあなたが煙草を吸っているのであれば、まず禁煙することを強くおすすめします。禁煙は掌蹠膿疱症の治療をするうえで、高い効果を発揮することがあります。同居の家族にヘビースモーカーがいても悪化しますから、協力してもらうことも大切です。

掌蹠膿疱症とストレスは関係がある?

ストレスが白血球の働きに影響を与えることは明らかになっていますので、「掌蹠膿疱症はストレスで悪化する」と言えます。見た目が水虫に似ており、なかなか完治しない病気なので、掌蹠膿疱症であること自体が心理的な大きなストレスになってしまう人もあります。薬を使って症状が改善すれば、それによりストレスが減って良い循環となることがあります。

掌蹠膿疱症と扁桃腺の関係

体の中に慢性の炎症があると、白血球が刺激されて掌蹠膿疱症は悪化しやすくなります。特に扁桃腺炎との関係はよく研究されています。耳鼻科を受診して検査を受けて、扁桃腺への刺激と、掌蹠膿疱症の悪化の関連がはっきりした場合には、扁桃摘出は掌蹠膿疱症に効果があることが知られています。同様に虫歯も悪化要因となりますから、虫歯は歯科にて治療することをおすすめします。

掌蹠膿疱症の症状 かゆみや痛みが出る?爪(つめ)は?

掌蹠膿疱症では主に手のひらと足の裏に、膿(うみ)のたまったような発疹と、赤みのあるカサカサとした発疹が出てきます。時には手や足の甲側や、下半身のすねなどにも発疹が出ることがあります。ブツブツとした発疹はいかにも膿が貯まっているように見えますが、痛みはなく、調べても細菌は存在していません。

また手足のカサカサとした発疹は軽度のかゆみがあり、水虫のようにも見えますが、いくら真菌検査(水虫の原因を探す検査)をしても、水虫の菌は見つかりません。爪が厚くなったり、点状のくぼみができることもあるので、「爪の水虫かも」と思ってしまう方もいますが、爪を検査しても水虫の菌は見つかることはありません。

掌蹠膿疱症での処方薬 作用と副作用

掌蹠膿疱症の塗る薬では「活性型ビタミンD3外用剤」と「ステロイド外用剤」というものがあります。「活性型ビタミンD3外用剤」は、皮膚の状態が悪いところに塗ると刺激により悪化することがありますから、まず、ステロイド外用剤で皮膚の炎症を抑えてから使うのが無難です。「活性型ビタミンD3外用剤」は症状の軽い部分に、広めに塗るのに向いています。効果が出てくるのに時間がかかるのが欠点ですが、長く塗ってもトラブルは起こりません。

「ステロイド外用剤」は手と足に塗るだけで、全身に影響が出ることはありませんが、塗っている部分にトラブルが出てくることはあります。知っておいてもらいたいのは、ステロイド外用剤は、塗った部分の感染症を悪くする薬であることです。ステロイド外用剤を細菌感染が起こってしまったところに塗ると、化膿して腫れて痛くなることがあります。「細菌感染なんて」と思っていても、ブツブツしたところを針でつくような行為をしているうちに、細菌感染を起こしていることがありますから注意しましょう。またステロイド外用剤を間違って水虫に塗っていると徐々に水虫は悪化してきます。掌蹠膿疱症と水虫の症状は似ていますから、皮膚科できっちりと診断を受けてから、薬を使うようにしないと、悪化したり、治らなかったりする可能性があります。

飲み薬はどんなもの?

病院で処方される内服薬(飲み薬)では、「チガソン」というビタミンA系統の薬、「コルヒチン」という細胞分裂を抑える薬剤、非ステロイド消炎鎮痛剤などが処方されます。治りにくい場合には、紫外線を用いた治療を行うこともあります。

最近では、掌蹠膿疱症が乾癬(かんせん)に類似した病気であることから、重症例では乾癬の治療薬である「シクロスポリン」や「TNF-α阻害薬」という種類の薬の効果が試されることもあります。ただ、乾癬用の薬を掌蹠膿疱症に対して処方された場合、通常の保険診療ではありません。自己負担が増えることになります。

掌蹠膿疱症に市販薬はある?効く?

