タバコを吸う人に多い肺気腫の症状と治療法

  • 作成:2016/09/01

肺気腫(はいきしゅ)は、肺の中にある肺胞(はいほう)が破壊されることにより、息切れ、せき、たんが出る病気です。この病気なる人の80%~90%がタバコを吸った経験があることから、喫煙が大きな原因の一つと考えられています。肺気腫の症状や原因、治療法についてご紹介します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

肺気腫で苦しむ高齢者

目次

肺気腫の症状はどんなもの?

肺気腫の最もよく見られる症状は、息切れです。肺気腫によって肺の機能が落ちると、息を吐いたり息を吸ったりすることがだんだん難しくなり、少し運動しただけでもすぐに息苦しさを感じるようになります。

肺気腫は比較的高齢になってから発症する傾向にある疾病のため、息苦しさを感じても「歳のせいかな?」と考えて思い過ごしてしまうことが多いようです。

息苦しさのほかは、咳、たん、急な痩身などの症状が起こります。咳とたんの症状は、肺気腫の病状が急に進んだときなどに現れやすい傾向にあります。なお、肺気腫の症状は風邪などの感染症にかかったときに急激に悪化しやすくなります。

肺気腫の重い症状とは

肺気腫が重症化すると、低酸素により肺の血管が収縮を起こし、体内を巡る血のめぐりが停滞するため、顔や手足などにむくみが起こります。この状態を『肺性心(はいせいしん)』と呼びます。

低酸素状態があまりに長く続くと、血中に二酸化炭素が蓄積し、『CO2ナルコーシス』という意識障害を起こすこともあり危険です。このような重い症状が起こる前に医療機関を受診し、治療を始めることが重要です。


肺気腫による身体の変化

また、肺気腫は身体にさまざまな悪影響を及ぼすこともあります。体力や体温、免疫量が下がり肺炎や気管支炎にかかりやすくなること、血行が悪くなるために虚血性(きょけつせい)の心疾患を起こしやすくなることなどです。

筋肉が落ちて体重が減る、首を支える筋肉である胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)が肥大する、首が太くなったように見えるなど、体型の変化が起こる場合もあります。

肺気腫の原因は『肺胞』が壊れること

肺の中には、『肺胞(はいほう)』と呼ばれる小さな部屋状の部位が数億個あります。

肺胞の内部には毛細血管が縦横無尽に通っていて、呼吸によって吸い込んだ空気から酸素を血液の中に取り込む働きと、血中の二酸化炭素を排出する働きを担っています。

しかし、この肺胞が破壊されて少なくなると、血中に酸素を取り込み二酸化炭素を追い出す効率が著しく低下し、たくさん呼吸をしてもつねに酸素が不足する状態になってしまいます。これが肺気腫のメカニズムです。


肺胞が壊れる原因はタバコ

肺胞が破壊される一番の原因は、タバコを吸うことです。肺気腫の患者さんの80%から90%ほどが喫煙者あるいは喫煙歴のある人であることから、タバコを吸うことが肺気腫の発症に関連していると考えられています。

もともと肺には免疫機能をつかさどる白血球がたくさん住んでいて、体内に有害物質や微生物が入り込まないように働いています。この白血球には、タバコの煙に含まれる毒素によって活発化する性質があります。

そう聞くと白血球の免疫機能がアップしそうなイメージがありますが実はそうではなく、むしろ体に悪い影響を及ぼします。なぜなら、過剰に活発化した白血球は自分自身の肺胞の壁を溶かし、肺胞を破壊していくからです。

このようにして少しずつ肺胞が破壊されていくと、いずれ肺気腫に進展してしまいます。肺胞の破壊には長い期間がかかるため、40代から50代ごろになって肺気腫を発症するケースが大半です。

とはいえ、タバコを吸う人が必ず肺気腫を起こすわけではないのも事実で、喫煙者のどのような人が肺気腫になりやすく、どのような人が肺気腫になりにくいのかは、遺伝や体質によるところが大きいようです。


タバコ以外の肺気腫の原因

また、汚染された大気に含まれる有害物質やアスベストなども、タバコの煙と同じように肺胞を破壊する原因となります。このことが、非喫煙者が肺気腫を発症する原因のひとつではないかと考えられています。

肺気腫の種類とCOPDについて

肺気腫は、大きく分類すると3種類に分けることができます。

1つめは、『巣状型肺気腫(たんじょうがたはいきしゅ)』です。

このタイプは、結核などの肺疾患の影響で固くなってしまった組織の周辺にある肺胞が機能しなくなることにより起こる肺気腫です。肺機能障害としては最も症状が軽いケースに当たります。

2つめは、『小葉中心型肺気腫(しょうようちゅうしんがたはいきしゅ)』です。

このタイプの肺気腫は、気管支の末端である『呼吸細気管支(こきゅうさいきかんし)』とその周りにある肺胞が破壊され、大きな気腔(空洞のスペース)ができてしまうことによって起こります。このタイプは、比較的若い年齢から発症する傾向にあります。

3つめは、『汎小葉型肺気腫(ぼんしょうようがたはいきしゅ)』です。

このタイプは小葉中心型肺気腫よりも肺胞などの組織の破壊が進んで、呼吸細気管支よりもさらに奥にある『肺胞道(はいほうどう)』にまで破壊が及んだ状態です。

このタイプでも肺の中に気腔ができますが、小葉中心型肺気腫の気腔よりももっと大きなものが生じます。汎小葉型肺気腫は3つのタイプの肺気腫の中でも最も症状が重く、比較的高齢になってから発症する傾向にあります。


