日本脳炎予防接種の効果、副反応 ADEMや死亡の確率は?時期、回数、年齢、料金、同時接種、受け忘れなどの対応も解説

  • 作成:2016/07/21

日本脳炎のワクチンは、現在、「積極的勧奨」の状態、つまり、国によって受けることを積極的にすすめられている状況です。副反応(薬でいう副作用)が起きることもありますし、接種後に死亡することがないわけではありません。受けるメリットやデメリット、接種時期、回数なども含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。なお、文中に、「接種後に○○が起きた」という表現が出てきますが、これは起きた順序を示しており、因果関係や相関関係、つまり「接種の影響で○○が起きた」ということではありませんのでご注意ください。因果関係等がある可能性が否定できない場合は、その旨が明記されています。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

日本脳炎の予防接種の効果と副反応を知ろう
日本脳炎の新ワクチンの効果 どれくらいの確率で予防できる?受けなくてもよい?
新ワクチンでもADEMが起きる?確率は?日本で報告されている?
日本脳炎の予防接種の副作用(副反応) 軽度なものは発熱?他には?
新ワクチンで死亡することがある?確率は?日本で報告されている?
日本脳炎の予防接種で発熱した際の対応 お風呂は入って良い?
日本脳炎の予防接種の接種時期 追加とは?2期とは?
1995年4月から2007年4月生まれの方
養豚が盛んな地域だと、対応が違う?
日本脳炎の予防接種は、他のものと同時接種できる?
日本脳炎の予防接種を受け忘れた時の対応方法
日本脳炎の予防接種の料金はどれくらい?保険適用になる?
日本脳炎の予防接種を大人が受ける必要があることがある?効果あり?なし?

日本脳炎の新ワクチンの効果 どれくらいの確率で予防できる?受けなくてもよい?

日本脳炎の予防接種には、新ワクチンと旧ワクチンがあります。現在、使われているのは新ワクチンであり、旧ワクチンは使われていません。新ワクチンは日本脳炎の「第2期(法定接種年齢9歳以上13歳未満)」の時期の接種に関して有効性や安全性が確立していなかったため、使用されていませんでしたが、2010年にそれらが確認されたため新ワクチンも第2期に使用できるようになりました。

日本脳炎のワクチンを接種すると、日本脳炎の発症リスクを75%から95%減らすことができます。100%でないのはワクチンを決まった通りに接種しても、抗体ができないこともあるからです。

現在国のスタンスとしては「予防接種を受けるかどうかについては個々に判断して下さい」ということになっています。どんな予防接種でも同じですが、どうしても予防接種による副反応の問題が100%取り除けず、必ず害がないとは言えないからです。

日本脳炎に限って言えば、ワクチンが作られる前に年間2000人が日本脳炎を発症していたことがありましたが、その後の定期予防接種によって、年間10人以下に抑えることができた、という成果があることを忘れてはいけません。また、最近の日本脳炎の患者は予防接種を受けていなかった人ということもわかっており、やはり予防接種は日本脳炎の発症を予防しているといえます。

新ワクチンでもADEMが起きる?確率は?日本で報告されている?

旧ワクチンの時は、接種後に「ADEM」という病気が起きて、問題になりました。ADEMは日本語で「急性散在性脳脊髄炎」といい、神経的な障害が現れ、後遺症が表れることがあります。新ワクチン、「ADEM」が起きないわけでありません。

万が一ワクチンが原因でADEMを発症することがあるとしても、これまでの報告では旧ワクチンで、予防接種後のADEMは12年間で21例の報告、つまり1年に2人未満の頻度ということになります。新ワクチンでは、接種後のADEMは1445万回の接種で11件発生しています。これは131万回に1回という頻度になります。ADEMの頻度については、新ワクチンと旧ワクチンの70万から200万回に1回と比較し大きな差はありません。新ワクチン接種後のADEMは、旧ワクチンと同様にワクチンそのものが原因ではないと考えられています。

また、ADEMを発症しても神経的な後遺症が残る可能性は10%程度です。逆に日本脳炎は1年に10人以下ですが、死亡率は約15%、神経的な後遺症は約50%とADEMと比較しても発症率が高く、死亡率も高く、後遺症を残す可能性が高いのです。

1994年に予防接種法が改正され、すべての予防接種は義務から推奨にかわりました。つまり、どんなに効果が高い予防接種でも「接種しなければならない」から「接種するよう努力しましょう、にかわったということです。日本脳炎に関して言えば、毎年夏に日本脳炎になる可能性と、予防接種をすることによる副反応を天秤にかけて、接種するかどうか個々に判断して下さい、ということになります。

日本脳炎の予防接種の副作用(副反応) 軽度なものは発熱?他には?

