胃がんの検査と診断 血液検査、バリウム、胃カメラで判明?費用は?腫瘍マーカーの項目、「HER2」の意味も解説

  • 作成:2016/07/08

胃がんは、自覚症状の乏しいがんですが、他のがんと同様、早期発見、早期治療が重要となります。血液検査、バリウム、胃カメラ検査の概要や意味に加え、市販検査キットの概要や、診断方法を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

胃がんの検査を知ろう
胃がんの早期発見の重要性
胃がんの検診の概要
胃がんは血液検査でわかる?腫瘍マーカーでわかる?
HER2とは?胃がんとどう関係?
胃がんはバリウムでわかる?費用はどれくらい?
胃がんは胃カメラでわかる?費用はどれくらい?
胃がんには市販の検査キットがある?メカニズムと費用、確度
胃がんの確定診断とは?レントゲンやCTを使う?

胃がんの早期発見の重要性

胃がんに限ったことではありませんが、がんには病期分類(ステージ分類)があります。胃がんの場合、ステージごとの5年生存率(治療開始から5年後の生存率)はステージIで90%以上ですが、ステージIIでは70%程度、ステージIIIBで30%、ステージIVでは15%まで下がってしまいます。このことからも、胃がんの早期発見と治療が、その後の患者さんの人生を大きく左右することは言うまでもありません。

また、2cm以下の粘膜に留まっている「分化型」と呼ばれる早期がんであれば、外科的なお腹を開ける手術ではなく、胃カメラのように内視鏡による治療が可能です。治療の面においても、患者さんの負担は大きく異なり、早期発見がとても大切になります。胃がんの早期発見のためには、胃の不快感や食欲不振などちょっとした変化に気付けることや、定期的な検診(X線や内視鏡検査)を受けることが重要になります。特に胃がんの好発年齢である40歳以降では、定期的に内視鏡検査を受けることをお勧めします。

胃がんの検診の概要

胃がん検診は男性女性ともに40歳以上が対象となります。市町村や職場で行われている検診では、まず胃のX線検査が一次検診として実施されています。X線検査はいわゆる「レントゲン」のことであり、胃を観察するために発泡性のあるバリウムという造影剤を飲んで検査します。X線検査で異常がなければ、また1年後の検診となりますが、何らかの異常が疑われれば、より詳しく胃を観察するために胃の内視鏡検査を行います。内視鏡検査はいわゆる「胃カメラ」のことですが、一部の市町村ではX線検査を省略して、初めから胃内視鏡検査を実施している地域もあります。内視鏡検査でがんだと診断されれば治療を行っていきますが、「異常なし」あるいは「治療の必要のない良性の病変」と判断されれば、1年後の検診ということになります。

胃がんは血液検査でわかる?腫瘍マーカーでわかる?

一般的に行われる血液検査や生化学検査では、貧血や低蛋白血症など、胃がんに伴って起きる二次的な異常の症状を発見できることはありますが、胃がんに特徴的なものはありません。また、出血を伴っている場合には、便潜血反応で「陽性」を示すことが多いです。したがって、血液検査がきっかけとなって、異常が発見され、精密検査を進める過程で、「胃がん」と診断されることがあります。

胃がんの腫瘍マーカーとしては、CEAやCA19-9などがありますが、早期がんではこれらの値は陰性であることが多く、進行している場合でも陽性率は高くないため、早期発見や確定診断には向きません。そのため、腫瘍マーカーは、胃がんを発見するためというより、治療効果の判定や再発の指標として用いられています。

HER2とは?胃がんとどう関係?

胃がんの話の中で、「HER2」という言葉を聞く場合があります。「HER2(human epithelial growth factor receptor type2)」とは、もともと細胞の増殖調節機能を担っているタンパク質であり、HER2が過剰発現している乳がんでは分子標的薬である「トラスツズマブ」という薬が有効とされています。一部の胃がんでもHER2の過剰発現が認められており、国際的に行われたToGA試験(日本を含む24カ国のがん患者を対象とした試験)では、HER2陽性の胃がん患者においてトラスツズマブの有効性が示されました。そのため、胃がんの検査の過程で、HER2を調べる可能性があります。

*ToGA試験の論文(リンク先英文、専門家向け)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20728210

胃がんはバリウムでわかる?費用はどれくらい?

