慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性憎悪の原因、症状、治療、予防 ステロイドを使うのはなぜ?

  • 作成:2016/08/19

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、治療によって、ある程度症状を安定させることが可能です。急性憎悪について、原因、症状、治療、予防をまとめて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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COPDの急性憎悪の原因とは?

目次

COPDの急性憎悪の原因、症状

COPDの患者さんでは、薬の吸入などによって安定した経過をおくっていても、風邪やインフルエンザ、あるいは喘息の発作などをきっかけに急に症状が悪化することがあります。このようにCOPDの症状が急に悪化することを「急性増悪(きゅうせいぞうあく)」と呼びます。

ある程度進行したCOPDの患者さんの肺は健康な人の肺に比べて抵抗力が弱く、同じ風邪をひいても肺炎にまで悪化しやすかったり、息切れが悪化しやすい傾向があります。また肺炎を起こすと治りにくく、そのまま生命の危険にさらされる場合もめずらしくはありません。

COPDの急性増悪では、風邪症状などをきっかけに、咳、痰、息切れなどの症状が急激に悪化することが特徴です。急性増悪のきっかけで最も多いのは風邪などの呼吸器感染症ですが、30%の患者さんでは原因が特定できません。普段の咳、息切れ、痰などの症状が悪化するほか、喘鳴の出現や呼吸数、心拍数の増加などを認めます。また急性増悪の場合、静脈血酸素飽和度を測定すると、血液中の酸素濃度が低下しています。

COPDの急性増悪は、しばしば入院治療が必要になるため、少しでも体調がおかしいと感じたらすぐにかかりつけの病院を受診することが大切です。

COPDの急性憎悪の治療 ステロイドが有効?

COPDの急性増悪が起こった場合、症状が軽い場合は通院による治療になるケースもありますが、高齢者の場合や呼吸困難が急速に悪化している患者さん、不整脈やチアノーゼ(体の皮膚や粘膜が青紫色になること)、浮腫(むくみ)が出現した場合、重大な合併症がある場合などは入院し治療を行います。

COPDの急性増悪に対する治療の基本は「ABCアプローチ」(抗菌薬:antibiotics、気管支拡張 薬:bronchodilators、ステロイド:corticosteroids)と呼ばれています。

呼吸困難に対する治療薬の第一選択(もっとも優先的に選択される治療法)は、気管支拡張薬の吸入です。また呼吸困難が高度な例や、入院治療が必要な患者さんの場合は、ステロイドの点滴や内服が行われます。ステロイドは強力な抗炎症作用(こうえんしょうさよう:身体に起こった炎症を抑える効果)を持っており、急性増悪の原因となっている気管支の炎症を抑えて症状を軽くする効果を持っています。

急性増悪の原因として、細菌感染が疑われる場合、黄色っぽいドロドロした痰が排出されるようになり、多くは発熱を伴います。このように細菌感染が疑われる場合は治療として、抗菌薬が投与されます。

COPDの急性憎悪の予防方法

COPDの急性増悪はいったん起こってしまうと入院するケースも多く、生命に関わる事態になる患者さんも珍しくないため、予防が非常に重要になります。

急性増悪の予防では、残された肺の機能を高め、感染症にかかりにくく、悪化しにくい身体づくりが基本になります。具体的には禁煙、規則正しい生活や適度な運動、呼吸器リハビリテーションなどを日常的にしっかりと実行することが必要です。

その上でインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンなど予防接種を受けます。ワクチンの接種で100%感染を防ぐことができるわけではありませんが、万が一感染した場合に症状の悪化を防ぎ、死亡率を低下させる効果があると考えられているため、COPDの患者さんには積極的な接種が勧められています。

また、病院から処方されている気管支拡張薬やステロイドの吸入薬について、普段症状がないとついつい吸入を忘れがちになる方がいらっしゃいます。吸入を怠っていたために、知らず知らずのうちに少しずつ肺機能が低下し、風邪などをきっかけに容易に急性増悪を起こすケースが多くあり大変危険です。症状がなくても、普段から指示通りに吸入を行うことが非常に大切です。



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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性憎悪についてご紹介しました。咳が続くなどして、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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