腫瘍マーカー30項目と対応するがん、基準値 がん以外の可能性は?

  • 作成:2016/06/10

腫瘍マーカーは、がんの進行や治療効果をみるための検査です。腫瘍マーカーは、それぞれ対応するがんがありますが、がんでなくても、上昇する項目もあります。腫瘍マーカーの30項目について、対応しているがん、基準値や考え方を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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腫瘍マーカーに対応するがんを知ろう
腫瘍マーカーの基準値の考え方
腫瘍マーカー 頭文字AからC
腫瘍マーカー 頭文字DからN
腫瘍マーカー 頭文字PからT

腫瘍マーカーの基準値の考え方

腫瘍マーカーは、がんの進行や利用効果をみるための検査であり、がんの有無を判断するためのものとはいえません(腫瘍マーカーの検査の意味、費用、問題点については、https://www.askdoctors.jp/articles/200560で解説しています)。腫瘍マーカーの基準値はあくまで「全く問題がない」と言える数値です。基準値を超えたら必ず何らかの問題があるというわけではなく、追加検査が必要かどうかは他の腫瘍マーカーなどを比較して総合的に判断する必要があります。基準値を超えたら「注意」で、大きく超えたら「要検査」と理解すると良いでしょう。以下、主なマーカーをアルファベット順にご紹介します。基準値は測定方法によって異なりますので、目安としてください。

腫瘍マーカー 頭文字AからC

【AFP】
肝臓がんで増加する腫瘍マーカーです。20ng/ml以下が基準値で、200ng/mlを超えるとがんの可能性が高まります。基準値より少し高いぐらいであれば良いのですが、増え続けるようなら要注意でしょう。他の肝臓の病気でも高くなることがあります。400ng/mlを超えると確度が高まります。病院によってはAFPの中でも肝臓がんに特異的なL3分画だけ(L3というタイプのみを見ること)を測定することもあります。


【BCA225】
乳がんで増加する腫瘍マーカーです。160U/ml以下が基準値で、基準値を大きく上回っているような場合には要注意でしょう。進行度を把握するために用いられますが、確度は比較的高く、乳がんの検査では特に使われる事が多いです。


【BFP】
消化器系のがん、泌尿・生殖器系のがん、肺がんなどで増加する腫瘍マーカーです。75ng/ml以下が基準値で、基準値を上回るとがんの疑いが強まります。がん以外の病気でも数値が高まる事が多いため確度は低いですが、進行度合いを把握するために用いられます。病気の種類によっては、血液中のBFPではなく尿中のBFPを測定することもあります。


【CA15-3】
乳がんなどで増加する腫瘍マーカーです。25U/ml以下が基準値で、数値が高まるとがんの疑いが強くなります。乳がん以外のがんや病気でも数値が増加することあるため確度は低いですが、進行度合いや治療の効果を確認するには効果的です。


【CA19-9】
すい臓がんや消化器系のがんで増加する腫瘍マーカーです。37U/ml以下が基準値で、100U/mlを超えるとがんの可能性が高いです。ただし、膵炎(膵臓の炎症)などがん以外の消化器系疾患で数値が高まることもあるため、確度が高いとはいえません。


【CA50】
すい臓がんや胆道がんなどで増加する腫瘍マーカーです。40U/ml以下が基準値で、基準値を大きく上回る場合にはがんの可能性があります。透析患者や肝硬変などで数値が増加することもあるため注意が必要です。


【CA54/61】
卵巣がんなどで増加する腫瘍マーカーです。4U/ml以下が基準値で、大きく上回る場合にはがんを疑っても良いでしょう。卵巣がん以外にも、子宮頸がんや胃がんなどでも増加するマーカーですが、がん以外の病気で増加することはあまりなく、比較的確度の高いマーカーに分類されます。


【CA72-4】
卵巣がんや消化器系がんで増加する腫瘍マーカーです。4U/ml以下が基準値で、大きく上回る場合にはがんの可能性が高まります。健康な人や別の病気で増加する事が少ないため確度が高く、がんの再発や転移を確認するのに有用なマーカーです。