ADEM以外の副作用として、接種直後から翌日に発疹やかゆみといった過敏症が見られることがあります。また発熱、悪寒、頭痛、吐き気、倦怠感(けんたいかん:だるさ)といった全身症状や約10%程度の人に接種した部位に発赤(赤くなること)・腫れ・痛みなどが認められます。これらの反応は、通常2日から3日で消失します。

新ワクチンの種類別で、臨床試験中に見られた副反応は「ジェービックV」で39.8%でした。主な症状は発熱(18.7%)、咳嗽(がいそう:咳がでること)(11.4%)、鼻漏(びろう:鼻水が出ること)(9.8%)、注射部位紅斑(注射した部位が赤くなること)(8.9%)です。

「エンセバック皮下注用」では全体の51.5%に副反応が見られました。主な症状は発熱(21.5%)、注射部位紅斑(16.6%)、咳嗽(8.0%)、注射部位腫脹(注射した部位が腫れること)(6.7%)、鼻漏(6.7%)、発疹(5.5%)でした。

新ワクチンで死亡することがある?確率は?日本で報告されている?

新ワクチン接種後の子供の死亡例は2012年に2例報告されていますが、その後の調査でこの2例はワクチン接種との関係は低いとの見解が発表されています。同年1445万回の接種で124人に副反応が出たと発表されました。

日本脳炎の予防接種で発熱した際の対応 お風呂は入って良い?

ワクチン接種後の入浴は基本問題ありません。接種後1時間以上経過してから入浴するようにして下さい。ただし接種部位はこすらないように注意しましょう。

発熱した時は入浴を控えて下さい。ワクチン接種後の発熱は1%未満ですが、38度以上の発熱が見られたときや元気がなく、ぐったりした場合は入浴をせず、医療機関を受診して下さい。

日本脳炎の予防接種の接種時期 追加とは?2期とは?

2009年に新型ワクチンが発売され、日本脳炎の発症が確認されていない北海道を除き、全国で6か月から7歳までに3回(1期)、9歳から13歳の間に1回(2期)の定期予防接種が行われていました。

「1期」は、3歳ごろの接種を目安にまずは1回目、その後6日から27日間隔をあけて2回目、そして1年後に3回目となります。第2期は、9歳の接種を目安に1回です。2005年までは、14歳から15歳に1回接種する3期の接種もありましたが、3期の接種による予防効果の上昇はなく、副反応のリスクだけが増えることから現在は廃止されています。

1995年4月から2007年4月生まれの方

1995年4月2日から2007年4月1日生まれの方は日本脳炎の予防接種が一時的に見合わせられていた時期に接種できていない可能性があります。そのため、接種できなかった回数を20歳までの間に特例措置として接種することができます。回数の目安は以下の通りです。

1期の3回分を1回も接種していない場合→1期分の3回と2期分の1回、計4回の接種が可能です。

1期の3回分のうち2回を接種していない人(1回だけ接種した人)→1期分の2回と2期分の1回、計3回の接種が可能です。

1期の3回分のうち1回を接種していない人(2回だけ接種した人)→1期分の1回と2期分の1回、計2回の接種が可能です。

養豚が盛んな地域だと、対応が違う?