検診等でも最も一般的な検査が胃のX線検査になります。肺などを見るX線検査とは異なり、胃を評価するためには造影剤である「バリウム」と、胃を膨らませるために炭酸ガスを発生させる発泡剤を飲みます。よくげっぷを我慢するようにと指示がありますが、発泡剤で胃を膨らませることで、胃の粘膜を見やすくするためです。また、検査では仰向けや横向きなどいろいろな方向を向きますが、これもバリウムをまんべんなく胃の粘膜に付着させるためです。胃の粘膜に付着した造影剤によって、胃粘膜の状態を評価します。胃の壁の不整(胃の壁がなめらかでない状態)など異常が認められれば、より具体的に診断を行うために、胃カメラ等の詳しい検査を行っていくこととなります。胃カメラ同様に胃の内部を観察することが目的ですので、食事や飲み物の制限はあります。費用に関しては保険診療で行い、3割負担の場合でおよそ3,000円から5,000円程度となります。

胃がんは胃カメラでわかる?費用はどれくらい?

X線検査は、実際に胃の内部を観察しているわけではないので、直接胃の粘膜を観察する胃カメラは小さな病変(病気による変化)を見つける上でも優れています。一部の市町村では、X線検査に代えて胃カメラを胃がん検診として実施しています。

胃カメラは正式には、「胃内視鏡検査」と言いますが、 小型のカメラが先端についた細い管(5mmから10mm程度)を、口あるいは鼻から挿入し、食道、胃、十二指腸を直接観察します。また、胃カメラの先端には、胃の組織をつまんで採取できるような器具も取り付けることも可能であり、疑わしい病変があればその場で採取して検査することができます。組織をとって調べる検査を「生検」と呼びます。

胃カメラの流れとしては、まず検査時の喉を通過するときの苦しさを和らげるために咽頭麻酔を行います。咽頭麻酔は霧吹きのようなもので喉に吹きかけるので、痛みはありません。最近では苦痛を緩和するために、患者さんの希望があれば静脈麻酔を行って、寝ている間に検査を実施できる施設も増えています。検査自体は特別な処置を行わなければ10分程度で終了します。胃内を観察することが目的ですので、検査前の食事や飲み物の制限があります。それぞれの医療機関の指示に従うようにしてください。

費用に関しては基本的に保険診療となりますので、3割負担で5,000円から6,000円程度です。生検を行った場合では、8,000円から12,000円程度の負担となります。

胃がんには市販の検査キットがある?メカニズムと費用、確度

現在市販されている胃がんの検査キットには、血液中の「ペプシノゲン」という物質の濃度を測定して胃が萎縮するタイプの炎症を起こしている可能性を評価するものや、ピロリ菌の検査キットがあります。市販の検査キットには大きく2つの方法があります。1つは検査の結果判定まで個人でおこなうものです。もう1つは採取した検体を郵送で「登録衛生検査所」と呼ばれる場所に送って結果を通知してもらうものです。費用の面でも前者に比べて後者のほうが高くなります。胃がんに限らずがんは早期発見・治療できるかが非常に重要であり、その後の人生も左右するものです。確かに自己判断で検査を行うものに比べて、専門機関で検査してもらうほうが、精度や信頼性は高いといえますが、やはり心配であれば、定期的に医療機関を受診して検査することが一番良い選択と言えます。

胃がんの確定診断とは?レントゲンやCTを使う?

胃がんの確定診断は現在のところ内視鏡検査で行うことが一般的となっています。内視鏡で胃の粘膜を観察し、疑わしい部分があれば一部採取し顕微鏡でがんの有無を診断します。胃がんの診断が得られた場合には、診断だけでは治療方針を決定できませんので、さらに病期(ステージ)を決定していきます。CTなどを用いて転移がないか、転移しやすいリンパ節の腫れがないかを含めて、全身的な検索を行っていきます。現在のところ、血液検査によってピロリ菌の有無などから胃がんになりやすいかなど参考的なことは分かりますが、腫瘍マーカーも含めて血液検査では胃がんの診断はできません。したがって、確定診断には内視鏡検査による組織の病理検査が必須となります。


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胃がんについての検査や診断などをご紹介しました。胃の痛みに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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