【CA125】
卵巣がんや子宮がんなどで増加する腫瘍マーカーです。基準値は40U/ml以下で、100U/mlを注意が必要です。胆道がんやすい臓がんでも増加します。ただ、子宮内膜症や腹膜炎などでも増加する上、月経中や妊娠でも増加することもあるため、確度は低めになります。しかし、すでに見つかったがんの進行度合いや追加検査の必要性を測るためには有用です。


【CA130】
肺がん、卵巣がん、すい臓がんなどで増加する腫瘍マーカーです。基準値は35U/ml以下で、大きく上回る場合には検査が必要です。がん以外にも子宮関係の病気で増加し、妊娠や月経などでも増加するため、がんを測る腫瘍マーカーとしては確度が低いです。


【CA602】
卵巣がん、子宮がん、肝臓がんなどで増加する腫瘍マーカーです。基準値は63U/ml以下で、200U/mlを超えると卵巣がんである確率が高まります。健常者で増加することは少ないですが、卵巣の良性腫瘍(がんは悪性の腫瘍)などで増加することもあるため、確度はそれほど高いわけではありません。


【CEA】
消化器系のがんを含めて非常に多くのがんで増加する腫瘍マーカーです。基準値は5ng/ml以下で、10ng/mlを超えると何らかの疾患を抱えている可能性が高まります。「がん胎児性抗原」とも呼ばれ、腫瘍マーカーの中では特に広く使われている腫瘍マーカーです。確度は高いとはいえませんが、がんを含め様々な腫瘍や病気の有無を測るために使われます。喫煙者や糖尿病の人ではCEAが上がりやすい傾向にあります。ですが、喫煙者や糖尿病の人はがんになりやすいため、CEAが高くてもタバコや糖尿病のせいにせず、精密検査を受けるようにしましょう。


【CYFRA】
肺がんなどで増加する腫瘍マーカーです。基準値は3.5U/ml以下で、大きく上回る場合にはがんの可能性が高くなります。肺がんでは早期発見が可能で、その他のがんに対しても増加します。がん以外の病気で増加する事が少ないため、確度は高めです。

腫瘍マーカー 頭文字DからN

【DUPAN-2】
すい臓がんや肝臓がんで増加する腫瘍マーカーです。基準値は150U/ml以下で、大きく上回る場合には注意が必要です。がん以外の病気でも数値が高まる事が多いため、確度は低いです。ただ、膵炎では数値が上がらない特徴があるため、すい臓がんかどうかを判別するのに有用です。


【hCG】
卵巣がん、精巣がん、肺がん、妊娠などで増加する腫瘍マーカーです。基準値は0.2ng/ml以下で、数値が高いと妊娠や何らかの病気が疑われます。がんを判別する腫瘍マーカーとしてよりも、女性の妊娠期間を判別するための指標として用いられることが多く、市販されている妊娠検査薬もこのhCGの量を測定しています。


【IAP 】
がんや血液疾患など様々な疾患で増加する腫瘍マーカーです。基準値は500μg/ml以下で、基準値より高いとがんなどの病気が疑われますが、基準値より極端に低い場合は、肝機能障害などのがんではないが重大な病気の可能性があります。加齢によっても増加するため、確度が低く、がんに対する腫瘍マーカーというよりは、各種病気を診断するために使われています。


【I-CTP】
がんの骨転移などで増加する腫瘍マーカーです。基準値は4.5ng/ml以下で、数値が高いと注意が必要です。がんの骨転移で数値が上がる腫瘍マーカーであり、がんを発見するためのマーカーではありません。また、骨髄腫や腎不全などでも増加します。


【KMO-1】
すい臓がん、肝臓がん、胃がんなど多数のがんで増加する腫瘍マーカーです。基準値は530U/ml以下で、大きく上回る場合にはがんを疑う必要があるでしょう。確度は比較的高いため、他の病気と対象となるがんを区別するのに有用です。


【NCC-ST-439】
消化器系のがんや乳がんで増加する腫瘍マーカーです。基準値は7U/ml以下で、数値が大きく高い場合にはがんを含めた病気の疑いがあります。肝炎や膵炎などでも数値が上がることもありますが、確度は比較的高いです。