通常は予防接種の開始を標準年齢の3歳からとするように勧めていますが、養豚が盛んな地域では年齢が低くても感染のリスクがあることから、接種可能な6カ月から接種した方が良いという意見もあります。2016年2月には日本小児科学会が「最近日本脳炎患者が発生した地域・ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6カ月から日本脳炎ワクチンの接種を開始することが推奨されます」と発表しました。また、日本脳炎を発症しやすい東南アジアや東アジアに旅行に行く予定があればその前に接種が勧められます。

自治体によっては3歳にならないと無料接種券が送られてこないこともありますが、希望すれば6カ月から無料で接種ができます。その場合は保健所や自治体へ問い合わせて無料接種券を早めに手に入れましょう。

日本脳炎の予防接種は、他のものと同時接種できる?

日本脳炎ワクチンは他の予防接種と同時接種が可能です。同時接種しても効果が減少することもありませんし、副作用の頻度も増えません。

一般的に予防接種は生ワクチンであれば次の接種は4週間以上、不活化ワクチンは1週間以上間隔をあけた方が良いとされています。しかし、現在日本でできる予防接種をすべて1回ずつ接種していると30回以上行わなければいけなくなります。接種の間隔も考えると非効率的で、免疫を獲得する前に、本来予防できた病気にかかってしまうかもしれません。

同時接種はフランスやアメリカなどではすでに行われている方法で、同時接種でも効果が減少することはなく、副反応が増えることもないことが証明されています。逆に同時接種はたくさんの種類の病気に対する免疫力を早く獲得でき、さらに接種の受け忘れを防ぎ、頻回に病院を受診しなければいけない親子の負担が減るメリットがあります。

しかし、同時接種は病院ごとに考え方が違う場合もあります。またお子さんの体調や持病によって同時接種が勧められない場合もありますので、医師と相談して決めるようにしましょう。

日本脳炎の予防接種を受け忘れた時の対応方法

予防接種の推奨時期を過ぎていても無料で接種できる場合があります。7歳6か月を迎えるまでと9歳の誕生日から13歳の誕生日前日までなら無料になる可能性があります。

旧ワクチンのADEMが懸念され、2005年度から2009年度まで日本脳炎のワクチンは積極的な推奨が控えられました。その影響で1995年から2009年度に誕生日がある人は、日本脳炎の予防接種を受けていない可能性があります。この期間に該当する場合は特例措置の接種が可能になる方もいますので自治体に問い合わせをして確認してください。

無料で接種できなくても、有料であればいつでも接種は可能です。また、1期で旧ワクチンを接種した人が2期や大人になって新ワクチンを接種しても問題はなく、副反応が増加しない事や、免疫を得る効果は同等であると分かっています。ただし効率よく免疫力を獲得するために、接種の間隔は推奨に従うことが望ましいです。心配な方は、医療機関で相談しましょう。

日本脳炎の予防接種の料金はどれくらい?保険適用になる?

日本脳炎ワクチンの定期接種は無償です。定期接種以外は自費になり、保険適用はありません。値段は病院ごとで決めることができるため、病院間では数千円の違いが出ることもあります。保険を使わない場合、一般的には1回5千円台から7千円台が相場です。

海外渡航の際に接種を推奨されることがあります。仕事で渡航するときには証明書を提出することで会社負担になることがありますが、接種の時には一度自己負担で支払う必要があります。会社と接種前に相談しましょう。

日本脳炎の予防接種を大人が受ける必要があることがある?効果あり?なし?

成人であっても日本脳炎になるリスクが高い地域やアジアへの出張・赴任の予定がある人は予防接種が勧められます。血液検査で日本脳炎ウイルスの抗体を持っているかどうかを調べることもできますが、この検査を行うことはほとんど意味がないため、検査を行っている病院は少ないのが現状です。抗体があるかどうかの検査ができたとしても、その検査費用は自費になり、結果が出るまでに日にちがかかります。

すでに日本脳炎ウイルスの抗体を持っている人が、追加でワクチンを接種したとしても、特に害はありません。そのため感染しやすい地域へ行く場合、抗体の検査をせずに、追加で予防接種する方が費用的にも日数的にもメリットがあると考えられています。大人は感染しても不顕性感染で終わることが多いですが、日本脳炎を発症しないとは言い切れません。発症すれば死亡の可能性や後遺症の可能性があるので、やはり大人であっても予防接種は、発病予防の効果があると考えられます。


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日本脳炎の予防接種の効果、副反応、受け方などについてご紹介しました。予防接種の受診に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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