進行胃がんの症状 腹水は危険?貧血、吐血の理由、末期の特徴 体重減少のメカニズムも解説

  • 作成:2016/07/12

胃がんは進行すると、多様な症状が出て、食べても嘔吐を繰り返すようになることがあります。腹水や、貧血、吐血の理由、末期症状の概要を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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進行した胃がんの症状はどんなもの?
進行した胃がんの症状 食べても嘔吐することも
進行胃がんで起きる体重減少
胃がんと出血の関係 吐血や貧血が起きることも
腹水はどんな場合に起きる?便秘や吐き気とも関係?
胃がんの末期症状の概要

進行した胃がんの症状 食べても嘔吐することも

症状が進んだ胃がんは「進行胃がん」とよばれます(なお、初期症状などについては、こちらで解説しています)。進行胃がんになると、がんは成長して、粘膜の下にある層にまで届くようになります。胃を包んでいる膜の、どの深さにまでがんが達しているかによって、胃がんの進行度はいくつかのステージに分けられます。より外側にある層に達しているほど、胃がんの症状は進行していると言えます。

進行胃がんになっても、自覚症状がないままのこともあります。ただし胃がんができる場所によっては明らかな症状があり、特にがんが胃の入り口や出口に近いところにできていれば、気づきやすくなります。しかし胃は大きな臓器であり、それ以外のところにがんが生じると、症状は出にくくなります。

胃の中でも食道に近いところにがんができると、食べ物がスムーズに胃に入らなくなってしまい、食後に物が詰まったり、食べ物がこみ上げてきたりします。がんがさらに大きくなって、胃の中の大きな位置を占めてしまうと、食べられない、または食べても吐いてしまうなどの症状が出ます。

進行胃がんになると、内視鏡検査をすれば一目でわかるような異常が生じています。粘膜の一部が隆起してこぶのようになっていたり、潰瘍を起こしたところが白くなったり、また血が固まったりしています。さらにがんが成長すると、より外側の膜にまで達して他の臓器に転移しやすくなります。

進行胃がんで起きる体重減少

進行胃がんでよくある自覚症状の一つが、体重の減少です。がんが大きくなると、十分に食べることができない、また気持ちが悪い、吐いてしまうなどの症状が続き、食べ物を受けつけなくなるために徐々にやせていきます。十分に食べていたとしても、栄養が、がん細胞の増殖に使われてしまい、痩せていくことがあります。

胃がんと出血の関係 吐血や貧血が起きることも

さらに、進行胃がんでは、全身がだるい、疲れるなどの症状を訴えることがあります。これらは胃がんの病変から出血をしていることが原因です。出血が続くと体への負担が大きく、慢性的に倦怠感や疲労感が抜けません。

また、出血が続くと便が、赤黒い色をしたタール状になります。これは血液中のヘモグロビンという成分が酸化すると色が変化して、黒いタールのようになるためです。このような便の症状は、かなりの出血が起きていることの証拠なので、早々に医療機関を受診する必要があります。大便に混じった血の色は消化器をどれくらい経て出てきたかと、関係があります。もし、便が黒いというより、はっきりとした赤味を帯びた血便である場合は、胃がんというよりは、より肛門に近いところで起きている病気、たとえば大腸がんや痔の疑いが出てきます。

また、胃がんが出血を起こしていると、口からコーヒー色の血を吐くこともあります。出血が続くことで貧血の症状も出ます。貧血がきっかけで精密検査をして、胃がんが発見されることもあります。急速に血圧が低下する恐れもありますから、貧血気味であったり便に異常があったりした場合には、胃がんの可能性も考えて、一度医療機関を受診してみるとよいでしょう。

出血に伴う症状は胃潰瘍が原因でも起こりますが、仮に胃潰瘍であったとしても、かなり進行している証拠ですから、早急に内視鏡検査が必要です。

腹水はどんな場合に起きる?便秘や吐き気とも関係?

胃がんの症状が進むと、がんが成長して胃の粘膜を破ってしまうことがあります。胃を作っている膜は何層にもなっていて、最も外側(食べ物と接する反対側)には「漿膜(しょうまく)」とよばれる膜があります。漿膜にまでがんが達してしまうと、ここを通っているリンパ管に触れやすくなります。リンパ管は、免疫に関係した「リンパ液」という液体を全身に送るための管なので、漿膜まで達すると、がんが他の臓器に転移しやすくなります。

胃がんにはいくつかタイプがあり、50歳以上の成人に多く見られるのは「分化型胃がん」と呼ばれるものです。これはヘリコバクター・ピロリの感染が引き金で発症する場合が多く、血液中にがん細胞が入り込んで転移することがあります。

一方、若い人が発症しやすい「未分化型胃がん」と言うタイプがあります。未分化型は、分化型に比べて、進行が早い特徴があります。また、未分化型の場合、リンパ節に転移したり、腹腔内に広がったりしやすいがんといわれています。腹腔内にがん細胞が飛び散ると、「がん性腹膜炎(がんによる腹膜炎)」という病気を起こすことがあります。がんによって腹膜炎が起きると、お腹の中に「腹水」という水が溜まってしまいます。検査をすると、腹水からがん細胞が検出されます。胃がんの再発では最も多く見られる症状です。

癌性腹膜炎になるとお腹に水が溜まるだけではありません。おなかの中にたまった液体は、腸管や尿管を圧迫して、イレウス(腸閉塞)を起こす場合があります。腸閉塞を起こすと腹痛や嘔吐だけでなく、おならや便が出なくなるという症状が出ます。なお、がん性腹膜炎は胃がんだけではなく、大腸がんや卵巣がんなどの他のがんが原因で起こることもあります。

胃がんの末期症状の概要

進行胃がんの治療の第一選択肢は、胃の一部、または全部の外科的な摘出手術です。しかし胃がんの進行程度や種類によっては「転移」を起こして、再発することがあります。胃がんの場合、「末期」は、一般的にステージIVを指します。ステージIVとは、おおまかに以下のような場合が該当します。

・胃から遠くの臓器や組織へ転移している
・胃の遠くにあるリンパ節に転移がある

つまり、胃がんの末期は、一般的に「遠くの臓器やリンパ節に転移した状態」といえます。転移は、別の原稿で詳しく解説(https://www.askdoctors.jp/articles/200851)していますので、ここでは転移の種類の概要を説明します。

がん細胞が血液中に入り込むと、肺や肝臓などに到達しがんを発症することがあります。さらにがんは転移し、全身に広がることがあります

がん細胞が胃の外側の膜を破って腹腔内に飛び散った場合には、がん性腹膜炎を起こすことがあります。また女性では子宮の近く、男性では膀胱の近くの腹腔内でがんを形成したりします。

さらに若い人に多く見られる、リンパ節に転移しやすいタイプの「未分化型」のがんの場合には、がん細胞がリンパ節に入り込んで、体の広範囲に転移が起こりやすくなり、卵巣や鎖骨の上にあるリンパ節に転移することがあります。

転移があった場合には、それぞれの部位に応じた症状が出ます。治療には必要に応じて、それらの臓器の摘出手術が行われることもあります。ただし、他臓器も含めた広範囲にがんが広がっている場合には、摘出手術ができないこともあり、この場合には抗がん剤による化学療法による治療をすることになります。


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進行した胃がんの症状などをご紹介しました。胃の痛みに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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