【NSE】
肺がんや神経系の腫瘍で増加する腫瘍マーカーです。基準値は12ng/ml以下で、数値が大きい場合には注意が必要です。肺や神経系の病気が疑われる場合に補助的に数値を確認する場合が多く、治療開始後の経過を確認するためにも有用です。

腫瘍マーカー 頭文字PからT

【p53抗体】
食道がん、大腸がん、乳がんで増加する腫瘍マーカーです。基準値は1.3U/ml以下で、数値を大きく上回る場合にはがんの疑いが強まります。初期のがんでも発見できるメリットがあり、確度も比較的高いです。


【PAP】
前立腺がんで増加する腫瘍マーカーです。基準値は3ng/ml以下で、数値が高い場合には注意が必要です。前立腺がんの他にも、前立腺炎や前立腺肥大症でも数値が増加します。確度はそれほど高くないものの、「PSA」(後述)という腫瘍マーカーと共に用いられ、進行度のチェックや再発を発見するためにも有用です。


【PIVKA-Ⅱ】
肝臓がんなどで増加する腫瘍マーカーです。基準値は40mAU/ml以下で、大きく上回る場合には肝臓の異常が疑われます。肝臓がんの他、肝炎やビタミンK欠乏症で数値が上がります。がんを発見する腫瘍マーカーとしての確度は高くありませんが、肝臓がんの治療効果を確認するために使われます。


【ProGRP】
肺がんで増加する腫瘍マーカーです。基準値は80pg/ml以下で、大きく上回る場合には肺がんの恐れがあります。肺がん以外の病気で増加することはほとんどないため確度が高く、早期発見も可能な腫瘍マーカーです。


【PSA 】
前立腺がんで増加する腫瘍マーカーです。基準値は4ng/ml以下で、数値が高い場合には注意が必要です。前立腺炎や前立腺肥大症でも増加しますが、「PAP」という腫瘍マーカーと共に使われる事が多く、PAPより正確な診断が可能とされています。


【SPan-1抗原】
すい臓がんなどの消化器系がんで増加する腫瘍マーカーです。基準値は30U/ml以下で、大きく上回る場合にはすい臓や消化器に何らかの病気を抱えている可能性があります。がん以外にも肝炎や膵炎でも増加するものの、すい臓系の疾患では確度が比較的高いです。


【SCC】
子宮頸がん、肺がん、尿路・性器がん、皮膚がんなどで増加する腫瘍マーカーです。基準値は1.5ng/ml以下で、大きく上回る場合にはがんを疑う必要があります。上皮にできるタイプの各種がんで数値が増加する事が多いです。確度が高い方ではあるものの、他の腫瘍マーカーと同様に複数の腫瘍マーカーと組み合わせて使うことが多いです。


【SLX 】
すい臓がん、消化器系がん、肺がん、乳がん、卵巣がんなどで増加する腫瘍マーカーです。基準値は38U/ml以下で、数値が高い場合にはがんの疑いが高まります。がん以外の疾患で数値が増加するケースが比較的少ないため確度が高く、他の腫瘍マーカーと合わせてがんの進行度合いを確認できるのが特徴です。


【STN】
子宮がん、卵巣がん、胃がん、大腸がんなどで増加する腫瘍マーカーです。基準値は45U/ml以下で、大きく上回る場合にはがんを疑っても良いでしょう。がん以外にも胆石や呼吸器系の病気でも増加しますが、がん以外で数値が大きく増加する事は少ないために確度は高く、精密検査の必要性を判断するのにも役立ちます。


【TPA】
子宮がん、乳がん、肺がん、消化器系のがんなどで増加する腫瘍マーカーです。基準値は70U/ml以下で、大きく上回る場合には精密検査が必要になるでしょう。肝硬変や肝炎などで上昇することもありますが、がんの増減で大きく変化する腫瘍マーカーであるため、がんの進行度合いを確認するのに有用です。

腫瘍マーカーの項目や意味合いについてご紹介しました。腫瘍マーカーの値の見方がわからず不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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