肺気腫のCOPDの一種

肺気腫の人は、『慢性気管支炎(まんせいきかんしえん)』という病気を同時にかかっていることもあります。この種類の肺の慢性的な疾患状態を『COPD』と呼びます。

慢性的とは、症状があまり重くない一方で、いつも症状が出ていて直りにくい状態をいいます

COPDとは『Chronic Obstructive Pulmonary Disease』の略です。COPDは、日本語では『慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)』と呼ばれます。日本では、40歳以上の約10人に1人がCOPDにかかっていると考えられています。

COPDの患者さんはそうでない人よりも肺がんになりやすく、そのリスクはなんと10倍と言われています。肺がんだけでなく、心疾患や骨粗しょう症(こつそしょうしょう)、糖尿病など様々な病気にかかりやすくなるようです。

また、COPDは様々な病気の治療をする妨げになり、しかも病気の悪化するスピードまで上昇させます。COPDは、あらゆる面で健康を損なう、二次被害を及ぼしやすい病気と言えますね。

肺気腫の治療方法について

一度破壊された肺胞は、残念ながら二度と修復できません。そのため、肺気腫の患者さんの肺を、発病前のまっさらな状態に戻す治療法はありません。したがって、肺気腫の治療とは“さらなる病気の進行を止めること”が目的となります。

肺気腫の進行を止めるための第一歩は、喫煙を完全にやめることです。また、副流煙を吸うことも肺気腫を進行させるため、身のまわりの人の喫煙者にも協力してもらいタバコの煙を一切吸わない環境をつくる必要があります。

発症の原因が喫煙ではなく大気汚染やアスベストなどの場合も同様に、肺胞を破壊する有害物質を生活環境から除りのぞくことが治療の第一歩です。


薬剤を使った肺気腫の治療

息切れなどの症状に対しては、病状や症状の重さに合わせて対処療法を行います。息切れの症状がつらい場合は、気道の筋肉を緩めて呼気の通りをよくする『気管支拡張剤(きかんしかくちょうざい)』を使います。

気管支拡張剤には『抗コリン薬』に分類されるものと『β2刺激薬』に分類されるものがありますが、肺気腫に比較的よく用いられるのは抗コリン薬です。なお、気管支拡張剤にはたんや咳をおさえる効果もあります。


酸素を吸い込む治療法

症状が重くなり、少し歩いただけで息切れするなど日常生活に支障をきたすようになった場合は、『在宅酸素療法(ざいたくさんそりょうほう)』を行います。

在宅酸素療法とは、自宅で酸素を吸入する、および外出時などに小型の酸素を携帯し使用することで息苦しさを緩和する方法です。在宅酸素療法によって、肺気腫の患者さんの行動できる範囲は飛躍的に広がります。


手術による肺気腫の治療

また最近では、肺気腫の症状を軽くする外科手術の方法が確立されています。この手術は『LVRS』と呼ばれます。

LVRSは、肺気腫にかかった肺の一部を切除して肺の容量を減らし、機能しなくなっていた横隔膜などの働きを復活させるという手術です。この手術により、呼吸状態の改善が期待できます。

原則として、この手術を受けることができるのは75歳以下の患者さんだけです。そして、3ヶ月以上の禁煙を継続していることが条件となっています。


肺気腫の治療には運動も有効

ここまでに紹介した治療法はいずれも医療機関で行われるものですが、生活の中で実践できる症状改善法もあります。

たとえば、軽いウォーキングやストレッチなどの適度な運動。息切れが苦しいとついつい運動をしなくなる患者さんが多いですが、運動量が落ちると体力や筋肉の活動量も低下し、いっそう息切れが強くなってしまいます。

これを防ぐため、少しずつでも体を動かすよう心がけましょう。

他にも、腹式呼吸による呼吸リハビリ、食事療法、自律訓練によるリラクゼーションなど、肺気腫ケアのためにできる取組みはいくつもあります。

肺気腫の最大の予防法は禁煙

最も効果的な肺気腫の予防法は、もちろん禁煙することです。健康のためを思うなら、できる限りタバコを吸わない生活を送りましょう。

また、喫煙歴が長い人、息切れや喉のイガイガをよく感じる人は、一度病院で検査を受けることをおすすめします。

家族などの身近な人が喫煙者で副流煙を日常的に吸っている人は、喫煙する人に分煙をしてもらう、喫煙に関するルールを作り守ってもらうなどして、タバコの煙による影響を避けましょう。 可能であれば、タバコをやめてもらうことも考えてみてください。


自力で禁煙できなければ医師に相談

自力での禁煙は一般的に難しく、その成功率はわずか6%程度と言われています。真剣に禁煙を考えるなら、禁煙外来を受診し医師と一緒に禁煙に取り組むのがおすすめです。

また、肺気腫の治療方法として紹介した適度な運動、腹式呼吸や深呼吸、リラクゼーションなどの習慣は、肺気腫の予防にも役立ちます。


定期的な予防接種も重要

そして肺気腫にすでにかかった人は、感染症の予防に力を入れて取り組みましょう。風邪やインフルエンザ、肺炎などの感染症は、肺気腫を急激に悪化させる原因となります。

肺気腫を重症化させないためにも、インフルエンザワクチンの定期的な接種、こまめな手洗い・うがい、マスクの着用などを心がけましょう。また、感染症にかかっている人と密接に関わらないことも大切です。

そして何より、十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事、規則正しい生活を心がけ、免疫力が低下しないよう注意してください。肺気腫を発症したあとはただでさえ免疫力が低下しています。さらなる低下を避けるため、健康的な生活を実践していきましょう。


最後に

肺気腫の症状と治療法についてご紹介しました。禁煙が一番の治療法ですが、なかなか成功できないた方もいます。そんな時は医師の協力をあおぐことも方法の一つです。肺気腫の不安がある方や、この病気に対する疑問が解消されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか。

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