湿布の「温感」と「冷感」、どう使い分ける?【医師監修】

  • 作成:2021/07/11

湿布剤は大きく分けて、冷感タイプのものと温感タイプのものがあります。では実際のところ、その使い分けはどのようにして行うべきなのでしょうか。今回は、意外に知らない「湿布」の使い方について解説します。

アスクドクターズ監修ライター アスクドクターズ監修ライター

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湿布の「温感」と「冷感」、どう使い分ける?【医師監修】

Q.湿布の「温感」と「冷感」はどう使い分ける?

A.痛み止めとしての「成分」や「効果」は同じだが、痛みの「急性」or「慢性」によって使い分ける。

温湿布も冷湿布も痛み止めの成分は共通しており、ロキソプロフェンナトリウムやサリチル酸メチル、ケトプロフェン、フェルビナクなど、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる成分です。つまり湿布が温かくても冷たくても、鎮痛薬としての効果は同じといえます。

温感と冷感の使い分けの意味とは?

痛み止めとしての成分は同じですが、生理学的には痛みの状態に応じて、温感と冷感を使い分けることで、症状を和らげることができます。
例えば、ケガをしてすぐの痛みでは、ブラジキニンというホルモンが働き炎症が起こります。そのため部位が赤く腫れ、熱を持ち、痛みが現れてくるのが「急性の痛み」です。1)打撲や捻挫、肉離れなどで起こるこのような痛みに対しては、熱をとる目的で冷湿布を使うことがあります。
また、長く続く「慢性の痛み」では、交換神経が興奮する→血管が細くなって血液が少なくなり痛みの物質ができてしまう→他にも運動神経が興奮する→筋肉が緊張して同じく痛みの物質ができてしまうという「痛みの悪循環」が発生します。2)腰痛や肩こりなどの患部が硬く慢性的に痛みを伴う場合には、血行改善のために、温湿布を使うことがあります。
急性の痛み:炎症部位が熱を持つ・腫れる。      →冷やして炎症を抑える。→冷湿布を使用
慢性の痛み:血流が滞る・筋肉がこわばって痛みが増す。→温めて血行を良くする。→温湿布を使用

※急性および亜急性の腰痛に対しては、「温める治療」と「冷やす治療」を比較した研究において、どちらでもよいという見解もあります。3)

温感と冷感を感じる成分は?

・冷感湿布の有効成分
サリチル酸メチル、ℓ-メントール、ハッカ油
・温感湿布の有効成分
トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド(合成トウガラシ)、ニコチン酸エステル

ℓ-メントールは、患部がより高い温度のときに冷たいと感じる特徴があります。4)また鎮痛薬には劣りますが、口からではなく皮膚からの効果であれば、部分的な麻酔作用から鎮痛効果が期待されているようです。5)
トウガラシの成分であるカプサイシンは、皮膚の血流が3分で増加して1時間以上も血流増加が持続するという報告があります。また皮膚の温度は30分後に0.2℃も増加したということです。6)

皮膚への影響は?

湿布を使い始めて、すぐにヒリヒリする・赤くなるなどの症状が出たことはありますか?そんな症状がある場合は、「刺激性接触皮膚炎」の可能性があります。例えば、先述のカプサイシンには血行改善や皮膚温上昇といった効果があり、脂肪によく溶けるため皮膚に浸透しやすい7)という性質から、他の湿布に比べて皮膚への刺激が強くでることがあるようです。
温感・冷感どちらの湿布を使用する場合も、まずは薬剤の使い方の説明書をよく読みましょう。薬剤によっては、刺激感が治療初期のみにでることがあり、やがて慣れるものもあります。説明がないのに、このような症状が出た場合や心配な場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。7)

1)小川節郎;各種疼痛についての総論;難治性疼痛の診断と最新治療;日大医誌 69(3):154-158(2010)
2)William K. Livingston ;Pain Mechanisms;(1943)
3)S D French;Superficial heat or cold for low back pain;PMID: 16437495DOI: 10.1002/14651858.CD004750.pub2
4)富永 真琴;温度受容の分子機構 -TRP チャネル温度センサー-;日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)124,219~227(2004)
5)谷口 恭章;l-メントールを中心とした皮膚刺激薬の抗侵害受容作用とその機序;日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)104,433~446(1994)
6)佐藤慶如;カプサイシン含有のプラスター剤による局所血流増加作用の検討
7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構;重篤副作用疾患別対応マニュアル;薬剤による接触皮膚炎

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