皮膚の炎症を抑える「ステロイド外用剤」は、医師の処方がなくても、市販されています。ステロイド外用剤は皮膚炎を改善する効果があります。手のひらと足の裏の皮膚はとても厚くて薬の吸収が悪いので、掌蹠膿疱症の治療では、効果の高いステロイド剤を選ぶ必要がありますので、薬局で薬剤師に相談してください。ステロイド外用剤の使用にあたっては、「化膿性爪囲炎」といった病気や水虫などの感染症を悪くする薬であることは忘れないようにしてください。

掌蹠膿疱症に漢方薬はある?効く?

掌蹠膿疱症はなかなか完治しない性質があるので、時には漢方薬が処方されることもあります。掌蹠膿疱症は「漢方薬で体質を変えて完治させる」ということでなく、症状の悪い時に、内服して症状が良くなることを目標にしてします。漢方薬は個人の体質に合わせて処方されますので、同じ薬でも効果のある人とない人があります。1カ月程度内服してみて効果があるなら症状が落ち着いてくるまで継続してみましょう。

掌蹠膿疱症の「ビオチン治療」とはどんなもの?

一部の掌蹠膿疱症では「ビオチン」というビタミンを内服すると改善することがあります。ビオチンはビタミンの一種で、通常の食事をしていれば不足することはありません。ただ、ビオチンには特に大きな副作用はありませんから、試してみても良いでしょう。

掌蹠膿疱症は完治する?

残念ながら、掌蹠膿疱症ができやすい体質は遺伝子によって決まっているだろうと考えられています。しかし、外から作用している掌蹠膿疱症を悪くする要因を取り除くことができれば症状がなくなることもあります。悪化要因として、大きい原因は、喫煙と扁桃腺炎です。煙草を吸っているならまず禁煙し、扁桃腺炎があるなら耳鼻科で診てもらうようにしましょう。

掌蹠膿疱症の一部は金属アレルギーに関係しているという報告がありますが、掌蹠膿疱症は金属アレルギーだけで起きる病気ではないので、歯科金属を除去すると完治するということではありません。

掌蹠膿疱症は平均3年から7年で治まってくるとされているので、その間しっかり治療を行って、症状を軽くし、日常生活に負担をかけないようにするのが合理的です。

掌蹠膿疱症は妊娠に影響?薬が問題?

掌蹠膿疱症そのものと妊娠には関連性はありません。ただし処方薬である「コルヒチンとチガソン」は妊娠には特に気をつける必要があります。「コルヒチン」は細胞分裂を悪くする性質があるので、妊娠考えた段階で中止してください。

また、チガソンは胎児の奇形を引き起こすことがあり、また体に入ると脂肪組織中に長く残留する性質があるため、内服中止後少なくとも2年間は避妊する必要があります。男性の場合でもチガソン内服中止後6ヶ月間は避妊する必要があります。医学的には、若い方へのチガソンの利用を慎重に考える必要がありますので、不安な方は、医師に相談してみましょう。

「掌蹠膿疱症による関節炎」とは?

掌蹠膿疱症は白血球が炎症をおこす方向に刺激されて発症しますが、白血球が皮膚と同時に関節にも炎症を起こすことがあります。痛みは胸、首、腰に出やすく、整形外科の受診が必要となることもあります。なお掌蹠膿疱症による関節の炎症は、正しくは「掌蹠膿疱症性骨関節炎」とよばれています。

掌蹠膿疱症についてご紹介しました。皮膚の症状に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

症状や健康のお悩みについて
医師に直接相談できます

  • 24時間受付
  • 医師回答率99%以上

病気・症状名から記事を探す

その他
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、31万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師